三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

Trivium、イチバン!――KNOTFEST 2023 ライブレポート

今日もまたどこへ行く、KNOTFEST 2023へ行こう。会場は先週のLOUDPARK 2023と同じ幕張メッセ。この日は昼頃に新しく出来た幕張豊砂駅で友人と待ち合わせることにしていた。例によってメタル狂の友人である。先週は、一緒に行ったとは言えないほどのコンタクトの少なさであったが、今週は一応初めの方から一緒にいるということになる。友人とは南船橋駅で会った。駅のホームには、KNOTFESTに行くと思われる人たちでごった返していた。もれなく全員全身が黒かった。矢沢永吉のライブの時もそうであったが、この類のファンというのは見分けるのが実にわかりやすい。

 

会場にはイオンから幕張メッセ方面に続く連絡通路を使った。外は長袖だと暑いくらいであった。先週と打って変わって、外は快晴である。友人がロッカーを使うというので、ロッカーに自分の上着も入れさせてもらい、いざ会場へと向かう。会場にはグッズの販売ブースがあり、そこでTシャツを物色する。一つだけいいデザインだと思ったものがあり、それを買おうと思ったがすでに売り切れであるらしかった。ブースから入り口にそのままつながっているのかと思いきや、リストバンドの交換所はまた別の場所とのことで、いったん引き返さざるを得なくなった。引き返すまでの道のベンチにはフェスに来ていると思しき人がちらほらといた。年齢層は、LOUD PARKよりも若い。それもそのはず、メインを張っているバンドが80年代後半~90年代前半のLOUD PARKと2000年代のKNOTFESTだから、シンプルにその辺も関係しているのだろう。

 

会場内に入ると、何やら日本人のアーティストが歌っているようだった。先にドリンクチケットを交換することにし、自分はブルームーンというビールを頼んだ。シンハーとこのブルームーンがあったのだが、こちらを頼んで正解だった。久しぶりに美味しいビールに出会えた。柑橘系の爽やかな香りと、麦の強い旨味が感じられるビール。日本でも販売が開始されているようで、店頭で見かけたら即買いしたい。友人は何やらその辺を行ったり来たりしており、その理由を聞いてみると、どうやら入場時のボディーチェックと荷物検査が気になるということだった。このフェスでは、飲み物の持ち込みが一切できないのだという。場内のブースで何とかしてドリンクを買わせたいという運営側の魂胆が見え見えである。も、もちろん、自分たちはしっかりとそのルールに従った。ロッカーあるいはメタラーは従順でなければいけないのだ!結局、リュックサックに友人の飲み物と自分の飲み物をうまい具合に隠して"密入国"を図る。無論、その辺のバイトスタッフのやる荷物検査というのは適当であり、難なく入場できた。

 

メタラーの友人は会場の前方に吸い込まれるようにして消えていった。昼過ぎは日本人アーティストがえんえんと続いており、自分は体力温存のために通称"遺体安置所"と呼ばれる後方エリアでひたすら時間をつぶすことにした。Enter Shikariというイギリスのバンドを試しに聴いてみたが、ボーカルの動きのクセがすごく、正直なところ"ダサい"と思ってしまったが、友人が最高だったと絶賛していたため、なんだか申し訳なくなり、その場では適当に合わせることにした。人間関係の構築には妥協はつきものである。

 

それから、In Flames、Triviumと続くのだが、その間にMAN WITH A MISSIONが立ちはだかった。残念ながら、彼らは嫌いなバンドのトップ3に入るのだが、やはり実際にその姿を見てから判断しなくてはいけない、という思いから前方エリアで観ることにした。筆者の周りには"マンウィズ"ファンが多くを占めており、曲中によくわからないポーズをしていく。おそらくオオカミの手を模しているのだろうが、不覚にもそれを見て鳥肌が立ってしまった。危うく、鶏肉と間違えたオオカミ達に食べられてしまうほどであった。我ながら面白くも何ともないたとえである。曲のクオリティは言わずもがな酷いもので、とてもではないが聴けたものではなかった。それ以前に、サウンドのミックスが壊滅的に悪く、ボーカルは全く前に出てこないくせに、高音域だけは一丁前やたらうるさく、耳栓をしていても耳が痛くなってくる始末であった。AC/DCの「Thunderstruck」のカバーで、思わず耐えられなくなって遺体安置所へと再び戻った。アクトが終了すると、全員でよく分からない掛け声をし始めたのでまた鳥肌が立ってしまった。LINEの通知を見てみると友人から一言「ひま」という文面が届いていていた。友人は引き続き前方エリアに辛抱強く居座っているようであった。

 

続いてTriviumである。このバンドのことは、ボーカルが日系三世ということ以外はほとんど知らなかったが、この日のベストアクトを決めるとするならば、間違いなく彼らであった。とにかく音が良い。すべての楽器の音が際立って聴こえ、ある種の心地よささえ感じられた。彼らの演奏中は耳栓を外しても全く耳が痛くならなかったのがその音の良さを証明していた。体は自然に動き、前方エリアではモッシュピット、あるいはサークルピットが常に発生していた。ボーカルのマシューは日本語でMCをし、ライブの中盤からはサッカー日本代表のユニフォームを着て演奏をする。まさに、メタル界のラーズ・ヌートバーといったところだろうか。一瞬にして彼らのファンになってしまった。そして、トリのSlipknot。カントリーミュージックのSEが流れると、会場の期待は最高潮になり、幕が下がり彼らが登場する。彼らのパフォーマンスは最高であったが、それ以上にTriviumの余韻が半端ではなく、この日はその印象が強烈に残った。Slipknotに関しては、聴きたかった曲を一通り聴くことができたのでとりあえずは満足している。

 

友人は風邪を引いていたらしく喉の調子が悪そうだったが、終演後、声はさらに枯れ、屍同然の姿になっていた。そんな彼もこの日のベストアクトはTriviumだと言っていた。帰りは天下一品でこってりラーメンの大盛りを頼んだ。友人は屋台ラーメンと、餃子を頼んでいだ。メタルを浴びた後にはラーメンが染みる――。エレファントカシマシの35周年記念ライブ、LOUD PARK、そして本日のKNOTFEST。怒涛の3週連続ライブ強化期間が終わった。