三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

2018-01-01から1年間の記事一覧

聴かせどころ、全部。けれども―東京スカパラダイスオーケストラ feat. 宮本浩次「明日以外すべて燃やせ」レビュー

「人生とは、美しいアルバムではなく、撮れなかった写真だと思う」 この言葉は、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦が、とある番組で紡ぎだした言葉で、元々はビヨンセの、「人生とは、何回息をするかではなく、何回息を飲む瞬間があるかだと思う」とい…

BOYS END SWING GIRL、インタビュー後記

2018年10月、千葉にある某スタジオにて、BOYS END SWING GIRLにインタビューを行いました。そもそも、先日めでたくメジャー・デビューを果たしたバンドに、なぜ"ぺいぺい"の学生が丸腰で取材することができたのか。というのも、白澤さん(Ba.)とはもともと大…

若き新鋭が集った、Mom『PLAYGROUND』リリースパーティ―ライブレポート (ディレクターズカット版)

さとうもか 〈Shibuya O-nest〉で行われたMomのリリース・パーティのトップを飾ったのは、さとうもか。彼女は「今日はYO!Mom君のYO!大事な日だYO!」と、サングラス姿で意気揚々と登場し、披露されたのは「殺人鬼」。効果音を多用したサウンドは、1曲目に…

ボイエン史上初の領域へと踏み込んだ快作―BOYS END SWING GIRLの「サンタクロースイズユー」レビュー

クリスマス直前に、BOYS END SWING GIRLから何とも粋なプレゼントが届けられた。全編を通じて、クリスマスを連想させる詞が並び(いじわる爺さんの雪かきのところはどうしても、『ホーム・アローン』に登場する"シャベル殺人鬼"こと、マーリーおじいさんを連…

"読み聞かせ"をされているような安心感―七尾旅人の『Stray Dogs』レビュー (ディレクターズカット版)

デビュー20周年という節目にリリースされた、七尾旅人の『Stlay Dogs』。全体を通じて、川のせせらぎのように心地の良いメロウなサウンドは、自然と作品の世界に没頭させてくれる。そんな今作をすべて聴き終わった後に湧き上がってきた多幸感、それは―。子ど…

"随筆"や"日記"のような、軽やかさ―カネコアヤノの『祝祭』レビュー

空飛ぶ絨毯の“絨毯”が、“畳”になって飛んでいる感じ―。 いつだったか、スピッツの草野マサムネが、カネコアヤノが創り出す音楽をこんな風に表現していた。何とも的を射ているなと思った。古い木造の文化住宅の畳部屋に、1人の女の子が座ってくつろいでいる。…

真っ向勝負の先に見えた、新しい二重唱(デュエット)の在り方――椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」レビュー

二〇一八年、平成から新年号に移り変わる潮目に、椎名林檎たっての希望で叶えられた、宮本浩次の"客演"。だが、これは決して"客演"なんかではない。三十年もの間、これまで共に戦ってきた仲間を残し、一人佇む齢五〇過ぎの男が、不惑の余裕をにじませた策士…

My Favorite Thing―わたしのお気に入り そのⅠ

ミュージカル映画の金字塔『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌で流れる、「My Favorite Thing」。この歌では、自分のお気に入りを散々並べたくった後に、〈お気に入りのものを思い出すだけで、いやな気分も吹き飛んでしまうの(I simply remember my fa…

村上龍の『限りなく透明に近いブルー』—若者たちのリアリティ

ストーリーの舞台は、ドアーズやローリング・ストーンズに若者たちが酔狂している頃。ゆとり世代の自分にとってみたら遥か前の話だ。その頃の若者は、団塊世代なんていうけれど、今よりもっと芋っぽくて、時間が経って色褪せたセピア色の写真みたいにどこか…

折坂悠太の「さびしさ」を形作る"さびしさ"について

どこかで聴いたことのあるような懐かしい曲だ。それはファンタジックな画風のアニメの世界だったかもしれない。あるいはいつか行った街の外れにある喫茶店だったかもしれない。ただ、そんな「さびしさ」は、聴き終わった後きまって、得もいえないさびしさを…

