三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

邦楽

"大御所バンド"に求める魅力について—木々、森林のイメージと重ねて

昨年の夏、白神山地に行く機会があった。ここは、秋田県と青森県の県境にある、世界有数のブナの原生林の土地であり、1993年には日本初の世界遺産にも登録された。現在は、一部区域立ち入りが制限されてはいるものの、悠久の時を感じることができるスポット…

世界への"迎合"ではなく、ガラパゴス的な日本のロックからの"脱却"—ONE OK ROCK『Eye of the Storm』レビュー

今までのONE OK ROCKと"違う"と感じた—。 というのも今までのはどうも、海外のバンドの"二番煎じ"をしている感じがしてならなかったのだ。これまで彼らの楽曲に関して敬遠をしていたリスナー層というのは自分を含め、恐らくはそこが一番大きかったような気が…

"喜怒哀楽"が生々しく剥き出しになったステージ——エレファントカシマシ 新春ライブ2019日本武道館 ライブレポート

新春、そして武道館という神聖な地でのライブ。初詣、あるいは初日の出を拝みに行くような心持だった。この日のライブが始まるまでは——。 一八時半、開演時刻を迎えて間もなく会場は暗転し、大喝采の中メンバーが登場する。いつものようにSEはない。静寂を切…

"フラット"に音楽を聴くことについて―大御所メジャー・バンド3組の新作に思う

2018年のベスト・アルバム以外にも、こんな感じでこの年の音楽を聴くことができるのではないかと思って書いたのが、この記事です。2018年にリリースされたアルバムを3枚選んで、そこから共通項みたいなものを見出そうというものです。とはいえやはり、同じア…

三浦的2018年ベスト・アルバム5選―邦楽編

xxxtomo1128xxx.hatenablog.com カネコアヤノ - 祝祭 2018年の5月だったか、Spotifyのライブ・イベントがあってそれに出演していたカネコアヤノを知って以来、彼女の音楽のとりこになった。あのときは確か4組出ていたけれど、群を抜いた存在感を見せていた、…

三浦的2018年ベスト・アルバム5選―邦楽編 (まえがき)

邦楽というのは、必ずしもアメリカ、あるいはイギリスの流行と直接リンクすることというのはあまりないような感じがします。"ガラパゴス化"なんていう言葉が、日本の携帯電話を揶揄するときに使われたりしましたが、それは音楽においてもきっと同じことが言…

聴かせどころ、全部。けれども―東京スカパラダイスオーケストラ feat. 宮本浩次「明日以外すべて燃やせ」レビュー

「人生とは、美しいアルバムではなく、撮れなかった写真だと思う」 この言葉は、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦が、とある番組で紡ぎだした言葉で、元々はビヨンセの、「人生とは、何回息をするかではなく、何回息を飲む瞬間があるかだと思う」とい…

BOYS END SWING GIRL、インタビュー後記

2018年10月、千葉にある某スタジオにて、BOYS END SWING GIRLにインタビューを行いました。そもそも、先日めでたくメジャー・デビューを果たしたバンドに、なぜ"ぺいぺい"の学生が丸腰で取材することができたのか。というのも、白澤さん(Ba.)とはもともと大…

若き新鋭が集った、Mom『PLAYGROUND』リリースパーティ―ライブレポート (ディレクターズカット版)

さとうもか 〈Shibuya O-nest〉で行われたMomのリリース・パーティのトップを飾ったのは、さとうもか。彼女は「今日はYO!Mom君のYO!大事な日だYO!」と、サングラス姿で意気揚々と登場し、披露されたのは「殺人鬼」。効果音を多用したサウンドは、1曲目に…

ボイエン史上初の領域へと踏み込んだ快作―BOYS END SWING GIRLの「サンタクロースイズユー」レビュー

クリスマス直前に、BOYS END SWING GIRLから何とも粋なプレゼントが届けられた。全編を通じて、クリスマスを連想させる詞が並び(いじわる爺さんの雪かきのところはどうしても、『ホーム・アローン』に登場する"シャベル殺人鬼"こと、マーリーおじいさんを連…

