三浦日記

音楽ライターの日記のやうなもの

エレファントカシマシ

日本で進化を遂げたパンクの到達点―エレカシ全作レビューⅥ『奴隷天国』

"自己"と"世間"とのあり方は、デビュー作『THE ELEPHANT KASHIMASHI』(1988)から6枚目となった『奴隷天国』(1993)に至るまで、エレファントカシマシの作品を貫く大きなテーマであったように思える。殊に、4枚目の『生活』(1990)以降には、自己と世間との間に…

和洋クラシックの融合―エレカシ全作レビューⅤ『エレファントカシマシ5』

まるで焼畑農耕で全てを焼き尽くした後に、新たな生命が再び芽吹いてきたような作品だ―。前作『生活』でみせた破滅的な情感の爆発。それから1年7か月というスパンを経て出来上がったのは、力の抜けたなんとも明快でわかりやすい作品だった。また、"メッセー…

島国ニッポン発のグランジ―エレカシ全作レビューⅣ『生活』

これほどまでに聴いていて辛いアルバムは、世界的に見ても中々ないのではないだろうか。再生ボタンを押した瞬間、歪み切ったギターの音とボーカルの叫ぶ声が、ひたすら強調された凄まじい音の塊になって襲い掛かってくる。リード・ギターの音はほとんとどい…

反俗的な日常を描く―エレカシ全作レビューⅢ『浮世の夢』

エレファントカシマシの初期の作品はパンク—。一般的にはそのように形容されることが多いように思えるが、1989年リリースの彼らの3rdアルバム『浮世の夢』は、世間というものに対してメッセージをぶつけるような"パンク・アルバム"ではない。ひとまず肩の荷…

"エレカシ流グルーヴ"の芽生え―エレカシ全作レビューⅡ『THE ELEPHANT KASHIMASHI Ⅱ』

2作目というのは、ある種アーティストにとって一つの関門である。1作目の成功が仇となりそのまま没落していくか、Nirvanaのように『Nevermind』で爆発的なグランジ・ムーブメントを巻き起こすか。あるいはOasisの『Morining Glory (What's The Story?)』のよ…

今もなお、色褪せぬ眼差し―エレカシ全作レビューⅠ『THE ELEPHANT KASHIMASHI』

時間がたっても古臭くならない、そんな作品があるとしたら真っ先にエレファントカシマシの1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』を挙げるだろう。1988年、"バブル景気"真っただ中の日本で産み落とされた本作。ただ、好景気に浮足立ったような華やかさはみ…

エレファントカシマシという支配体制へのパンク・ロック―宮本浩次「昇る太陽」レビュー

長きにわたって第一線で活動してきたバンドには、"大御所"だとか"ベテラン"という枕詞がつけられがちである。時にそれは大きな足かせとなって、バンドのイメージを固定化させるものとなったり、新曲を出しても新鮮味をもって聴かれなくなったりしてしまう。…

エレカシ宮本 蔦谷好位置について語る

ジョー横溝氏がMCを務めるInter FM、『ほぼ週刊○○ナイト! "ほぼ週刊宮本浩次ナイト!"』にて、エレファントカシマシの宮本氏が蔦谷好位置氏について語る場面がありました。これが放送されたのは2010年。ちょうどアルバム『悪魔のささやき~そして、心に火を灯…

エレカシの日比谷野音 2019 2日目 ライブレポート―30回目の野音、雨の祝祭

エレファントカシマシ30回目の野音の2日目は雨。ただ、この日も多くの人が集まってきていた。空はどんよりと鉛色になり、ビルの上の方は靄がかかっている。日比谷公園の池のほとりにある、木の下で開演の時を待つ。粒の大きい夏の雨が木に当たり、それが時折…

エレカシ宮本 "無限ビート"について語る

2012年、NACK5の『J-POP TALKIN'』での DJ田家秀樹氏とのインタビューにて、エレファントカシマシの宮本浩次氏が"無限ビート"について語っていました。もう7年も前の話ですが、備忘録として少しばかり書き起こしてみたいと思います。 田家秀樹(以下田家):宮…

