三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

PUFFYの「これが私の生きる道」におけるThe Beatlesのオマージュについて

 「これが私の生きる道」。この曲はPUFFYという女性アイドルユニットが歌う、ただの"アイドルソング"ではない。そして2018年、現在この曲のリリースからは20年以上が経ったが、ただの"懐メロ"でもない。というのもこの曲には、作曲者奥田民生The Beatlesに対するとんでもないくらいの愛が詰まっているからだ―。

 その愛の表現方法というのは、The Beatlesの曲への"オマージュ"。そしてそのThe Beatles愛の熱量、これが半端ではないのだ。以下に上げるのは、オマージュの元とされているThe Beatlesの楽曲の数々である。幸いなことに、この曲に関して分析しているサイトがいくつかあったので、手間を惜しんでそれを参考することにした。

「Ticket to Ride」
「I Want to Hold Your Hand 」
「That's Means A Lot」
「From Me to You」
「A Hard Day's Night」
「All My Loving」
「She Loves You」
「Day Tripper」
「It Won't Be Long」
「Mr.Moon Light」
「Nowhere Man」
「I'm Happy Just Dance With You」
「Please Please Me」
「Twist and Shout」
「No Reply」

サイトで分析されていた曲を総括してみると、オマージュ元とされている楽曲は驚異の15曲。個人的にパッと聴いて分かったのは「Day Tripper」と「Please Please Me」のリフの部分のオマージュ位だった。で、他の曲に関しては分析サイトを見てからThe Beatlesの曲を聴いてみて「ああ、確かに元ネタになっている!」という具合。そしてその時には、よくわからない嬉しさと笑いが込み上げてきた。それにしても、本格的にこの曲を分析するとなるととんでもない時間がかかりそうである。分析している先人達には頭が上がらない思いである―。

 ヒップホップの世界では、ある楽曲の一部を切り取って、音程やテンポをいじったりする"サンプリング"がしばしば行われるが、「これが私の生きる道」で行われていることは、それに近いような気がする。奥田はラッパーではないが、曲のエッセンスみたいなものを抽出する能力に長けている。この曲においては、The Beatlesの楽曲で一番印象に残る部分、それはギターリフやメロディーライン、ドラムのビート、はたまた手拍子かもしれない。そこを吟味して曲に取り入れ、それをオリジナリティのあるもの仕上げている。それは到底常人の業ではない。彼はもしかしたらラッパーでも成功していたのかもしれない。

 そんなことはさておいて、そんなヒップホップのサンプリング"的"な作り方によって、曲の8割ぐらいはThe Beatlesでできていると言っても過言ではない。それでもJ-POP感、そして奥田感のようなものがしっかりと残されている。そして、これこそ作曲者奥田の妙、常人ではない所以なのである。この曲がもしも、The Beatlesの継ぎ接ぎをしただけの曲だったら、下手をすると"パクリ"と言われてしまっていたかもしれない。そして20年後にこうして語られることの無い、駄作に成り下がってしまっていたはずだ。だが、この曲ではAメロ、Bメロ、サビという王道のJ-POP構成にして、そこにアクセントを加えるかの如くThe Beatlesで色付けが施されている。そして、そんなサウンドと構成には奥田特有のフラット:♭するようなメロディーラインが乗せられる。それが"パクリ"とは一線を画す"工夫"ではないけど、奥田のある種のこだわりのように見て取れるのだ。

 この曲では、そんなオマージュをあからさまに登場させている部分もあるけれど(とはいえ、そんなあからさまに分かるような部分でも、音程を微妙にずらしたりしている)、大半はパッと聴いただけでは分からないような絶妙な場所にオマージュのネタが仕込まれている。それは、奥田と同じようにThe Beatlesが好きな人だったら分かる、ちょっと知っている人でも、元になった曲を教えてもらえば分かるという効果をもたらす。当然ながら、The Beatlesを知らない人にとっては、ステレオな音源で昔風の楽曲だなと思われるだけであろう。先ほど、この曲におけるThe Beatlesのオマージュの発見に際して"よくわからない嬉しさと笑いが込み上げてきた"と書いたけれど、これこそが、この曲の持つ"副次的な面白さ"なのではないだろうか。ある意味"隠しトラック"とか、友達に教えられたゲームの非公式な"裏ワザ"のようなものに近いのかもしれない。

 そんな極めてマニアックで実験的な行為をアイドルユニットPUFFYの楽曲で、しかもさらっとやってのける奥田民生。奥田に対する"自由気ままに生きている"なんて言う世間からの"レッテル"。その裏には音楽に対して実にストイックな"職人"が隠れていた。本当にすごい。脱帽に次ぐ脱帽、脱ぐ帽子が足りなくなった。【ほぼ日刊三浦レコード44】

www.youtube.com

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引用記事
パフィーこれが私の生きる道」のアナリーゼ:ビートルズからの引用を中心に
http://www.ne.jp/asahi/jurassic/page/puffy.htm#1

しんげんニュ~ス:「これが私の生きる道」詳細解説
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hanamizuki/1068/MUSIC/BEATLES2/212puffy.html