三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

邦楽

「ラスト・ゲーム」に登場する文豪"永井荷風"について―エレ歌詞論考Ⅰ

キリスト偉い孔子も偉い 俺はいったいなんだ?言い訳じゃなく誤魔化しでもないラスト・ゲーム 勝負したいよつべこべ言うな! いわば毎日がラスト・ゲーム 勝負しなよ俺は歌手ならば歌えよラスト・ゲーム 勝負しなよ そう俺は芸術家 昔の永井荷風のように日々を…

23のオレには、まだ分からない—エレカシ全作レビュー XIII『DEAD OR ALIVE』(Naked)

30という年齢。自分はまだ30ではないので、今後どういう価値観に変わっていくのかというのは分かり得ないが、体が衰えや死に向かっていくというのがより自覚的になる時期であるということは、周りの話を聞いていれば漫然とではあるが理解できる。ただやはり…

2019年のソロ活動に直結する伏線作―エレカシ全作レビュー XIII『DEAD OR ALIVE』

2002年にリリースされた『DEAD OR ALIVE』は2019年になって、当時とはかなり違った聴き方ができる作品だと言えるだろう。それは本作が、前作「good morning」から続く宮本浩次のソロ作品的な流れであったことと関係する("バンド・サウンド回帰作"とされてい…

日常の呟き―エレカシ全作レビュ―Ⅻ『ライフ』

緊張と緩和は、エレファントカシマシのキャリアにおいて度々繰り返される一つのサイクルであるといえるだろう。2ndの『THE ELEPHANT KASHIMASHI Ⅱ』のあとに見せた、『浮世の夢』でのクラシック・ロックが内包されたポップ・サウンドアルバム。そして今回は…

東京インダストリアル―エレカシ全作レビューⅪ『good morning』

"エレファントカシマシ11枚目となった『good morning』はインダストリアルである"。これはもはや、この作品を語るうえで欠かせない、常套句のような言葉である。 インダストリアル(industrial)という言葉は一般的に、"工業"のという原義的な意味であるが、音…

夢想的で甘美なラブソング集―エレカシ全作レビューⅩ『愛と夢』

かの三島由紀夫の遺した短編、『白鳥』にはこう書かれている。 恋人同士といふものはいつでも栗毛の馬の存在を忘れてしまうものなのである。 登場する高原という寡黙な男と邦子という女性は乗馬クラブにて、一頭の白馬をきっかけに知り合う。互いに白馬を譲…

その喉、エフェクターあり―宮本浩次「Do you remember?」レビュー

宮本浩次の歌声はもはや楽器だ―。 Hi-STANDARDのギタリストKen Yokoyamaとのコラボレーション作品となった今作。メロコア・パンクな2ビートやギターやベースの刻み方は、まさにHi-STANDARDそのもの。それは、宮本が昨年、エレファントカシマシとしてリリース…

"シーンに対する迎合"によって露わになった新たな一面―エレカシ全作レビューⅨ『明日に向かって走れ-月夜の歌-』

エレファントカシマシ9作目となった『明日に向かって走れ-月夜の歌-』は、彼らのキャリアの中で最大のセールスを記録した。本作がリリースされた1997年といえば、CDの売り上げは最盛期を迎え、テレビ番組は軒並み高視聴率を連発していた時期である。特に、テ…

いつの時代にも寄り添い続けるスタンダード―エレカシ全作レビューⅧ『ココロに花を』

1994年、エピックとの契約が切れたのち、ポニー・キャニオンから再出発を果たした8枚目『ココロに花を』。彼らと同時代のUSのグランジやパンク、あるいはUKのオルタナティブ・ロックが内包されたこれまでの作品から大きく舵を切り、エレファントカシマシは遂…

東京のサウンドスケープ―エレカシ全作レビューⅦ『東京の空』

一本の映画を観たような感覚だった―。 エレファントカシマシ7作目となった『東京の空』で描かれるのは東京の空の下、繰り広げられる人間模様。一人称視点の情景はリリース当時の1990年代、あるいは現在にまで通じている。電車の窓から見えるのは密集した住宅…