エレカシの日比谷野音 2019 ライブレポート前夜―2日間で全く違う"音の風景"

今年のエレカシの日比谷野外音楽堂でのライブは、2日間とも外で聴きました。もう、外から聴くのでも十分すぎるもので、本当に素晴らしいものでした。初日は曇り空。午前中から降りしきっていた雨は止み、梅雨のほんの僅かの中休みとなったこの日、開演前から…

"ミヤジの部屋"へようこそ―〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ライブレポート

ありとあらゆるものの密度が濃かった。そして、その濃さをかき回すかのように"混沌"が渦巻いていた―。これは6月12日、宮本浩次53歳の誕生日にLIQUIDROOMで開催された〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉のライブレポートである。 昨年エレファントカシマシは、…

"エレカシの宮本浩次"と、"ソロの宮本浩次"―〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ライブレポート前夜

"エレファントカシマシ宮本浩次"と、"ソロアーティスト宮本浩次"は全くの別人だ―。ソロ活動というものが、エレファントカシマシの延長線だとすれば、この命題のようなものは決して"真"になることはない。けれども、〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ではこの…

6月12日の宮本浩次〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉に寄せて

宮本のソロ活動がついに本格的に始動した。その皮切りとなるのが、今月6月12日に行われるソロライヴ〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉だ。そして、その会場に選ばれたのはなんと、LIQUIDROOM。キャパシティーは約900人程度と、需要と供給が日比谷野音でのラ…

化けの皮を被ったヒップ・ホップ―宮本浩次「解き放て、我らが新時代」レビュー

先日リリースされた、宮本浩次の2作目となるソロ・シングル「解き放て、我らが新時代」。一聴したときに感じたのは、エレファントカシマシの2000年代初頭の頃の作品。この時期の彼らといえば、宮本のソロ・ワーク的な作品が続いていたが、そんな『good morni…

エレカシの「俺たちの明日」がなぜ!?

今年の1月の終わり、ファンにとっては衝撃的なニュースが舞い込んできた。というのも、エレファントカシマシが長年在籍してきた、フェイス ミュージックエンタテインメントの契約が満了を迎え、アミューズに移籍が決まったのだ。アミューズといえば、サザン…

エレカシの「桜の花、舞い上がる道を」の"幹"を太くしているものは何か

「桜の花、舞い上がる道を」。この曲は、桜の季節になると無性に聞きたくなってくる。桜の風景をみていると、楽曲が脳内で再生され、見事な融合を果たすのである。そんなわけで、今年もこの曲について、つらつらと書いてみることにした―。 東京の方では、桜…

エレカシの宮本の歌声、そしてライブへのススメ

エレファントカシマシのボーカリスト、宮本の歌声。それはどこで最も映えるかというという問いがあれば、間違いなくライブであると答えるだろう。ライブが音源と異なるのは、空間的な反響の音を感じられるということだ。宮本の、ライブでの歌声を例えるなら…

エレカシの新春武道館 二〇一九年一月一八日 ライブレポート—"喜怒哀楽"が生々しく剥き出しになったステージ

新春、そして武道館という神聖な地でのライブ。初詣、あるいは初日の出を拝みに行くような心持だった。この日のライブが始まるまでは―。 一八時半、開演時刻を迎えて間もなく会場は暗転し、大喝采の中メンバーが登場する。いつものようにSEはない。静寂を切…

聴かせどころ、全部。けれども―東京スカパラダイスオーケストラ feat. 宮本浩次「明日以外すべて燃やせ」レビュー

「人生とは、美しいアルバムではなく、撮れなかった写真だと思う」 この言葉は、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦が、とある番組で紡ぎだした言葉で、元々はビヨンセの、「人生とは、何回息をするかではなく、何回息を飲む瞬間があるかだと思う」とい…

真っ向勝負の先に見えた、新しい二重唱(デュエット)の在り方―椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」レビュー

