三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

Asphyxia Balling (地獄の殺人スクラム)――LOUD PARK 2023 ライブレポート

LOUD PARK 2023、通称"ラウパ"当日である。別に、待ちに待ったわけではない。某手段により当日券が手に入ったので、急遽行くことが決定したライブであった。天気はあいにくの雨である。会場の最寄り駅である海浜幕張駅には12時前に到着した。友人からは既に前方エリアに居座っているという連絡が来た。クレイジーである――。この友人は頭から足の爪の先まで生粋のメタラーであった。会場はサマソニと同じところだと思って入っていったら全く別のイベントがやっていた。建物内にはコスプレをした女性たちやら、身なりを気にしない男たち(失礼)やらが繁茂していた。友人に連絡してみると、会場はどうやら国際展示場9-11だったらしく、痛恨の勘違いをしていた。いったん外を出てそちらの方に行ってみると、小さく控えめに"LOUD PARK 2023"という案内看板が出ていた。危うく、別のイベントに入場してしまうところであった。

 

会場には上手側、下手側に2つのステージが設けられており、片方で演奏している間、もう一方で転換作業が行われていた。今回のラインナップは正直なところPANTERAしか知っているバンドはなかったが、とにかくメタルのフェスがどんなものなのかを知りたかったので、別に何とも思わなかった。年齢層は、自分よりはるかに上の年齢の、何をして生計を立てているかわからないような大人たちがうじゃうじゃといた(失礼)。そんな男性が9割を占め、残りの1割に満たない女性がちらほらといた。某評論家的に言うならば、
「東京(幕張)の女の子、どうした?」
状態であった。無論、このようなむさ苦しくて男臭い音楽の流れる、野球部の部室のような雰囲気の場所(失礼)に"女の子"など集まるはずもなかった。何だか今後のメタルの行く末が示唆されているようで、来て早々悲しくなってしまった。

 

個人的に良かったのは、PANRERAはもちろんであったが、CARCASS、KREATOR、NIGHTWISH。逆に"最悪"で印象深かったのは、OUTRAGEで、あれはラウド系の音楽サークルの音作りのような雑音が、ただただうるさいという始末であった。彼らのアクトのときにおにぎりを食べていたが、間違いなく消費期限が短くなった。STRATOVARIUSのアクトが終了してから、ようやく友人と合流する。もはや一緒に来たとは言えない。同じ会場で偶然会ったと言った方がよさそうだった。

 

PANTERAを前列で見届けるべく、友人と共に、NIGHTWISHのアクトから、上手側ステージの前方エリアに向けて進んでいく。KREATORは下手側ステージだったが、自分がいる上手側のステージは既に人でぎゅうぎゅうに溢れかえっていた。PANTERAまでまだ1時間以上ある、そしてトータルで2時間以上この状態でいなければいけないのか――。絶望を噛み締め、前方に来たことを若干後悔しながら、KREATORの重低音に首を振り続ける。低音が心臓に響いてくる。花火が開く時の爆発音、あるいは祭囃子に乗せられる和太鼓の振動と似ていた。なるほど、日本の夏は"メタル"ということか。

 

KREATORが終わり、PANTERAコールが前方エリアで響き渡る。マスクの着用ルール、そして声出しの自粛なるものがアナウンスされていたが、そんなものはここには存在しない。無法地帯である。ボルテージは最高潮であった。メンバーが登場し、1曲目の「Cowboys from Hell」の一音目が鳴った瞬間、各所で一気にモッシュが始まった。これはいけない。思わず上手端の方へと移動していく。前方エリアで押したり引いたりもみくちゃにされた結果、汗が止まらなくなった。3月だというのに、真夏の炎天下を歩いているような暑さであった。人間の持つ熱というのはこれほどまでに暑いのか。ミツバチがスズメバチのような大きい敵に対して"蜂球"を作って戦うが、その気持ちが少しわかった。とはいえ自分はスズメバチではない、ミツバチである。戦う相手はPANTERAという名のスズメバチだ。ところが――。このミツバチは特別に打たれ弱かった。早々に棄権である。とはいえ、別に後ろに下がったわけではない。その辺は変なプライドが許さなかった。なんと中途半端なミツバチなのであろうか。一緒に前方に来ていたメタラーの友人は既にどこかに行ってしまっていた。

 

PANTERAで聴き込んだ曲と言えば、「Walk」と「Cowboys from Hell」くらいであったが、どの曲も最高であった。久しぶりに思い切り声を出してライブを観ることができたように思える。そして、心臓を震わせるほどの重低音。メタルは最高だ。この日は学生時代に埋めておいたメタルのタイムカプセルが久しぶりに掘り返されたような気分であった。服は今度は雨ではなく、汗でびしょ濡れになっていた。家に帰ってすぐにシャワーを浴び、ベッドに入って目をつぶると耳鳴りがした。ライブ用の耳栓をしていなかったら一体どうなっていたのだろう。また来週も同じ会場で<KNOTFEST 2023>が開催されるが、それもまた行く予定である。