三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

皆がオアシスの帰りを待っている―リアム・ギャラガー 武道館来日公演 ライブレポート

 皆がオアシスの帰りを待っている。自分もそのうちの1人だ。2009年、フジロックに出演した彼らの映像を見て衝撃を受けてからというもの、当時中学生だった筆者はたちまち虜になった。しかしながら、その年の12月に突然起こった兄ノエルの脱退、そしてバンドの解散。ギャラガー兄弟はオアシス解散後それぞれの活動を始め、それから早9年が経った。その間、彼らの創り出した新曲はリアルタイムで追い続けた。ただ、何かが足りない―。

 その答えはいたって簡単だった。それは、オアシスで彼らの姿である。ステージ上で傍若無人なふるまいをする弟と、貫禄たっぷりの落ち着いたまなざしで、その姿を後ろで見守っている兄が一緒にいる姿を観たいのだ―。

 そんな訳で、今回の公演はリアムのソロ公演ではあったが、オアシスの幻影のようなものの片鱗さえ見られれば満足、という感じさえあったのだった―。

 平日にもかかわらずほぼ満員に埋まった武道館。開演時間の午後7時を15分ほど過ぎたところでオアシスの「Fuckin’ In The Bushes」のSEが掛かりメンバーたちは登場する。いきなりオアシスの1stアルバムから「Rock ‘n’ Roll Star」、そして、その雰囲気冷めやらぬまま、2ndアルバムから「Morning Glory」が披露されると、会場のボルテージは瞬時にして最高潮に達する。突然、高校の頃の思い出が、ぐわーっと蘇ってくるような郷愁に駆られ、自分の目には自然と涙がこぼれていた。あの頃追いかけていたヒーローがすぐ目の前にいる、自分にとってはそれだけで十分だった。

 リアム・ギャラガ―の最新ソロアルバム『As You Were』からは立て続けに4曲が演奏される。しかしながら、今日は早く次のオアシスの曲を聴きたいといった雰囲気が、会場からは滲み出る様に感じ取れた。

 そして、待ってましたという感じに「Some Might Say」が披露される。初期の頃の青々しい曲も、かつての頃のような若々しさで朗々と歌う感じは、当時からリアムが戻ってきたような印象さえ受ける。続く、「Champagne Supernova」。1995年当時の勢いを思い起こさせるような優しさ、そして20年以上のキャリアの中で培われた余裕に溢れた歌唱に、会場はたちまち大歓声に包まれた。

 再びソロアルバムから3曲の後にはなんと、「Whatever」が披露される。アルバムに収録されていないこの楽曲は、発表当時でもライブではほとんど演奏されることはなく、ある意味でタブーのような雰囲気さえあった。だが、今年の夏にそんな”禁断の名曲”は、約20年振りに解禁されたのだった。オアシス結成以来の歴史、そして解散以来から今までを凝縮しているかのような彼の歌唱は、「俺は今すぐ再結成しても、当時より最高なパフォーマンスができる」と言わんばかりの気概すら感じられたのだった。

 休憩明けの第2部(アンコール)の一曲目に披露されたのは、「Supersonic」、そして「Cigarettes & Alcohol」。熱量たっぷりに歌うその歌声は、”ゲロ声”と呼ばれていた解散末期の頃からは見違えるくらいに良くなっている。少なくとも2000年代前半の調子のいい時の声位には戻っているような印象だった。

 そして、アコースティックバージョンにアレンジされた「Live Forever」でたちまち会場を多幸感に満ち溢れた空間に仕立て上げ、「Wonderwall」で武道館を大合唱の渦に包みこんだところで、久々の来日公演は堂々と終演…。と思わせてところで、「Be Here Now」が披露された。客席の電気が付き、帰り支度をする観客がちらほらいた中でのダブルアンコールだったために、会場はたちまちパニックに。前方にごったかえす観客たちを制する警備員を気の毒に思いながら、自分にとってなんともエモーショナルな公演は、今度こそ終演したのだった。

 そんなリアムの武道館公演は、オアシスが帰ってくる期待感と可能性を感じずにはいられなかった。というのも、セットリストは17曲中10曲がオアシスの楽曲。特に後半は、全てがオアシスの楽曲という構成だったのだ。昨年行われたアルバムツアーに比べても、そのウェイトは明らかに増えている。

 オアシス解散以来、真っ二つに割れた花瓶のような兄弟2人の関係は、依然としてパテで修復されることはなく、そのまま放置されたままである。差された花は枯れ、床に広がった水は乾ききって、水たまりの後だけが残っている。今回のライブでは、弟の方がそんな花瓶と花にもう一度目を向け、ようやく手をかけ始めたように思えたのだった―。【ほぼ日刊三浦レコード64】

 

セットリスト

Rock 'n' Roll Star
Morning Glory
Greedy Soul
Wall of Glass
Bold
For What It's Worth
Some Might Say
Champagne Supernova
Soul Love
You Better Run
I've All I Need
Whatever
(Encore)
Supersonic
Cigarettes & Alcohol
Live Forever
Wonderwall
(Encore 2)
Be Here Now

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