三浦日記

音楽ライターの日記のやうなもの

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅳ (2010-2018)

今回は、2010年から2018年までにリリースされた作品のオマージュについてである。この時期のオマージュは、宮本自身(エレファントカシマシ)の可能性を広げるものとしての位置づけになっているように思える。宮本は、ジャンルや時代を横断した楽曲を制作して…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅲ (2000-2009)

今回は2000年から2009年までにリリースされた作品のオマージュについて考察していく。この頃のエレファントカシマシのオマージュに関してキーワード付与するとすれば、"同時代性"である。1966年生まれの宮本と同世代の海外のアーティストのオマージュがこの…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅱ (1988-1999)

今回は、1988年のデビューから1999年までの時代のオマージュについて考察していく。この時期のエレファントカシマシは、1960年代から1970年代までの、いわゆるロック黎明期の時代の作品のオマージュが多い。中には「星の砂」をはじめ、当時の楽曲を大胆に引…

エレファントカシマシのオマージュに関する考察Ⅰ (まえがき)

かつて、誰かが言っていた。エレファントカシマシは日本のロックバンドではなく、日本のロックバンドはエレファントカシマシである、と。 寸分の狂いもない、見事な形容だと思った。ただ、彼らの楽曲を聴いているとどうも、海外の音楽の影響を強く感じる。別…

富士に太陽、ちゃんとあった——エレファントカシマシ 新春ライブ2022日本武道館 ライブレポート

冬の東京は、雲一つない晴れの日が多い。澄み渡った空気は、都会特有の化学的なツンとした匂いをわずかに含み、あらゆるものをたちまち無機質にさせる。埼玉郊外から電車に乗り、日本武道館へと向かう。この日も、天気は晴れ。ぼんやりと、車窓を眺めてみる…

不死鳥の如く蘇える——エレカシ全作レビューXXII『RAINBOW』

ある一羽の不死鳥がいた。不死鳥は、天寿を迎えると燃え盛る炎の中に飛び込み、たちまち灰と化してしまう。だがしばらくすると、灰の中から再び産声を上げ、生まれ変わった不死鳥は大空に向かって再び大きく羽ばたいてゆく——。筆者はふと、この話がエレファ…

置き去りになった粋(いき)なるもの——宮本浩次『縦横無尽』レビュー

宮本は、独歩した。これまで築き上げてきたエレファントカシマシという屋号に一旦の別れを告げ、新たな行き先で自己を表現することになった。『宮本、独歩。』、齢50を過ぎてからの挑戦であったが、いたって足取りは軽く、着の身着のまま、本能が赴くままに…

あくまでも素直に受け入れるべき世界——スピッツ「大好物」レビュー

言葉の一つ一つの意味を追うことも、紡がれた言葉にどのような意味が隠れているのか考えることも要らない。これは、何かのメタファーなどではなく、あくまでも素直に受け入れるべき世界なのかもしれない。まるで子どもが絵本という空想の世界の中へ疑いなく…

佳作になった傑作(マスターピース)——エレカシ全作レビューXXI『MASTERPIECE』

聴くに堪えないほどの苦痛――。かつて、24歳だった宮本浩次が『生活』でみせた、粗削りな音と、パッションに満ちた青い叫びからくる苦痛とは明らかに違うものがそこにはあった。2012年、世に出された『MASTERPIECE』の苦痛は、人生の折り返し地点を過ぎた衰え…

空気の振動が、宇宙になる瞬間(とき)——エレカシ全作レビューXX『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』

この作品に存在しているのはいわゆるバンドサウンドという、いくつかの楽器の組み合わせよってもたらされる音の快楽だけではない。たとえそこに、歌詞という意味付けがあったとしても(日本語を母語とする者なら尚更)、それが音と作用し合うことによって生じ…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——洋楽編

まったく... 何考えてんだか。2021年のGWも過ぎたってのに、今頃2020年の振り返りをしてるのはどこのどいつだ? ...まあ、10年経ってもこのページが残っていて、10年後に誰かが読んでいたら、そんなこと誰も気にしないだろう。長いスパンで考えれば、何事もそ…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——洋楽編 (まえがき)

日本人の筆者からしてみれば、2020年に日本以外の音楽、いわゆる洋楽に実感を伴いながら触れることができる機会というのは皆無であった。もちろん、視聴機器を通じて洋楽に触れることはできたのだが、それはあくまでもデータの集合体の表現の話に過ぎない。…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——邦楽編

今回のベスト・アルバムを選ぶ際に、大きく決めたテーマは2つある。一つは"ライブと分断された作品"を選ぶということだ。もっとかみ砕いていえば、ライブで演奏されることが前提になっていない作品を選定するということ。ライブやフェスという半ば当たり前に…

節分で鬼になるナマハゲ

秋田の節分は、他の都道府県とは少し趣が違っているのかもしれない。というのもナマハゲがベースになっているのだ。ナマハゲといえば、「泣ぐ子(ご)はいねぇがぁ~」という一度はそのフレーズを耳にしたことがあるかもしれない。というかそのフレーズや荒々…

三浦的2020年ベスト・アルバム5選——邦楽編 (まえがき)

2020年は、あらゆるものの構造が変化した一年であった。日本の音楽業界もまた、その変化を余儀なくされたものの一つである——。 日本の音楽業界と言われるシステムの成り立ちを簡単に振り返ってみると、日本において、音楽というものが商業的なモノとして成り…

