三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

テラスのハチにはご用心【トルコ滞在記】

 トルコのほぼ中心に位置するネブシェヒル。ここは標高が高く、山に囲まれているため、朝夕は真夏でも涼しく過ごしやすい。雨が少ない気候で湿度は低く、体感温度は20~25℃くらい。時より心地の良いカラッとした風が吹いてくる。その頃の日本といえば熱中症になる人が多発するくらいの記録的な猛暑日が続いていた。いやはや、快適な場所とは"ネブシェヒル"。今後、"快適な場所"という言葉を"ネブシェヒル"にしてしまえばいいんです。ここの気候、ネブシェヒルやなと。そんなわけで、朝食は外で食べたくなる衝動にいやおうなしに駆られるんですよと―。

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 その日もネブシェヒルのだだっ広い景色を眺めながら優雅に朝食を食べていた。ふと、椅子の背もたれに体を預けた瞬間、"チクり"という攻撃を背中に感じた。明らかに蚊ではない。そもそも、ここには蚊は存在しない。そんなこと考える暇さえ与えずすぐさま痛みが襲ってきた。はい、わかりましたこの痛みはハチです。ピンポン、ご名答―。

 トルコ語で言うとアリ(Arı)。ちなみにトルコ語でアリはカルンジャ(karınca)、そんなことはどうでもいい。テラスで食事をしていると皿の上の食べ物を必ずと言っていいほど物色してくるただただ憎ましいアイツだ。ある時はサラミソーセージを器用に切り取って巣(?)に持ち帰り、ある時はハチミツやイチゴジャムに向かって一心不乱に飛び込んでくる。せめてハチミツくらいは自分達でまかなってはくれないだろうか。

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 このハチ、日本のスズメバチをかなり小型化して、いかにもな危険な色をだいぶ薄めた容姿の通り、決して攻撃的ではない。何もしなくても積極的に襲ってくる日本のハチに比べれば何ともかわいらしいものである。しかしながら、不覚にも彼の逆鱗に触れてしまった。 こ、これはわざとじゃないんだ本当さ。す、すまないと思ってる、神に誓うよ―。

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 そんな懇願むなしく数十分後、体に毒が回ってきたのか手には力が入らず、それとない吐き気をもよおしてきた。これがアレルギー症状なのか。久しぶりの感覚、何度経験しても慣れることのない敗北感を孕んだ痛み―。あれは少年時代、キャッチボールをしていた時。ボールを茂みに逸らし、ボールを探していると茂みにハチの巣があって、そこからハチがたくさん出てきて追いかけられ刺されたことがあった。そんな青春を駆け抜けていた頃の日々がまさか異境の地トルコで蘇ってくるとは。その日はハチ特有のアレルギー症状と格闘しながら1日を過ごしたのであった。