三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

エレファントカシマシ

転がり続ける宮本、苔生(む)すエレカシ

2022年、エレファントカシマシが最後に曲を出してから、4年半の歳月が経過しようとしている。この空白期間は、これまでの彼らのキャリアにおいて最長であり、今現在も更新中である。新曲をリリースしていない期間中のエレファントカシマシの活動といえば、年…

台風一過、エレカシ——有明サンセット 2022 ライブレポート その2

観測史上最大級の暴風雨のようなライブ——。「有明サンセット 2022」2日目の3組目は"ダークホース"、エレファントカシマシ。本イベントは、8月の初めになるまで、残り一組が誰になるのか未発表であった。例年、若手から中堅のアーティストがラインアップに軒…

代々木にて極まる一人の男あり——宮本浩次 縦横無尽完結編 ライブレポート

2019年6月12日、男は恵比寿LIQUIDROOMのステージにて一人、ギターを持って弾き語りをしていた。宮本浩次、ロック歌手、そしてエレファントカシマシのボーカリスト。ソロアーティストとして自身初の単独ライブであった。汗でぐしゃぐしゃになった長髪の合間か…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅳ (2010-2018)

今回は、2010年から2018年までにリリースされた作品のオマージュについてである。この時期のオマージュは、宮本自身(エレファントカシマシ)の可能性を広げるものとしての位置づけになっているように思える。宮本は、ジャンルや時代を横断した楽曲を制作して…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅲ (2000-2009)

今回は2000年から2009年までにリリースされた作品のオマージュについて考察していく。この頃のエレファントカシマシのオマージュに関してキーワード付与するとすれば、"同時代性"である。1966年生まれの宮本と同世代の海外のアーティストのオマージュがこの…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅰ (まえがき)

かつて、誰かが言っていた。エレファントカシマシは日本のロックバンドではなく、日本のロックバンドはエレファントカシマシである、と。 寸分の狂いもない、見事な形容だと思った。ただ、彼らの楽曲を聴いているとどうも、海外の音楽の影響を強く感じる。別…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅱ (1988-1999)

今回は、1988年のデビューから1999年までの時代のオマージュについて考察していく。この時期のエレファントカシマシは、1960年代から1970年代までの、いわゆるロック黎明期の時代の作品のオマージュが多い。中には「星の砂」をはじめ、当時の楽曲を大胆に引…

富士に太陽、ちゃんとあった——エレファントカシマシ 新春ライブ2022日本武道館 ライブレポート

冬の東京は、雲一つない晴れの日が多い。澄み渡った空気は、都会特有の化学的なツンとした匂いをわずかに含み、あらゆるものをたちまち無機質にさせる。埼玉郊外から電車に乗り、日本武道館へと向かう。この日も、天気は晴れ。ぼんやりと、車窓を眺めてみる…

不死鳥の如く蘇える——エレカシ全作レビューXXII『RAINBOW』

ある一羽の不死鳥がいた。不死鳥は、天寿を迎えると燃え盛る炎の中に飛び込み、たちまち灰と化してしまう。だがしばらくすると、灰の中から再び産声を上げ、生まれ変わった不死鳥は大空に向かって再び大きく羽ばたいてゆく——。筆者はふと、この話がエレファ…

置き去りになった粋(いき)なるもの——宮本浩次『縦横無尽』レビュー

宮本は、独歩した。これまで築き上げてきたエレファントカシマシという屋号に一旦の別れを告げ、新たな行き先で自己を表現することになった。『宮本、独歩。』、齢50を過ぎてからの挑戦であったが、いたって足取りは軽く、着の身着のまま、本能が赴くままに…

佳作になった傑作(マスターピース)——エレカシ全作レビューXXI『MASTERPIECE』

聴くに堪えないほどの苦痛――。かつて、24歳だった宮本浩次が『生活』でみせた、粗削りな音と、パッションに満ちた青い叫びからくる苦痛とは明らかに違うものがそこにはあった。2012年、世に出された『MASTERPIECE』の苦痛は、人生の折り返し地点を過ぎた衰え…

空気の振動が、宇宙になる瞬間(とき)——エレカシ全作レビューXX『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』

この作品に存在しているのはいわゆるバンドサウンドという、いくつかの楽器の組み合わせよってもたらされる音の快楽だけではない。たとえそこに、歌詞という意味付けがあったとしても(日本語を母語とする者なら尚更)、それが音と作用し合うことによって生じ…

東京の人間を"演じる"——エレカシ全作レビューXIX『昇れる太陽』

エレファントカシマシと東京——この関係性は切っても切り離せないものであり、彼らの作品の中には常に東京というものが内在していた。それは何よりも、作詞・作曲の大半を行う宮本浩次が東京都北区出身であるというバックグラウンドが大きく起因しているだろ…

