三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

ほぼ日刊三浦レコード

ディスクレビュー、ライブレポート、アーティスト論などなど、音楽全般のカテゴリー。

転がり続ける宮本、苔生(む)すエレカシ

2022年、エレファントカシマシが最後に曲を出してから、4年半の歳月が経過しようとしている。この空白期間は、これまでの彼らのキャリアにおいて最長であり、今現在も更新中である。新曲をリリースしていない期間中のエレファントカシマシの活動といえば、年…

再び回り始めたサンセットの歯車とスピッツ——有明サンセット 2022 ライブレポート その3

エレファントカシマシという観測史上最大級の"嵐"が去った後の会場は、すっきりと晴れ渡っていた。ある意味で最高の御膳立てである。続くステージはイベントの主催者、大トリのスピッツである。彼らの音響システムは、マイクをアンプに置いて増幅させず、ア…

台風一過、エレカシ——有明サンセット 2022 ライブレポート その2

観測史上最大級の暴風雨のようなライブ——。「有明サンセット 2022」2日目の3組目は"ダークホース"、エレファントカシマシ。本イベントは、8月の初めになるまで、残り一組が誰になるのか未発表であった。例年、若手から中堅のアーティストがラインアップに軒…

スピッツ愛、溢れる——有明サンセット 2022 ライブレポート その1

2022年9月28日と29日、ここでスピッツが主催する「有明サンセット」なるものが開催された。サンセット企画なるものは例年、新木場のSTUDIO COASTにて「新木場サンセット」が開催されていた*1が、2020年限りでSTUDIO COASTが閉業してしまったために、会場の変…

矢沢、人の人生動かしてみせます——EIKICHI YAZAWA 50th ANNIVERSARY TOUR「MY WAY」ライブレポート

池袋西口のカラオケルーム、男は「黒く塗りつぶせ」を予約していた。曲が始まる。イントロのビートが、音の割れたスピーカーから流れる。男は矢沢永吉の歌い方を意識し、しゃがれ気味でシャウトをしながら歌う。曲が終わり、すぐさま次の曲が始まる「時間よ…

THE 1975、ヤバすぎ!Vol. 2——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その5

ザ・クロマニヨンズが終わり、急ぎ足でマリンスタジアムに向かう。ちょうどシャトルバスが来ていたので、それに乗りこみ少しでも体力を温存する。バスに乗っている人からは疲れの表情がうかがえる。バスを降りると、外はもう暗くなっていた。ライトスタンド…

King Gnuかザ・クロマニヨンズか——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その4

タイムテーブルというのは時に無慈悲である。SUMMER SONIC 2022 1日目は、King Gnuとザ・クロマニヨンズの出演時間がおおむね重なっていたのである。今を時めく脂の乗ったKing Gnuか、はたまたロックンロールの金字塔クロマニヨンズか――。この選択は当日の午…

わが青春、ALL TIME LOW——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その3

しばらくMARINE STAGEで"無"の状態になる。ライブの爆音を聴き続けていると、耳が疲れてしまうから、意識的にこういう時間を設けることにしている。ALL TIME LOWを観に再び幕張メッセへと足を運ぶ。13時前、飲食店ブースは行列でごった返していたので、昼食…

女性アーティストたちの躍動——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その2

幕張メッセの会場内は、開演前から多くの人でにぎわっていた。SONIC STAGEから聴こえてきたサウンドチェックの音が良かったので、最初は、カメレオン・ライム・ウーピーパイを観ることにした。女性ボーカルに、ベースとDJという構成のユニットだった。ベース…

サマソニへのエントランス——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その1

ついに、3年ぶりにこの日がやってきた。待ちに待った、SUMER SONIC 2022 1日目の当日である。イベントを前に、久しぶりに「純な高揚感」が沸き上がってきた。「純な高揚感」とは、小学生の頃の運動会だとか、修学旅行だとかそういったものに近い感覚である。…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選――邦楽編

1. 東京事変 - 音楽 2021年、延期されていた東京オリンピックが開催された。椎名林檎は東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームに就任したものの、2020年12月、新体制によるチームの解散により、開催を待たずして活動を終えることになった。チ…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選——洋楽編

www.miuranikki.com 1. Silk Sonic - An Evening with Silk Sonic Silk Sonicは、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによって結成されたユニットで、2017年から2018年にかけて行われたマーズのライブツアーで、パークはオープニング・アクトをつとめ、…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選——洋楽編 (まえがき)

2021年も引き続き、新型コロナウイルスの影響をもろに受けた1年であった。海外のアーティストの来日は、11月にKing Crimzonが来日するまでないというなんとも"鎖国的"な状態が続いた。2020年に延期され、2021年開催予定だったSUMMER SONICも、7月から8月の新…

代々木にて極まる一人の男あり——宮本浩次 縦横無尽完結編 ライブレポート

2019年6月12日、男は恵比寿LIQUIDROOMのステージにて一人、ギターを持って弾き語りをしていた。宮本浩次、ロック歌手、そしてエレファントカシマシのボーカリスト。ソロアーティストとして自身初の単独ライブであった。汗でぐしゃぐしゃになった長髪の合間か…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅳ (2010-2018)

今回は、2010年から2018年までにリリースされた作品のオマージュについてである。この時期のオマージュは、宮本自身(エレファントカシマシ)の可能性を広げるものとしての位置づけになっているように思える。宮本は、ジャンルや時代を横断した楽曲を制作して…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅲ (2000-2009)

