THE COLLECTORSで作り上げた貫禄と非現実的な世界を拭い去るかのように、自分の世界に染め変えてしまったのはカネコアヤノだった。目尻にキラキラしたラメをあしらったカネコの風貌は、いつも以上に妖精感が増されたような印象を受ける。
1曲目を飾ったのは「天使とスーパーカー」。可愛らしい女の子の曲という感じの曲調だったが、サビで声が上ずるくらいの熱量で歌われると、たちまちロック様相をもった楽曲へと変化したのだった。
彼女のことを知らない、可愛いアイドル歌手だと思っているような初見の観客の度肝を抜いたところで、「カウボーイ」が披露された。豪快にかき鳴らされたギターストロークに、悠々と歌うカネコの姿は、ますますロック歌手のような雰囲気を醸し出し、会場には只者ではない人間が3373ステージに登場したという困惑感が立ちこめた。
「カネコアヤノです。STUDIO COAST、人生で初めてだったんですけど、今日が初めてで良かった」と、彼女独特の言い回しのMCから披露されたのは「スイミング」。揺れる波のようなギターフレーズは、水の中にいる感覚を覚え、水を打ったようにサビで転調させる彼女の鋭い曲構成は、一度聴いただけで印象に残るような魔力を待っていた。
続いて披露されたのは、今年リリースされた最新アルバム『祝祭』から「ごあいさつ」、そして「祝日」だった。このあたりになると会場は、彼女の風貌と歌いっぷりのギャップによる困惑を受け入れる姿勢ができてきたのか、歓声が大きくなっていた。彼女のもったりと強い歌唱は、スローなバラードソングであっても、脳天に突き刺ささってくるくらいの破壊力があった。
ライブ終盤になると、「とがる」、そして再び最新アルバム『祝祭』から「恋しい日々」~「アーケード」と、怒涛のアップテンポな楽曲のセットリストで、一気に会場のボルテージを上げてくる。そんな彼女の歌唱を一層引き立ててくれているのは、ゴリゴリにグルーブ感のある演奏隊の存在だ。ギターはそのソウルフルな演奏のあまり、終盤の方になるとギターが血まみれになってしまっていた。カネコの方はその様子に爆笑し、本当に楽しそうに演奏をする。彼女の出番は、台風のように一瞬のうちに過ぎ去っていったのだった。【ほぼ日刊三浦レコード63】
セットリスト
1. 天使とスーパーカー
2. カウボーイ
3. スイミング
4. ごあいさつ
5. 祝日
6. とがる
7. 恋しい日々
8. アーケード