三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

平成学生回想録 スクールカースト編

2011年からタイムスリップしてきた、少年M。つい先日、中学校の卒業式を終えたという彼から、スクールカーストをテーマについて色々と語ってもらった。少年Mの供述は以下のようである—―。

 

スクールカーストですか。なんかすごく残酷な言葉ですよね。カーストっていうと、階級制みたいなものが連想されますけど、学校でもこの縮図は生々しく突きつけられるんですよ。いじめを無くそう、とか、差別をせずに誰とでも仲よくしよう、って先生は集会とかホームルームでよく言いますけど、それはあくまでも"うわべ"の話。クラスとかいう、小さな社会で生活する以上、というかそもそも人間である以上、この縮図は絶対存在するんですよ。じゃあ、スクールカーストって具体的に何かっていうと、僕は、大きく3つに分けられると思います。まずはその頂点の階層には、何といってもイケてるヤツがいる。陽キャ?最近だとそういう言葉があるんですね。陰キャラは聞いたことがありますけど、今は陽キャもあるんですね。まさしくそれですよ。イケてるヤツに入る条件としては――時代だとか、あとは住んでいる地域によっても変わるけれど、たいていは顔が良いだとか、スポーツができるだとか、コミュニケーション力が高いだとか、そういう一面が必要なんだと思います。テストの成績が良い、というのはあまり大事じゃないような気がします。学業の成績が悪くてもイケてる人はいましたね。

 

2つ目は、陽キャと陰キャの間にいる人たち。少しオタクっぽいけど、コミュニケーションとかは難なくとることのできるみたいな。そういう人の集まり。僕の立ち位置はそんな中途半端なところにいました。この位置づけにいる人は、僕もそうですけど大体はひねくれ者です。たとえば、僕は『ジョジョの奇妙な冒険』をよく読むんですけど、自分の周りにいる人以外は誰も読んでいませんでした。そうですか、今は流行っているんですね。アニメ化もした?すごいですね。15年前だったら考えられませんよ。それくらい中学生の間ではマイナーな漫画でした。ジョジョのここのセリフが面白い、とか、このシーンがいい、とか。そういう話を内輪でばっかりやってはそこだけで盛り上がる、みたいなことばっかりやっていました。ここがイケてるやつに今一歩入り込めない原因だったんでしょうね。そもそも、僕はそこに入り込みたくはなかったんです。なんか面倒くさそうだなって。でも、仲が悪いわけではありませんでしたよ。漫画を貸してよ、とかオススメの音楽教えてよ、とかそういうことを一番上にいるグループの人たちから聞かれたり、そのことについて話をしたりしたので、そういう人たちとの関係はむしろ良好だったと思います。貸したCDが返ってこない、とかだったらそれこそ大問題ですけど。もちろん、そんなことは一度もなかったです。

 

僕の立ち位置にいた人たちは、インターネットのトレンドに対しても敏感でした。中学生で携帯電話を持っている人はほとんどいなくて。今は(聴き手のスマートフォンを手に取る)――こんなに高性能な携帯電話があるんですね。スマートフォンっていうんですか。とにかく、何とかして、円滑に連絡を取る手段がないのかと思っていると、Skypeっていうサービスがあることを知ったんです。マイク付きのイヤホンを買って、Skypeでは学校では話せなかった他愛のない話をする。それまではメールだけだったので、大きく世界が広がった感じがしました。ちなみにYouTubeも何とかしてダウンロードできないかなと思って、とあるソフトを使ってダウンロードしてはひたすらWalkmanに入れていました。今だと、っていうか当時も違法ですよね。ただ、申し訳ないことをしたとは、あんまり思ってないです。おそらく公にはしていないだけで、当時の学生はみんなやっていましたよ。そもそもYouTubeの音楽やテレビの動画はほとんどが違法アップロードされたものだったので、悪いことをしている感覚はありませんでした。むしろ感謝しているくらいですよ。これ以上言うと怒られるので、このくらいにしておきます。

 

3つ目は――イケてないやつ。正直これ以上は言いたくないんですけど、3つに分けられるって言っちゃった以上説明した方がいいですよね、はい……。ただ、イケてないやつの要素は――これ、といったものは浮かんでこないんです。僕は人の容姿に関係するもので判断するのは絶対よくないって決めてるんです。その人自身の努力でどうにもならない部分っていうか、生まれ持っての、そういうもので判断するのはよくないってことです。じゃあどうやってその立ち位置になっちゃうのかっていうと――中3になった年に修学旅行があったんですけど、その班分けをするときに、ちょうど3つに班を分けなきゃいけなくなったんですよ。不思議なことに、一番上にいるグループと自分たちのグループは示し合わせたかのように綺麗に分かれた中で、自然な流れで生まれた集団があったんです。別に、近くの席になったら普通に話すし、仲間外れにしているわけではないけれども、一緒にいたいと思えるほどでもない間柄の人――。このぼんやりした感覚の人間の集積で出来上がった集団、それが、3つ目の"層"の人たちだったんですよね。

 

人間、自分と波長の合う人間と一緒にいたいと思うのが当たり前じゃないですか?だって自分の人生ですよ?誰とも平等に接しましょう、っていうのは建前で、悲しいことにこういうシチュエーションで出てきちゃうんですよね、悲しいことに。たぶん卒業したらもう二度と会わないんだろうな。ただまあ、これからも学校生活はまだまだ続きます。中学の頃、ピラミッドの一番上にいた奴が、何かをきっかけに一番下になるかもしれないし、その逆もあるかもしれない。自分だって例外じゃないです。高校デビューっていうんですかそういうの。デビューしたっていいじゃないですか。人生は楽しまなくっちゃ!

 

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