三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

"随筆"や"日記"のような、軽やかさ―カネコアヤノの『祝祭』レビュー

空飛ぶ絨毯の“絨毯”が、“畳”になって飛んでいる感じ―。 いつだったか、スピッツの草野マサムネが、カネコアヤノが創り出す音楽をこんな風に表現していた。何とも的を射ているなと思った。古い木造の文化住宅の畳部屋に、1人の女の子が座ってくつろいでいる。…

真っ向勝負の先に見えた、新しい二重唱(デュエット)の在り方――椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」レビュー

二〇一八年、平成から新年号に移り変わる潮目に、椎名林檎たっての希望で叶えられた、宮本浩次の"客演"。だが、これは決して"客演"なんかではない。三十年もの間、これまで共に戦ってきた仲間を残し、一人佇む齢五〇過ぎの男が、不惑の余裕をにじませた策士…

My Favorite Thing―わたしのお気に入り そのⅠ

ミュージカル映画の金字塔『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌で流れる、「My Favorite Thing」。この歌では、自分のお気に入りを散々並べたくった後に、〈お気に入りのものを思い出すだけで、いやな気分も吹き飛んでしまうの(I simply remember my fa…

村上龍の『限りなく透明に近いブルー』—若者たちのリアリティ

ストーリーの舞台は、ドアーズやローリング・ストーンズに若者たちが酔狂している頃。ゆとり世代の自分にとってみたら遥か前の話だ。その頃の若者は、団塊世代なんていうけれど、今よりもっと芋っぽくて、時間が経って色褪せたセピア色の写真みたいにどこか…