日本で進化を遂げたパンクの到達点―エレカシ全作レビューⅥ『奴隷天国』

"自己"と"世間"とのあり方は、デビュー作『THE ELEPHANT KASHIMASHI』(1988)から6枚目となった『奴隷天国』(1993)に至るまで、エレファントカシマシの作品を貫く大きなテーマであったように思える。殊に、4枚目の『生活』(1990)以降には、自己と世間との間に…

和洋クラシックの融合―エレカシ全作レビューⅤ『エレファントカシマシ5』

まるで焼畑農耕で全てを焼き尽くした後に、新たな生命が再び芽吹いてきたような作品だ―。前作『生活』でみせた破滅的な情感の爆発。それから1年7か月というスパンを経て出来上がったのは、力の抜けたなんとも明快でわかりやすい作品だった。また、"メッセー…

島国ニッポン発のグランジ―エレカシ全作レビューⅣ『生活』

これほどまでに聴いていて辛いアルバムは、世界的に見ても中々ないのではないだろうか。再生ボタンを押した瞬間、歪み切ったギターの音とボーカルの叫ぶ声が、ひたすら強調された凄まじい音の塊になって襲い掛かってくる。リード・ギターの音はほとんとどい…

反俗的な日常を描く―エレカシ全作レビューⅢ『浮世の夢』

エレファントカシマシの初期の作品はパンク—。一般的にはそのように形容されることが多いように思えるが、1989年リリースの彼らの3rdアルバム『浮世の夢』は、世間というものに対してメッセージをぶつけるような"パンク・アルバム"ではない。ひとまず肩の荷…

"エレカシ流グルーヴ"の芽生え―エレカシ全作レビューⅡ『THE ELEPHANT KASHIMASHI Ⅱ』

2作目というのは、ある種アーティストにとって一つの関門である。1作目の成功が仇となりそのまま没落していくか、Nirvanaのように『Nevermind』で爆発的なグランジ・ムーブメントを巻き起こすか。あるいはOasisの『Morining Glory (What's The Story?)』のよ…

今もなお、色褪せぬ眼差し―エレカシ全作レビューⅠ『THE ELEPHANT KASHIMASHI』

時間がたっても古臭くならない、そんな作品があるとしたら真っ先にエレファントカシマシの1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』を挙げるだろう。1988年、"バブル景気"真っただ中の日本で産み落とされた本作。ただ、好景気に浮足立ったような華やかさはみ…

"アンバランスさ"こそ武器である―BOYS END SWING GIRL ワンマンライブ@WWW X ライブレポート

ライブはこの日のために作ったという、オープニング・ムービーで幕が開けた。インストゥルメンタル・バージョンの「ナニモノ」をバックにオフショットやライブ映像、さらにはこれまでの彼らのディスコグラフィーが走馬灯のように流れてゆく。そして、メジャ…

エレファントカシマシという支配体制へのパンク・ロック―宮本浩次「昇る太陽」レビュー

長きにわたって第一線で活動してきたバンドには、"大御所"だとか"ベテラン"という枕詞がつけられがちである。時にそれは大きな足かせとなって、バンドのイメージを固定化させるものとなったり、新曲を出しても新鮮味をもって聴かれなくなったりしてしまう。…

エレカシ宮本 蔦谷好位置について語る

ジョー横溝氏がMCを務めるInter FM、『ほぼ週刊○○ナイト! "ほぼ週刊宮本浩次ナイト!"』にて、エレファントカシマシの宮本氏が蔦谷好位置氏について語る場面がありました。これが放送されたのは2010年。ちょうどアルバム『悪魔のささやき~そして、心に火を灯…