荒井由実の「天気雨」、雨の鎌倉

9月の下旬に鎌倉に行ってきた。鉛色の空からは冷たい雨が降っていて、由比ヶ浜の地平線の方はどんよりと白く曇っていた。そんな天気にもかかわらず、堤防越しに海岸を見るとサーフィンをする人、沖の方にはヨットがぼんやりと見えた。渋滞している車のテール…

皆がオアシスの帰りを待っている―リアム・ギャラガー 武道館来日公演 ライブレポート

皆がオアシスの帰りを待っている。自分もそのうちの1人だ。2009年、フジロックに出演した彼らの映像を見て衝撃を受けてからというもの、当時中学生だった筆者はたちまち虜になった。しかしながら、その年の12月に突然起こった兄ノエルの脱退、そしてバンドの…

新木場サンセット 2018 1日目 カネコアヤノ ライブレポート

THE COLLECTORSで作り上げた貫禄と非現実的な世界を拭い去るかのように、自分の世界に染め変えてしまったのはカネコアヤノだった。目尻にキラキラしたラメをあしらったカネコの風貌は、いつも以上に妖精感が増されたような印象を受ける。 1曲目を飾ったのは…

新木場サンセット 2018 1日目 THE COLLECTORS ライブレポート

『新木場サンセット 2018』のトップバッターを務めたのはコレクターズだった。昨年デビュー30周年を迎え、貫禄という名の更なるパワーを付けて、新木場COASTのステージに今年もやってきた。 この日の加藤ひさし(Vo.)は、カラフルなモッズスーツ姿ではなく、…

ターキッシュ エアラインズ(Turkish Airlines)の機内食 出国編

フライトキャンセルがありながらもTK53便は16時40分頃、成田空港からイスタンブール空港へと無事に飛び立ったのだった。ちなみに、そのドタバタの"飛"劇は是非とも前の記事を読んでいただきたい(とおすすめする程の内容でもありませんが…)。 xxxtomo1128xxx.…

カッパドキア名物気球、そして昇れる朝日

ネブシェヒルの朝5時、辺りはまだうす暗い。ここはトルコの中央部に位置する、人口30万ほどの都市である。眠い目をこすりながら、ホテルに停留しているバスに乗り込む。世界遺産のカッパドキアのあるギョレメ国立公園のほうに向かって30分ほどバスを走らせる…

トルコにて、馬に乗る―ランペイジ 巨獣大苦戦

午前中の授業が終わると、午後は何らかのアクティビティが待っている。この日はギョレメ国立公園の方向へとバスは向かった。目的地に到着するや否や、大きな円錐形の形をした岩と、おとなしく待っている馬が目に入った。どうやら今日は馬に乗るようだ。相変…

マジックアワー、そして丘の上のネブシェヒル

ネブシェヒルはトルコのほぼ真ん中に位置していて、約30万人がそこで生活している。行政区画で言えば県という位置づけになる。南東に位置する世界遺産のギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群(Göreme Milli Parklar ve Kappadokya)は何よりも重要…

テラスのハチにはご用心【トルコ滞在記】

トルコのほぼ中心に位置するネブシェヒル。ここは標高が高く、山に囲まれているため、朝夕は真夏でも涼しく過ごしやすい。雨が少ない気候で湿度は低く、体感温度は20~25℃くらい。時より心地の良いカラッとした風が吹いてくる。その頃の日本といえば熱中症に…

悶絶!地獄の腹痛記録4日間

事の発端は腹痛発症前日の深夜だった。同じ部屋の友達に呼ばれてロビーへ行ってみると、市場で買ってきたというブドウとビワらしき物が皿に盛られている。そこにはホテルの従業員の人達も一緒にいて、なんとも賑やかな感じになっていた。盛られているブドウ…

