クリスマス直前に、BOYS END SWING GIRLから何とも粋なプレゼントが届けられた。全編を通じて、クリスマスを連想させる詞が並び(いじわる爺さんの雪かきのところはどうしても、『ホーム・アローン』に登場する"シャベル殺人鬼"こと、マーリーおじいさんを連想してしまう)、さらにイントロと間奏部分には「ジングルベル」のメロディーが散りばめられ、この季節の持つ華やかさと、コンテクストを直感的に表現する。
"クリスマスソング"、そして"冬"。これは世間一般から言わせてみればかなりありきたりなテーマだ。けれども、彼らの場合は決してそうではない。というのも、限定的な季節や、季語を取り入れた曲というのは、彼ら史上今回が"初"だからだ。これまで、時代性や季節性を持たすことなく作品を作ってきたBOYS END SWING GIRL(冨塚はこれを意図的ではないといっていた)。それが、どんなときにでも聴くことができるという幅広さを持たせ「全年齢対象バンド」というコピーをより確かなものにさせていた。そんな彼らが、"クリスマスの曲を作る"、これはある意味で新たな領域へと踏み入れたといえるだろう。
作詞作曲をした冨塚はこれまで、「自分の作る曲に関して、季語を少し意識したら、もっと曲の風景をイメージしやすくなるのかな」、とインタビューで話していたが、まさに今作ではその狙いを、体現できているように思える。歌を引き立たせるようなシンプルなポップ・サウンドに乗せて、物語を俯瞰的に、そして語り部のように歌う冨塚。それは、季節性をもたせた楽曲であってもぴったりとはまり、聴くものを曲の世界に没頭させてくれる。子どもの頃に経験したクリスマスの朝のわくわく感や、なんともいえない浮ついた感じ――彼らの楽曲を聴いた時に思う浮かぶのはやはり、児童小説や絵本のような"少年性"だ。クリスマスを待ちきれない子どもが、クリスマスの準備にいそしんでいる。そんなかわいらしい様子を見届けながら大人たちは、少年が眠りにつく頃、ベッドのそばにこっそりとプレゼントを置く――。
そんな「サンタクロースイズユー」、誰もが知る共通のコンテクストを題材に持ってくることで、これまでとは別の文脈の、「全年齢対象バンド」としての彼らのあり方が示された作品のようにも思える。寒い日が続く年の瀬に、なんとも心温まる1曲だ。
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