エレカシの日比谷野音 2019 2日目 ライブレポート―30回目の野音、雨の祝祭

エレファントカシマシ30回目の野音の2日目は雨。ただ、この日も多くの人が集まってきていた。空はどんよりと鉛色になり、ビルの上の方は靄がかかっている。日比谷公園の池のほとりにある、木の下で開演の時を待つ。粒の大きい夏の雨が木に当たり、それが時折…

エレカシ宮本 "無限ビート"について語る

2012年、NACK5の『J-POP TALKIN'』での DJ田家秀樹氏とのインタビューにて、エレファントカシマシの宮本浩次氏が"無限ビート"について語っていました。もう7年も前の話ですが、備忘録として少しばかり書き起こしてみたいと思います。 田家秀樹(以下田家):宮…

エレカシの日比谷野音 2019 ライブレポート前夜―2日間で全く違う"音の風景"

今年のエレカシの日比谷野外音楽堂でのライブは、2日間とも外で聴きました。もう、外から聴くのでも十分すぎるもので、本当に素晴らしいものでした。初日は曇り空。午前中から降りしきっていた雨は止み、梅雨のほんの僅かの中休みとなったこの日、開演前から…

草野マサムネ 音楽をアルバムで聴くことについて語る

音楽をアルバムで聴くことについて、『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』にてスピッツの草野マサムネ氏が語っていました。気になったので、少しばかり書き起こしをすることにします。以下書き起こし。 これはですね、広島県の方からです。「学校の友達…

初夏、草原、さわやかな風―スピッツ「優しいあの子」レビュー

初夏、広大な草原で、さわやかな風に吹かれている―。スピッツの通算42枚目となるシングル「優しいあの子」を一聴したときに、パッと浮かび上がってきたのは北の端にある牧歌的な風景。そしてそこでは、『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する、遊牧民族のホ…

"ミヤジの部屋"へようこそ―〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ライブレポート

ありとあらゆるものの密度が濃かった。そして、その濃さをかき回すかのように"混沌"が渦巻いていた―。これは6月12日、宮本浩次53歳の誕生日にLIQUIDROOMで開催された〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉のライブレポートである。 昨年エレファントカシマシは、…

"エレカシの宮本浩次"と、"ソロの宮本浩次"―〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ライブレポート前夜

"エレファントカシマシ宮本浩次"と、"ソロアーティスト宮本浩次"は全くの別人だ―。ソロ活動というものが、エレファントカシマシの延長線だとすれば、この命題のようなものは決して"真"になることはない。けれども、〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉ではこの…

6月12日の宮本浩次〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉に寄せて

宮本のソロ活動がついに本格的に始動した。その皮切りとなるのが、今月6月12日に行われるソロライヴ〈ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り〉だ。そして、その会場に選ばれたのはなんと、LIQUIDROOM。キャパシティーは約900人程度と、需要と供給が日比谷野音でのラ…

Mr.Childrenのライブで感じた疑問―〈Against ALL GRAVITY〉東京ドーム公演 ライブレポート

幸いなことに、Mr.Childrenのドームツアー〈Against ALL GRAVITY〉の東京ドーム公演に行くことができた。野球好きの筆者としては、東京ドームといえば、4月のイチローの引退試合、さらには先日引退した上原浩治の本拠地球場である。そんなわけで、会場(グラ…

GLAYのライブ、内輪ネタの究極系

GLAYといえばさかのぼること10年ほど前、筆者が中学生の頃しばしば聴いていた。当時はビジュアル系のバンドが好きで、特にX JAPANをよく聴いていた。で、その弟分的な存在であるGLAYだとかLUNA SEAだとかも派生して聴くという感じだった。GLAYがビジュアル系…

ただのポップバンドでは終わらせない、新しい扉を開けるんだ―BOYS END SWING GIRL『NEW AGE』解説

ただのポップバンドでは終わらせない、新しい扉を開けるんだ―。 2018年、彼らは4作目となるミニアルバム『NEW AGE』をリリースした。今までのストレートなギターロックサウンドから一新させたポップなサウンドの今作は、「全年齢対象バンド」という彼らのコ…