後世に残るクラシック——宮本浩次『ROMANCE』レビュー

原初的な音楽体験に限りなく近い感動——。 近代以降、特に20世紀初頭の音楽というのは、一回性のものであった。民衆は会場に集まり、同じ空間を共有しながら、その時限りの音に耳を傾ける。それがたとえ、以前に演奏された楽曲と同じであっても、無論、演奏に…

さあ、再出発だ——エレカシ全作レビューXVIII『STARTING OVER』

一曲目の「今はここはが真ん中さ!」の一音目、そして歌い出しの一節目から強い決意として感じられた、"STARTING OVER"、いうならば、"一からの再出発"という言葉。堅い合金のような冷たさを持ったサウンドは、磨き抜かれた金属光沢を放っていて、鋭利に尖っ…

「歴史」は敗北の産物である (後編)—エレ歌詞論考VI

前回は、「歴史」の歌詞の内容的な部分に触れた。抽象性と具体性の天秤が"森鴎外の人生"をテーマに据えたことで具体性の方に傾き、その視点は三人称で貫かれたことで俯瞰的なものになっていた。彼らの共感性が抽象と具体とのバランス感覚の良さと、私小説的…

「歴史」は敗北の産物である (前編)—エレ歌詞論考VI

エレファントカシマシの「歴史」は、2004年にリリースされた『扉』に収録されている。ドキュメンタリー映像の『扉の向こう』では、その制作風景が収録されているが、この曲の"歌入れ"はレコーディングの最後の最後まで残ったということで、歌詞に関して相当…

「友達がいるのさ」の冒頭部分の描写について—エレ歌詞論考V

東京中の電気を消して夜空を見上げてえな エレファントカシマシの『風』(2004)に収録されている「友達がいるのさ」。この楽曲は、なんといっても先に載せた冒頭部分が強烈な印象を放っている。聴くものを一瞬にして惹き込んでいく魔力を持ったようなフレーズ…

「シグナル」の"町を見下ろす丘"について—エレ歌詞論考IV

エレファントカシマシの「シグナル」は、2006年リリースの『町を見下ろす丘』に収録されている。この楽曲は、表題と同じ〈町を見下ろす丘〉というフレーズが登場する。非常に端的で、印象に残るフレーズである。そして何より、具体的な場所の名前は一切登場…

青年の老年期——エレカシ全作レビューXVII『町を見下ろす丘』

"四〇歳は青年の老年期であり、五〇歳は老年の青年期である" 詩人であり『レ・ミゼラブル』などの著書で知られる、ヴィクトル・ユーゴーはこんな言葉を遺している。40代と50代を大きな境目に前者を青年の終わり、つまり老年期に。そして後者を老年の始まり、…

その歌声、狂暴につき——宮本浩次『宮本、独歩。』レビュー

宮本浩次のデビューアルバム、その名も『宮本、独歩。』。タイトルに固有名詞が使われるのは、バンドのデビュー当時の作品を彷彿させる(『THE ELEPHANT KASHIMASHI 』、『エレファントカシマシ5』など)。無論、今回はバンド名ではなく自分の名前。ここで、あ…

52分の白日夢——エレカシ全作レビューXVI『風』

はくじつむ【白日夢】[daydream]白昼夢ともいう。夢に似た意識状態が覚醒時に現れるもの。内容は概して願望充足的である。また,単なる空想より現実性を帯びている。 『ブリタニカ百科事典』より エレファントカシマシ、16作目となる『風』。2004年リリー…

宮本浩次、「Do you remember?」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。2週目も引き続き、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていま…

宮本浩次、Instagramについて語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。2週目も引き続き、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていま…

宮本浩次、『ガイアの夜明け』の主題歌について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、「冬の花」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、東京スカパラダイスオーケストラとの制作エピソードを語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、「獣ゆく細道」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

"死"に対する自覚の果てに見出した"生"——エレカシ全作レビューXV『扉』

派手さはないが、傑作——。 『俺の道』(2003)から『風』(2004)までのエレファントカシマシはある種、商業主義から完全に逸脱している。この時期はやはり、セルフ・プロデュースであるという点が大きいように思えるが、世間に向けて、分かりやすくパッケージン…

「so many people」の情景描写について―エレ歌詞論考II

高速道路 朝日を浴びて ダイナミックな町は 引用したのは、エレファントカシマシ「so many people」のサビの一節。他のサビでは〈ソーメニーピープル〉から始まっている中、ここだけは〈高速道路〉から始まり、楽曲で唯一といってもいい情景描写へと続いてい…