三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

わが青春、ALL TIME LOW——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その3

しばらくMARINE STAGEで"無"の状態になる。ライブの爆音を聴き続けていると、耳が疲れてしまうから、意識的にこういう時間を設けることにしている。ALL TIME LOWを観に再び幕張メッセへと足を運ぶ。13時前、飲食店ブースは行列でごった返していたので、昼食はひとまず保留。朝、しっかりと食べてきておいてよかった。ALL TIME LOWは筆者にとってのいわば"青春"であった。10数年前のWalkmanには購入時、サンプルミュージックが数曲入っていたのだが、彼らのことはそこで知った。あれは確か、インディーズ時代にリリースした「Break Out! Break Out!」という楽曲であったと記憶している。当時はバンドメンバーが高校卒業したばかりとのことで、非常に若いバンドであったが、それから時は過ぎ、彼らももう、30代後半に差し掛かろうとしていた。

 

ALL TIME LOWの出番が始まる直前、幕張メッセの飲食店ブースの方でJ-WAVEの公開生放送が行われることを知る。しかも、先ほどのBEABADOOBEEが登場するとのことだったので、そこでその姿を観てから、ライブを観ることにした。予定時間を10分ほどすぎて彼女は登場する。ライブ中でも印象的だったレッサーパンダのリュックサックを背負っている。かなり間近の距離で観ることができた。7、8メートルくらいだろうか。この距離で海外のアーティストを観ることができたのは初めてかもしれない。あたりを見回してみると、学生バイトと思われるライブスタッフはいるものの、セキュリティーガードの類はいないようであった。防弾ガラスの仕切りもなく、全くの無防備状態で、何かが起こったら大変だなと思いながら、しばらくの間観ていた。彼女は、THE 1975のオープニングアクトを務めたこともあり、彼らと交流があるようで、インタビューでは東京会場の前日に飲みに行く約束をしていたようであるが、忙しくてドタキャンされてしまったと話していた。後日、InstagramのストーリーでTHE 1975のメンバーと一緒にビリヤードをしている姿がアップされていたから、おそらく約束は果たされたということなのだろう。

 

MOUNTAIN STAGEに移動し、ALL TIME LOWが始まる。1曲目は大ヒットしたセカンドアルバム『Nothing Personal』から「Lost in Stereo」が演奏された。当たり前であるが、彼らは演奏が非常に上手である。スネアドラムとバスドラムの音が気持ち良い。約10年越しのライブである。やはり、彼らのキャリア初期の楽曲は、中学時代よく聴いていたこともあり、感極まってくるものがあった。ボーカルのアレックスは何度も拍手やジャンプを促し会場のボルテージを上げていく。さらに時折、手を耳元に当て「歌って」という素振りをしたが、これに関しては残念ながら、会場全員が大合唱するようなことはなかった。無論、ここにいる多くの人が彼らの演奏を聴きに来ている人たちであり、その楽曲を知らないはずがないのだが、声を出すことができなかったのである。「歓声の禁止」は、ルールで決められている事項であり、日本人の多くの観客はそれを忠実に守り続けた。はたして彼らにその背景は届いていたのだろうか。その認識に齟齬があったのなら、彼らは疑問に思い、あるいは落胆をしてしまったかもしれない。非常に申し訳ないと思うが、この意はどこに表明したらいいのだろうか……。個人的に最高潮だったのは「Weightless」が演奏されたときである。ライブでのアレンジは、冒頭アレックスのエレキギターによる弾き語りがあり、そこからサビの部分で一気に上がっていくというものになっている。ああ、あの頃の歌、わが青春の歌――。

 

多くの観客がジャンプをし、ホコリが舞ったせいなのか、ライブ終了後はくしゃみが止まらなくなってしまった。ハウスダスト・アレルギー持ちの自分は、埃に敏感なのであった。マスク越しでも埃を感じたため、果たして、いま自分が付けているマスクは意味があるのかと疑ってしまうほどだった。たまらず外の空気を吸い込んでリフレッシュをする。隣の会場では、Vaundyの出番が始まっていたようで、会場の外まで観客があふれ出していた。話には聞いていたが、すごい人気である。グッズの列はまだまだ途切れることがなさそうだったので、今回はあきらめることにした。グッズに並ぶ時間があったら、その分音楽を浴びたい性でなのである。外は気温が上がり、日差しは強くないが、蒸し暑くなってきていた。