サントラを"観る"映画——『エンジェル・ウォーズ(Sucker Punch)』レビュー

あくる日YouTubeの広大な海を彷徨っていると、とある動画を見つけた。Slyfer2812氏が作った『ファイト・クラブ(Fight Club)』の本編を編集した、いわゆるMAD動画である。 youtu.be 最近は著作権に関する規制が厳しくなったのと、YouTubeに公式チャンネルが続…

東京の人間を"演じる"——エレカシ全作レビューXIX『昇れる太陽』

エレファントカシマシと東京——この関係性は切っても切り離せないものであり、彼らの作品の中には常に東京というものが内在していた。それは何よりも、作詞・作曲の大半を行う宮本浩次が東京都北区出身であるというバックグラウンドが大きく起因しているだろ…

後世に残るクラシック——宮本浩次『ROMANCE』レビュー

原初的な音楽体験に限りなく近い感動——。 近代以降、特に20世紀初頭の音楽というのは、一回性のものであった。民衆は会場に集まり、同じ空間を共有しながら、その時限りの音に耳を傾ける。それがたとえ、以前に演奏された楽曲と同じであっても、無論、演奏に…

ネオ同窓会の提案

義務教育課程の、いわゆる小・中学校の人間関係というのは、それなりに仲良くすることができても、人生を共にするような友人というのは見つけにくいのではないだろうか。なぜならそれは、閉鎖的な地域の中で、偶発的に集められた人間によって形成された社会…

スズメと蚊

男には行く当てがなかった。そして、あまりにも退屈すぎる一日が早く過ぎ去ってしまえばいいと思っていた。男は仕方なく、川沿いの道を歩いていると、神社を見つけた。山道の両脇には杉の木が生えていて、石畳には木漏れ日がゆらゆらと揺れている。男は境内…

オオカマキリと少年VII—秋

少年が育てたカマキリは、トンボを好んで食べた。イナゴ、ショウリョウバッタ 、トノサマバッタ、アゲハチョウ、アブラゼミ......。カマキリはどれもよく食べたが、その中でも最も食いつきが良かったのがトンボであった。 トンボを与えると、カマキリはまず…

オオカマキリと少年VI—官能

9月中ば、すっかり涼しくなった頃。オオカマキリの腹部は立派に膨れ、順調に成熟をしていた。少年はその様子を見て、そろそろ交尾をさせても良い頃ではないかと思っていた。ただ、どうやってオスを見つけてくれば——。というのも、草の茂みの陰で、カモフラー…

オオカマキリと少年V—攻防

少年のエサ取りは、いよいよ佳境に差し掛かっていた。成虫になったカマキリは、自分が昆虫界の食物連鎖の頂点だと言わんばかりに、恐れを知らなかった。ある日、家の中に大きなスズメバチが侵入してきたことがあった。羽音の重低音が、部屋に鳴り響いている…

オオカマキリと少年IV—脱皮

7月の終わり、オオカマキリは6回目の脱皮をした。脱皮をしたばかりのカマキリにはツヤがあり、翡翠のような美しい緑色をしていた。横には、半透明の抜け殻がぶら下がっている。腹の膨れ具合から、どうやらメスのようだった。少年は安堵した。というのも、次…

オオカマキリと少年III—躍動

玄関のドアと外を隔てる風除室はいつしか、カマキリを飼うための部屋に変貌していた。6月下旬、少年は、1匹だけを水槽に残してその他の個体を外に放した。最後まで、少年の手から離れようとしない個体を残すことにした。残したオオカマキリは、"ショウジョウ…

オオカマキリと少年II—梅雨

オオカマキリは、孵化したときの姿の原型をとどめたまま、成虫になる。いわゆる不完全変態の昆虫と呼ばれるこの手の種は、脱皮を繰り返すことで、徐々に成長していく。そして、その脱皮を行なった回数で、呼び名の方も1齢虫、2齢虫、3齢虫といった具合に変化…

オオカマキリと少年I—卵

11月下旬、窓の外には雪が降り積もっていた。外に生き物の気配は感じられない。多くの昆虫は秋に産卵をし終えるとやがて衰え、外気温の下降とともに力尽きてゆく。少年の飼っていたオオカマキリも、陽光とストーブの火の温もりに温められながら、静かにその…

少年時代

少年の住む場所は、市街地から少し離れた場所にあった。団地という言葉が地名に入っているもののの、住宅同士は決して密集することなく、一定の距離を置いてのびのびと立ち並んでいた。住宅は「目」の字でいえば、三つに区切られた空間の右側に数件あって、…

ラジオ体操の夏

7月下旬、午前7時、この日も少年は眠い目を擦らせながら、なんとか起きることができた。 「もう、勘弁してくれよ」 小学6年生になると、町内会の班長という、いわゆる生徒代表のような役割があった。少年の住む町内に、彼の同級生は誰一人としていなかったの…

オーシャンビューホテルでの一騒動【トルコ滞在記】

※この記事には"昆虫"が登場します。苦手な方はここでドロップアウトなさることをお勧めします。 この日はトルコ南部のアンタルヤというところにいた。ここはマナウガト(Manavgat)というエメラルドグリーンの滝と、地中海が有名なリゾート地であった。筆者は…