"読み聞かせ"をされているような安心感―七尾旅人の『Stray Dogs』レビュー (ディレクターズカット版)

デビュー20周年という節目にリリースされた、七尾旅人の『Stlay Dogs』。全体を通じて、川のせせらぎのように心地の良いメロウなサウンドは、自然と作品の世界に没頭させてくれる。そんな今作をすべて聴き終わった後に湧き上がってきた多幸感、それは―。子ど…

"随筆"や"日記"のような、軽やかさ―カネコアヤノの『祝祭』レビュー

空飛ぶ絨毯の“絨毯”が、“畳”になって飛んでいる感じ―。 いつだったか、スピッツの草野マサムネが、カネコアヤノが創り出す音楽をこんな風に表現していた。何とも的を射ているなと思った。古い木造の文化住宅の畳部屋に、1人の女の子が座ってくつろいでいる。…

真っ向勝負の先に見えた、新しい二重唱(デュエット)の在り方――椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」レビュー

二〇一八年、平成から新年号に移り変わる潮目に、椎名林檎たっての希望で叶えられた、宮本浩次の"客演"。だが、これは決して"客演"なんかではない。三十年もの間、これまで共に戦ってきた仲間を残し、一人佇む齢五〇過ぎの男が、不惑の余裕をにじませた策士…

折坂悠太の「さびしさ」を形作る"さびしさ"について

どこかで聴いたことのあるような懐かしい曲だ。それはファンタジックな画風のアニメの世界だったかもしれない。あるいはいつか行った街の外れにある喫茶店だったかもしれない。ただ、そんな「さびしさ」は、聴き終わった後きまって、得もいえないさびしさを…

荒井由実の「天気雨」、雨の鎌倉

9月の下旬に鎌倉に行ってきた。鉛色の空からは冷たい雨が降っていて、由比ヶ浜の地平線の方はどんよりと白く曇っていた。そんな天気にもかかわらず、堤防越しに海岸を見るとサーフィンをする人、沖の方にはヨットがぼんやりと見えた。渋滞している車のテール…

新木場サンセット 2018 1日目 カネコアヤノ ライブレポート

THE COLLECTORSで作り上げた貫禄と非現実的な世界を拭い去るかのように、自分の世界に染め変えてしまったのはカネコアヤノだった。目尻にキラキラしたラメをあしらったカネコの風貌は、いつも以上に妖精感が増されたような印象を受ける。 1曲目を飾ったのは…

新木場サンセット 2018 1日目 THE COLLECTORS ライブレポート

『新木場サンセット 2018』のトップバッターを務めたのはコレクターズだった。昨年デビュー30周年を迎え、貫禄という名の更なるパワーを付けて、新木場COASTのステージに今年もやってきた。 この日の加藤ひさし(Vo.)は、カラフルなモッズスーツ姿ではなく、…

エレカシの日比谷野音 2018 ライブレポート―全身全霊"魂の叫び"、獅子奮迅の男に垣間見えた"疲労感"

29年連続となったエレカシの日比谷野音ライブは雨だった。今年は外でその演奏を聴くことになったが、雨にもかかわらず日比谷公園は大勢の"外聴き"のファンで溢れかえった―。例年、外で聴くときは決まって公園内にあるフードコートの近くにあるスペースの方へ…

エレカシの"伏線回収的"2曲―「自由」と「シグナル」について

エレカシの23thアルバム『Wake Up』(2018)の7曲目の「自由」を聴いていたとき突然、ある物語の伏線が回収されたかのような感覚を覚えた。というのも「自由」と、「シグナル」『町を見下ろす丘』(2006)の世界観が重なったからだ―。 「シグナル」の歌詞に登場…

エレカシ『Wake Up』デラックス盤のLIVE CDに感じる"違和感"

エレカシの23thアルバム『Wake Up』のデラックス盤には2017年、47都道府県を回ったツアー〈30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN” TOUR〉の富山オーバード・ホールで行われたライブのCD音源が同封されている。エレカシの30周年ライブといえば、2017年3月…

