三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

皆既月食 回想録

2022年11月8日、18時を過ぎた頃の帰り道、この日は月がきれいだった。雲一つない空に満月がくっきりと見えた。月を眺めつつ電車に乗り、乗り換えのために地上に出たところで、多くの人が空を見上げていることに気が付いた。何かアドバルーンの類でも飛んでい…

秋田の男子高校生はコートを着ない

はい、確かに。コートは着ておりませんでした——。そのように供述するのは、高校卒業まで秋田で生まれ育った筆者である。この言説は、数年前『月曜から夜ふかし』という番組で「秋田県の男子高校生どんなに寒くてもコート着ない問題」という風にして取り上げ…

昭和の男、村田兆治

元プロ野球選手の村田兆治が亡くなった。村田兆治と言えば「マサカリ投法」とよばれる、足を高く上げ右足をぐっと沈み込ませる独特なフォームで、200勝を達成した大投手である。平成生まれの筆者は、その現役時代のことは知らないが、YouTubeで投球動画なん…

転がり続ける宮本、苔生(む)すエレカシ

2022年、エレファントカシマシが最後に曲を出してから、4年半の歳月が経過しようとしている。この空白期間は、これまでの彼らのキャリアにおいて最長であり、今現在も更新中である。新曲をリリースしていない期間中のエレファントカシマシの活動といえば、年…

再び回り始めたサンセットの歯車とスピッツ——有明サンセット 2022 ライブレポート その3

エレファントカシマシという観測史上最大級の"嵐"が去った後の会場は、すっきりと晴れ渡っていた。ある意味で最高の御膳立てである。続くステージはイベントの主催者、大トリのスピッツである。彼らの音響システムは、マイクをアンプに置いて増幅させず、ア…

コロナ禍エレジー

某日の午後、友達から突然、電話がかかってきた。喉が痛く、熱もあり、今流行りの例のあのウイルスに感染してしまったかもしれないということであった。というわけで、注文があった品々を自宅の前まで"差し入れ"を届けることにした。近所の薬局に寄る。どの…

エナジードリンクのジレンマ

雨にも負けず、風にも負けず——。ある夏の朝、とある駅の出口を出るとエナジードリンクを配っている威勢の良い女性たちがいた。黒地に緑の三本の爪痕が荒々しく刻まれたロゴが印象的な、あの由緒正しきエナジードリンクである。ドリンクの缶のパッケージを模…

台風一過、エレカシ——有明サンセット 2022 ライブレポート その2

観測史上最大級の暴風雨のようなライブ——。「有明サンセット 2022」2日目の3組目は"ダークホース"、エレファントカシマシ。本イベントは、8月の初めになるまで、残り一組が誰になるのか未発表であった。例年、若手から中堅のアーティストがラインアップに軒…

スピッツ愛、溢れる——有明サンセット 2022 ライブレポート その1

2022年9月28日と29日、ここでスピッツが主催する「有明サンセット」なるものが開催された。サンセット企画なるものは例年、新木場のSTUDIO COASTにて「新木場サンセット」が開催されていた*1が、2020年限りでSTUDIO COASTが閉業してしまったために、会場の変…

矢沢、人の人生動かしてみせます——EIKICHI YAZAWA 50th ANNIVERSARY TOUR「MY WAY」ライブレポート

池袋西口のカラオケルーム、男は「黒く塗りつぶせ」を予約していた。曲が始まる。イントロのビートが、音の割れたスピーカーから流れる。男は矢沢永吉の歌い方を意識し、しゃがれ気味でシャウトをしながら歌う。曲が終わり、すぐさま次の曲が始まる「時間よ…

THE 1975、ヤバすぎ!Vol. 2——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その5

ザ・クロマニヨンズが終わり、急ぎ足でマリンスタジアムに向かう。ちょうどシャトルバスが来ていたので、それに乗りこみ少しでも体力を温存する。バスに乗っている人からは疲れの表情がうかがえる。バスを降りると、外はもう暗くなっていた。ライトスタンド…

King Gnuかザ・クロマニヨンズか——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その4

タイムテーブルというのは時に無慈悲である。SUMMER SONIC 2022 1日目は、King Gnuとザ・クロマニヨンズの出演時間がおおむね重なっていたのである。今を時めく脂の乗ったKing Gnuか、はたまたロックンロールの金字塔クロマニヨンズか――。この選択は当日の午…

わが青春、ALL TIME LOW——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その3

しばらくMARINE STAGEで"無"の状態になる。ライブの爆音を聴き続けていると、耳が疲れてしまうから、意識的にこういう時間を設けることにしている。ALL TIME LOWを観に再び幕張メッセへと足を運ぶ。13時前、飲食店ブースは行列でごった返していたので、昼食…

女性アーティストたちの躍動——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その2

幕張メッセの会場内は、開演前から多くの人でにぎわっていた。SONIC STAGEから聴こえてきたサウンドチェックの音が良かったので、最初は、カメレオン・ライム・ウーピーパイを観ることにした。女性ボーカルに、ベースとDJという構成のユニットだった。ベース…