パキスタンの部屋友達【トルコ滞在記】

サマースクールでは1人ではなく必ず2人が、一緒の部屋で生活するということになっていた。自分はパキスタンの人と同じ部屋になった。名前はジュネイド、31歳。彫の深い顔にひげを蓄えた、あまりにも精悍すぎる顔立ちはいかにも中東のイケメンといった感じ。…

渡航前から一生分の運を使い果たした話【トルコ滞在記】

ある奇跡的な話をしたい。 7月14日の22時半、満を持してトルコに飛び立つ予定だった。だが、用事が押しに押して21時40分、出発の45分前に空港に到着した。この時点で筆者の身に何が起こったのか察しがつく人はいるかもしれない―。チェックインカウンターには…

プロローグ―語学と無縁の人間がなぜトルコに行くことになってしまったのか【トルコ滞在記】

7月中旬から8月中旬までの約1か月間、トルコに行ってきた。旅行なんかではなく、トルコ大使館文化部の「ユヌス・エムレ インスティテュート(Yunus Emre Enstitüsü)」という財団法人が主催するサマースクールがあって、それに参加したのだった。これは留学と…

世の中に溢れる音楽

世の中は音楽で溢れている。帰り道、パチンコ屋からはドアが開閉する度に色んな音楽が混ざったのが漏れ聴こえてくる。途中立ち寄った店でも陽気なBGMが流れている。店を出ると、今度は防災無線から児童の帰宅を促すチャイムが流れ、「今日の思い出を大切に」…

エレカシの日比谷野音 2018 ライブレポート―全身全霊"魂の叫び"、獅子奮迅の男に垣間見えた"疲労感"

29年連続となったエレカシの日比谷野音ライブは雨だった。今年は外でその演奏を聴くことになったが、雨にもかかわらず日比谷公園は大勢の"外聴き"のファンで溢れかえった―。例年、外で聴くときは決まって公園内にあるフードコートの近くにあるスペースの方へ…

エレカシの"伏線回収的"2曲―「自由」と「シグナル」について

エレカシの23thアルバム『Wake Up』(2018)の7曲目の「自由」を聴いていたとき突然、ある物語の伏線が回収されたかのような感覚を覚えた。というのも「自由」と、「シグナル」『町を見下ろす丘』(2006)の世界観が重なったからだ―。 「シグナル」の歌詞に登場…

エレカシ『Wake Up』デラックス盤のLIVE CDに感じる"違和感"

エレカシの23thアルバム『Wake Up』のデラックス盤には2017年、47都道府県を回ったツアー〈30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN” TOUR〉の富山オーバード・ホールで行われたライブのCD音源が同封されている。エレカシの30周年ライブといえば、2017年3月…

【ほぼ日刊ベースボール14】東京ヤクルトスワローズ、交流戦での"覚醒"、そして"勝負強さ"

東京ヤクルトスワローズの快進撃が止まらない。開幕直前、軒並み最下位と予想していた野球評論家を安堵させるかのように、最下位に鎮座し続けていたスワローズ。しかしながら交流戦に入ってからというもの、5月30日のロッテ戦での勝利を皮切りに7連勝。そし…

デビュー30年目の"覚醒"——エレファントカシマシ23thアルバム『Wake Up』レビュー

今から30年前、エレファントカシマシは『THE ELEPHANT KASHIMASHI』で"衝撃の"デビューを飾る。そして20年前には『愛と夢』でラブソングを歌い、10年前には『STARTING OVER』で再び世間から脚光を浴びる。そしてデビューから30年目となる2018年、『Wake Up』…

【ほぼ日刊三浦シアター5】ドイツとトルコの関係性について―『おじいちゃんの里帰り (Almanya: Welcome to Germany)』から

ドイツとトルコは隣国ではないし、さらには宗教的にも異なっているため、これまで両国の関係性というのは希薄なものであると思っていた。しかしながら、"移民"というカテゴリーにおいてはその関係性というのは非常に深いことがわかる。『おじいちゃんの里帰…