デビュー30年目の"覚醒"——エレファントカシマシ23thアルバム『Wake Up』レビュー

今から30年前、エレファントカシマシは『THE ELEPHANT KASHIMASHI』で"衝撃の"デビューを飾る。そして20年前には『愛と夢』でラブソングを歌い、10年前には『STARTING OVER』で再び世間から脚光を浴びる。そしてデビューから30年目となる2018年、『Wake Up』…

METROCK 2018 東京1日目 ライブレポート (BOYS END SWING GIRL編)

NEW BEAT SQUAREのステージ名にふさわしいフレッシュなパフォーマンスを披露したのは、記念すべき夏フェス初出演のBOYS END SWING GIRLだ。2017年5月に行われた渋谷eggmanでのワンマンライブの成功、そして、若手バンドの登竜門的なイベント『ROAD TO EX 201…

METROCK 2018 東京1日目 ライブレポート (トリプルファイヤー編)

"NEW BEAT SQUARE"でトップバッターを務めたトリプルファイヤ―。ボーカル吉田靖直の、ラッパー呂布カルマとのMCバトルや『タモリ倶楽部』へのテレビ出演で、彼らの"知名度"は徐々に上がってきていた。しかしながら、その"知名度"というのはあくまでも"コア"…

エレカシの新曲「Easy Go」、"50代の青春"そして"威風堂々"の佇まい

エレカシの新曲「Easy Go」、つい先日はYouTubeにて『宮本から君へ』のオープニング映像が、そして昨日はミュージックビデオのショートバージョンが公式アカウントで公開された。 ミュージックビデオ、度肝を抜かされた。音楽に比例するようにギターの演奏そ…

港町の風景、そして路地裏の生活感―スピッツの『インディゴ地平線』レビュー

スピッツの7thアルバム『インディゴ地平線』(1996)には、現代において失われつつあるひっそりと生活が根付いているような風景がそのまま"音"として表現された感じがある。 「花泥棒」は、細い路地裏を抜けると突如現れてくる、煤けた壁の色と花の鮮やさがコ…

カネコアヤノの圧倒的な存在感―Spotify Early Noise Night vol.5 ライブレポート

音楽ストリーミングサービス"Spotify"が推薦するライブイベント『Spotify Early Noise Night vol.5』が5月16日、代官山SPACE ODDで開催された。このイベントには、Spotifyのプレイリスト「Early Noise 2018」の、今後ブレイクが期待される新進気鋭のアーティ…

"真面目な不真面目"への飽くなき追求―奥田民生の4thアルバム『GOLDBLEND』レビュー

奥田民生の通算4枚目となるアルバム『GOLDBLEND』(2000)。今までの作品同様、今作でも聴いていて気持ちの良い曲が勢ぞろいしている。奥田特有の"コード進行"や"ビートの気持ちよさ"、これは誰にも真似できないほどの領域にまできている。ただ、今作に関して…

エレカシの「さよならパーティー」、そしてクリープハイプによるカバーについて

エレファントカシマシの「さよならパーティー」は、ユニバーサル・ミュージック移籍後の第1弾アルバム『STARTING OVER』(2008)に収録されている。前作の『町を見下ろす丘』(2006)と比べると、この曲の収録されているアルバムはポップでキャッチ―な曲が多く並…

『RESTART / 今を歌え』(初回限定版)の特典『日比谷野外大音楽堂2017 セレクション』について

『RESTART / 今を歌え』の初回限定盤には『日比谷野外大音楽堂2017 セレクション』がボーナスCDとして付いてくる。そして、これが何ともすばらしいのだ。日比谷野音ライブの空気感までもがそのままCDに凝縮されている感じがして、野音の外で聴いているような…

PUFFYの「これが私の生きる道」におけるThe Beatlesのオマージュについて

「これが私の生きる道」。この曲はPUFFYという女性アイドルユニットが歌う、ただの"アイドルソング"ではない。そして、この曲のリリースからは20年以上が経ったが、ただの"懐メロ"というわけでもない。というのもこの曲には、作曲者である奥田民生のThe Beat…