三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

若き新鋭が集った、Mom『PLAYGROUND』リリースパーティ―ライブレポート (ディレクターズカット版)

さとうもか

 

〈Shibuya O-nest〉で行われたMomのリリース・パーティのトップを飾ったのは、さとうもか。彼女は「今日はYO!Mom君のYO!大事な日だYO!」と、サングラス姿で意気揚々と登場し、披露されたのは「殺人鬼」。効果音を多用したサウンドは、1曲目にふさわしい華やかさがあった。そうかと思うと今度は、ピアノによる弾き語りの「old young」で、ガラッと趣が変わる。さらに「最低な日曜日」では、ピアノをクラシックギターに変え、こちらもシンプルなサウンドに、しっとりと歌が乗る。そんなマルチな音楽性が何食わぬ感じで、さらりと披露された後は、「夢に向かって頑張りたい」という思いが込められた「Wonderful voyage」へ。この楽曲からは、「同世代同士、お互い切磋琢磨をしていこう!」という、さとうもか流のbetcover!!とMomに対する“激励”のようにも受け取れた。

 

彼女の話しぶりは、最新アルバムのタイトルのように“Lukewarm(適当な)”雰囲気が漂う。しかしながら、音楽に対する姿勢はいたって“Enthusiastic(熱心な)”。そんなアンバランス感が、ひしひしと伝わってくるようなライブだった。

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betcover!!

 

さとうもかが会場内に残したゆるい雰囲気を、一瞬にして自分の色に染め変えてしまったのはbetcover!!。1曲目は「ゆめみちゃった」。ずっしりと響くギターサウンドに、哀愁漂うヤナセジロウの歌声にはどことなく懐かしさを思わせる。10分という長さを存分に生かしながら、観客をbetcover!!の世界へと引きずり込んでゆく。続く「新しい家」では、前曲の激情感のあるサウンドと歌いっぷりから一転、軽快に演奏される。頭を振り乱しながら、叫ぶようにして歌う彼の姿にはすでに、“ただならぬ者”のオーラが纏われていた。

 

「平和の大使」では、Arctic Monkeysが近年UKの先人たちの音楽をリバイバルさせているかのように、かつての音楽を再構築させている印象を受けた。若干18歳、ヤナセの立ち振る舞いからは既に、貫禄さえうかがえた。心なしかその姿は、デビュー当時のアレックス・ターナーと重なる。それはおそらくヤナセが、同世代の人間よりもはるかに前の時代を見ていて、そこに憧れを見出しているからなのかもしれない。流行にとらわれない、彼の音楽性からは、“自分が次世代のスター”として引っ張っていくんだ、という気概が見て取れるのだった。

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Mom

 

真っ暗闇になったステージに、SEが流れると、Momのロゴを模したスタンドライトがぼんやりと点灯し始める。彼の部屋に迷い込んだような錯覚におちいっていると、「That Girl」に合わせて、トナカイの角が付いたサンタ帽をかぶったMomが登場する。ただ、会場は、まだ暖炉に火をつけ始めたばかりの感じで、散り散りな盛り上がり。そんな会場にMomは、火をくべていくかのように、トラップミュージック「気になるあの子(運動靴とディストピア)」と「いたいけな惑星」を披露して、会場を徐々に暖めてゆく。「Kiss」のサビではコール&レスポンスがされ、一体感が生まれ始める。ようやく火の落ち着いた暖炉のように、じんわり暖まってきた中で披露されたのは、「スカート」。シンプルなループに、ゲームのSE音がサンプリングされたポップなサウンドに導かれるように、サビでは自然と合唱が沸き起こっていた。

 

続いてMomは、アコースティックギターを手に取ると、彼が敬愛する小沢健二の「いちょう並木のセレナーデ」を弾き語りでカバーをする。そして「東京」、こちらもビートやベース音を使わず、ギター一本のスタイルで披露された。ひとたび弾き語りでこの曲が演奏されると、馴染みやすいメロディーと歌詞が浮き彫りになり、よりダイレクトに伝わってくるような印象を受けた。

 

MCでMomは、人生というのは様々な要素が集まった束で、それをまとめる“輪ゴム(ストッパー)”が必要。そしてその“輪ゴム”は、映画とか音楽のようなものがその役割を果たすという話をしていた。彼の話は、“輪ゴム”という突拍子もないところから始まったが、具体的なものを抽象化したアイコンのように昇華する彼の歌詞の雰囲気が、そのまま垣間見えたような瞬間でもあった。ライヴは「Boyfriend」で締めくくられる。〈Shibuya O-nest〉は、いつの間にかポカポカと暖かかった。少し早い新曲「SUPER STAR」のクリスマスプレゼントが、会場内に響き渡っていた。

 

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24歳のさとうもかが最年長という、若さ溢れるリリース・パーティーは、それぞれが全く異なったジャンルやスタイルで表現していた。しかしながら、共通しているのは、いずれの3組も今後の音楽シーンを引っ張っていくぐらいの勢いがあるということ。そんな彼らには、筆者のような同世代の人間にとっての、時代の先端を走るアイコン的な存在になってもらいたいと思うばかりだ。

 

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