二〇一八年、平成から新年号に移り変わる潮目に、椎名林檎たっての希望で叶えられた、宮本浩次の"客演"。だが、これは決して"客演"なんかではない。三十年もの間、これまで共に戦ってきた仲間を残し、一人佇む齢五〇過ぎの男が、不惑の余裕をにじませた策士…

エレカシの日比谷野音 2018 ライブレポート―全身全霊"魂の叫び"、獅子奮迅の男に垣間見えた"疲労感"

29年連続となったエレカシの日比谷野音ライブは雨だった。今年は外でその演奏を聴くことになったが、雨にもかかわらず日比谷公園は大勢の"外聴き"のファンで溢れかえった―。例年、外で聴くときは決まって公園内にあるフードコートの近くにあるスペースの方へ…

エレカシの日比谷野音 2018 ライブレポート前夜―これまでの野音ライブの筆跡

2018年6月、エレカシの29年連続となる日比谷野外大音楽堂でのライブが開催された。最近の野音といえば、"秋"の印象が強いが、今年は6月、"梅雨真っ盛り"の時期に開催された。6月に開催されるのはどうやら10年振りらしい。なぜ久し振りにこの時期なのかについ…

エレカシの"伏線回収的"2曲―「自由」と「シグナル」について

エレカシの23thアルバム『Wake Up』(2018)の7曲目の「自由」を聴いていたとき突然、ある物語の伏線が回収されたかのような感覚を覚えた。というのも「自由」と、「シグナル」『町を見下ろす丘』(2006)の世界観が重なったからだ―。 「シグナル」の歌詞に登場…

エレカシ『Wake Up』デラックス盤のLIVE CDに感じる"違和感"

エレカシの23thアルバム『Wake Up』のデラックス盤には2017年、47都道府県を回ったツアー〈30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN” TOUR〉の富山オーバード・ホールで行われたライブのCD音源が同封されている。エレカシの30周年ライブといえば、2017年3月…

デビュー30年目の"覚醒"―エレファントカシマシ23thアルバム『Wake Up』レビュー

今から30年前、エレファントカシマシは『THE ELEPHANT KASHIMASHI』で"衝撃の"デビューを飾る。そして20年前には『愛と夢』でラブソングを歌い、10年前には『STARTING OVER』で再び世間から脚光を浴びる。そしてデビューから30年目となる2018年、『Wake Up』…

エレカシの新曲「Easy Go」、"50代の青春"そして"威風堂々"の佇まい

エレカシの新曲「Easy Go」、つい先日はYouTubeにて『宮本から君へ』のオープニング映像が、そして昨日はミュージックビデオのショートバージョンが公式アカウントで公開された。 ミュージックビデオ、度肝を抜かされた。音楽に比例するようにギターの演奏そ…

エレカシの「さよならパーティー」、そしてクリープハイプによるカバーについて

「さよならパーティー」は、〈ユニバーサル・ミュージック〉に移籍後の第1弾アルバム『STARTING OVER』(2008)に収録されている。前作、『町を見下ろす丘』(2006)と比べると、この曲の収録されているアルバムはポップでキャッチ―な曲が多く並ぶ。おかげさまで…

『RESTART / 今を歌え』(初回限定版)の特典『日比谷野外大音楽堂2017 セレクション』について

『RESTART / 今を歌え』の初回限定盤には『日比谷野外大音楽堂2017 セレクション』がボーナスCDとして付いてくる。そして、これが何ともすばらしいのだ。日比谷野音ライブの空気感までもがそのままCDに凝縮されている感じがして、野音の外で聴いているような…

エレカシの新曲「Easy Go」、そして最近のプロモーションについて

ドラマ『宮本から君へ』のエレファントカシマシ主題歌「Easy Go」、本当に素晴らしかった。オープニング、わずか1分ばかりの衝撃。脚本監督には悪いが、映像そっちのけで聴き入ってしまった。青々しい"疾走感"や"勢い"が、とんでもなく歪む楽器隊とがなり続…