三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

エレ歌詞論考

エレファントカシマシの歌詞に焦点を当てていく企画

「歴史」は敗北の産物である (後編)—エレ歌詞論考VI

前回は、「歴史」の歌詞の内容的な部分に触れた。抽象性と具体性の天秤が"森鴎外の人生"をテーマに据えたことで具体性の方に傾き、その視点は三人称で貫かれたことで俯瞰的なものになっていた。彼らの共感性が抽象と具体とのバランス感覚の良さと、私小説的…

「歴史」は敗北の産物である (前編)—エレ歌詞論考VI

エレファントカシマシの「歴史」は、2004年にリリースされた『扉』に収録されている。ドキュメンタリー映像の『扉の向こう』では、その制作風景が収録されているが、この曲の"歌入れ"はレコーディングの最後の最後まで残ったということで、歌詞に関して相当…

「友達がいるのさ」の冒頭部分の描写について—エレ歌詞論考V

東京中の電気を消して夜空を見上げてえな エレファントカシマシの『風』(2004)に収録されている「友達がいるのさ」。この楽曲は、なんといっても先に載せた冒頭部分が強烈な印象を放っている。聴くものを一瞬にして惹き込んでいく魔力を持ったようなフレーズ…

「シグナル」の"町を見下ろす丘"について—エレ歌詞論考IV

エレファントカシマシの「シグナル」は、2006年リリースの『町を見下ろす丘』に収録されている。この楽曲は、表題と同じ〈町を見下ろす丘〉というフレーズが登場する。非常に端的で、印象に残るフレーズである。そして何より、具体的な場所の名前は一切登場…

「地元の朝」の帰省、その到着までの描写について―エレ歌詞論考Ⅲ

エレファントカシマシの歌詞に、フォーカスを当てていく企画。今回は、2004年リリースの『扉』に収録されている「地元の朝」について。以下に載せたのは、その冒頭部分の歌詞である。まずは、こちらを読んでみていただきたい。 ある日 目覚めて電車を乗りつ…

「so many people」の情景描写について―エレ歌詞論考II

高速道路 朝日を浴びて ダイナミックな町は 引用したのは、エレファントカシマシ「so many people」のサビの一節。他のサビでは〈ソーメニーピープル〉から始まっている中、ここだけは〈高速道路〉から始まり、楽曲で唯一といってもいい情景描写へと続いてい…

「ラスト・ゲーム」に登場する文豪"永井荷風"について―エレ歌詞論考I

キリスト偉い孔子も偉い 俺はいったいなんだ?言い訳じゃなく誤魔化しでもないラスト・ゲーム 勝負したいよつべこべ言うな! いわば毎日がラスト・ゲーム 勝負しなよ俺は歌手ならば歌えよラスト・ゲーム 勝負しなよ そう俺は芸術家 昔の永井荷風のように日々を…