今回は2000年から2009年までにリリースされた作品のオマージュについて考察していく。この頃のエレファントカシマシのオマージュに関してキーワード付与するとすれば、"同時代性"である。1966年生まれの宮本と同世代の海外のアーティストのオマージュがこの…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅰ (まえがき)

かつて、誰かが言っていた。エレファントカシマシは日本のロックバンドではなく、日本のロックバンドはエレファントカシマシである、と。 寸分の狂いもない、見事な形容だと思った。ただ、彼らの楽曲を聴いているとどうも、海外の音楽の影響を強く感じる。別…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅱ (1988-1999)

今回は、1988年のデビューから1999年までの時代のオマージュについて考察していく。この時期のエレファントカシマシは、1960年代から1970年代までの、いわゆるロック黎明期の時代の作品のオマージュが多い。中には「星の砂」をはじめ、当時の楽曲を大胆に引…

富士に太陽、ちゃんとあった——エレファントカシマシ 新春ライブ2022日本武道館 ライブレポート

冬の東京は、雲一つない晴れの日が多い。澄み渡った空気は、都会特有の化学的なツンとした匂いをわずかに含み、あらゆるものをたちまち無機質にさせる。埼玉郊外から電車に乗り、日本武道館へと向かう。この日も、天気は晴れ。ぼんやりと、車窓を眺めてみる…

不死鳥の如く蘇える——エレカシ全作レビューXXII『RAINBOW』

ある一羽の不死鳥がいた。不死鳥は、天寿を迎えると燃え盛る炎の中に飛び込み、たちまち灰と化してしまう。だがしばらくすると、灰の中から再び産声を上げ、生まれ変わった不死鳥は大空に向かって再び大きく羽ばたいてゆく——。筆者はふと、この話がエレファ…

置き去りになった粋(いき)なるもの——宮本浩次『縦横無尽』レビュー

宮本は、独歩した。これまで築き上げてきたエレファントカシマシという屋号に一旦の別れを告げ、新たな行き先で自己を表現することになった。『宮本、独歩。』、齢50を過ぎてからの挑戦であったが、いたって足取りは軽く、着の身着のまま、本能が赴くままに…

あくまでも素直に受け入れるべき世界——スピッツ「大好物」レビュー

言葉の一つ一つの意味を追うことも、紡がれた言葉にどのような意味が隠れているのか考えることも要らない。これは、何かのメタファーなどではなく、あくまでも素直に受け入れるべき世界なのかもしれない。まるで子どもが絵本という空想の世界の中へ疑いなく…

佳作になった傑作(マスターピース)——エレカシ全作レビューXXI『MASTERPIECE』

聴くに堪えないほどの苦痛――。かつて、24歳だった宮本浩次が『生活』でみせた、粗削りな音と、パッションに満ちた青い叫びからくる苦痛とは明らかに違うものがそこにはあった。2012年、世に出された『MASTERPIECE』の苦痛は、人生の折り返し地点を過ぎた衰え…

空気の振動が、宇宙になる瞬間(とき)——エレカシ全作レビューXX『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』

この作品に存在しているのはいわゆるバンドサウンドという、いくつかの楽器の組み合わせよってもたらされる音の快楽だけではない。たとえそこに、歌詞という意味付けがあったとしても(日本語を母語とする者なら尚更)、それが音と作用し合うことによって生じ…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——洋楽編

まったく... 何考えてんだか。2021年のGWも過ぎたってのに、今頃2020年の振り返りをしてるのはどこのどいつだ? ...まあ、10年経ってもこのページが残っていて、10年後に誰かが読んでいたら、そんなこと誰も気にしないだろう。長いスパンで考えれば、何事もそ…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——洋楽編 (まえがき)

日本人の筆者からしてみれば、2020年に日本以外の音楽、いわゆる洋楽に実感を伴いながら触れることができる機会というのは皆無であった。もちろん、視聴機器を通じて洋楽に触れることはできたのだが、それはあくまでもデータの集合体の表現の話に過ぎない。…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——邦楽編

今回のベスト・アルバムを選ぶ際に、大きく決めたテーマは2つある。一つは"ライブと分断された作品"を選ぶということだ。もっとかみ砕いていえば、ライブで演奏されることが前提になっていない作品を選定するということ。ライブやフェスという半ば当たり前に…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——邦楽編 (まえがき)

2020年は、あらゆるものの構造が変化した一年であった。日本の音楽業界もまた、その変化を余儀なくされたものの一つである——。 日本の音楽業界と言われるシステムの成り立ちを簡単に振り返ってみると、日本において、音楽というものが商業的なモノとして成り…

東京の人間を"演じる"——エレカシ全作レビューXIX『昇れる太陽』

エレファントカシマシと東京——この関係性は切っても切り離せないものであり、彼らの作品の中には常に東京というものが内在していた。それは何よりも、作詞・作曲の大半を行う宮本浩次が東京都北区出身であるというバックグラウンドが大きく起因しているだろ…

後世に残るクラシック——宮本浩次『ROMANCE』レビュー

原初的な音楽体験に限りなく近い感動——。 近代以降、特に20世紀初頭の音楽というのは、一回性のものであった。民衆は会場に集まり、同じ空間を共有しながら、その時限りの音に耳を傾ける。それがたとえ、以前に演奏された楽曲と同じであっても、無論、演奏に…