サマソニへのエントランス——SUMMER SONIC 2022に行ってきた その1

ついに、3年ぶりにこの日がやってきた。待ちに待った、SUMER SONIC 2022 1日目の当日である。イベントを前に、久しぶりに「純な高揚感」が沸き上がってきた。「純な高揚感」とは、小学生の頃の運動会だとか、修学旅行だとかそういったものに近い感覚である。…

オオカマキリと少年Ⅸ——晩年

朝、外に出てみると落ち葉に霜がびっしりとついている。それを踏みしめるとシャリっと霜がつぶれる感覚が伝わってきた。飼っていた最後のカブトムシは、11月の初めの週に死んだ。ある日を境に昆虫ゼリーを食べることが少なくなり、じっとしていることが多く…

オオカマキリと少年Ⅷ——子孫

10月、北国の秋は深まるのが早い。朝夕は冷え始める頃である。少年はいつものように虫取りにいそしんでいた。虫取り網を持って田んぼの方に行くと、アキアカネがの群衆が夕暮れの空に赤い模様を描きながら飛び交っている。稲刈りが終わり、稲穂は行儀よく架…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選――邦楽編

1. 東京事変 - 音楽 2021年、延期されていた東京オリンピックが開催された。椎名林檎は東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチームに就任したものの、2020年12月、新体制によるチームの解散により、開催を待たずして活動を終えることになった。チ…

東京オリンピック 回想録

2020年に延期された東京オリンピックは、その1年後の2021年、無観客で開催された。その頃の音楽業界といえば、日本国外のアーティストは誰一人として来られないという鎖国状況であった。SUMMER SONICは中止、そしてFUJIROCK FESTIVALも日本国内のアーティス…

美しい国の末路、追記

www.miuranikki.com 2022年7月8日、元首相安倍晋三が突然この世から消えた。奈良県で応援演説中、銃に撃たれ倒れ、医師による懸命の蘇生措置も虚しく、意識が再び戻ることはなかった。襲撃事件の第一報は、正午過ぎに流れてきたニュース速報で知った。当初は…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選——洋楽編

www.miuranikki.com 1. Silk Sonic - An Evening with Silk Sonic Silk Sonicは、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによって結成されたユニットで、2017年から2018年にかけて行われたマーズのライブツアーで、パークはオープニング・アクトをつとめ、…

三浦的2021年ベスト・アルバム5選——洋楽編 (まえがき)

2021年も引き続き、新型コロナウイルスの影響をもろに受けた1年であった。海外のアーティストの来日は、11月にKing Crimzonが来日するまでないというなんとも"鎖国的"な状態が続いた。2020年に延期され、2021年開催予定だったSUMMER SONICも、7月から8月の新…

美しい国の末路

2022年7月8日、今日は、忘れられない一日になりそうだ。正午過ぎ、信じられないニュースが目に飛び込んできた。安倍晋三元首相が撃たれた――。街頭演説中、背後から銃弾を2発受け、午後3時時点、心肺停止の状態になっているという。犯行に使用されたのは散弾…

2011年3月の記憶、その後

2011年3月の時のことについて書いてみようと思った。記憶は年々薄れていく。その11年後の2022年3月、私は当時の記憶を引っ張り出しながらなんとか書き進めていった。以外にも鮮明に覚えているものであった。 www.miuranikki.com そんな最中、"ある出来事"が…

2011年3月の記憶

記憶は薄れてゆくものだ。あの頃の記憶は、いつ失われてしまうかわからない。だからせめてもここに残しておきたい――。 2011年3月8日 公立高校の一般入試試験が行われる。会場の、A高校に向かうと、いるはずのNの姿が見当たらなかった。Nというのは、私の小学…

スーパーヒーローになり損ねた男

これは、私が高校2年生だった頃の話である。学校で体育祭が行われ、クラスメイト達と打ち上げをすることになった。打ち上げは、食べ放題のバイキングの店で行われた。高校生と打ち上げ、そしてバイキングの並びは定番である。帰り道、皆で花火をすることにな…

代々木にて極まる一人の男あり——宮本浩次 縦横無尽完結編 ライブレポート

2019年6月12日、男は恵比寿LIQUIDROOMのステージにて一人、ギターを持って弾き語りをしていた。宮本浩次、ロック歌手、そしてエレファントカシマシのボーカリスト。ソロアーティストとして自身初の単独ライブであった。汗でぐしゃぐしゃになった長髪の合間か…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅳ (2010-2018)

今回は、2010年から2018年までにリリースされた作品のオマージュについてである。この時期のオマージュは、宮本自身(エレファントカシマシ)の可能性を広げるものとしての位置づけになっているように思える。宮本は、ジャンルや時代を横断した楽曲を制作して…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅲ (2000-2009)

今回は2000年から2009年までにリリースされた作品のオマージュについて考察していく。この頃のエレファントカシマシのオマージュに関してキーワード付与するとすれば、"同時代性"である。1966年生まれの宮本と同世代の海外のアーティストのオマージュがこの…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅱ (1988-1999)

今回は、1988年のデビューから1999年までの時代のオマージュについて考察していく。この時期のエレファントカシマシは、1960年代から1970年代までの、いわゆるロック黎明期の時代の作品のオマージュが多い。中には「星の砂」をはじめ、当時の楽曲を大胆に引…