三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

世界への"迎合"ではなく、ガラパゴス的な日本のロックからの"脱却"—ONE OK ROCK『Eye of the Storm』レビュー

 今までのONE OK ROCKと"違う"と感じた—。

 というのも今までのはどうも、海外のバンドの"二番煎じ"をしている感じがしてならなかったのだ。これまで彼らの楽曲に関して敬遠をしていたリスナー層というのは自分を含め、恐らくはそこが一番大きかったような気がする。日本のバンドが、海外のバンドの"真似事"をやっているのだったら洋楽を聴いた方がいい、といった具合だ。だが、今作『Eye of the Storm』は決してそうではない。とにかく思いっきり振り切っている。"洋楽の真似事"ではなく、もはや"洋楽"なのである。これまでの"ワンオク像"なるものが取り舵方向にあったとすれば、それに見向きもしないといった感じに、面舵一杯に船を進めている。

 では、面舵の方向の先には何があるのか。それは世界への"迎合"か。いやはや、それはどうも違うような気がする。というのも、彼らは面舵の方向へと進んだことで、"日本の"ロック・バンド、というくくりを無くすことに成功しているからだ。確かに彼らは、日本で生まれ、日本語を母語としている。けれども、表現をする音楽に関しては、打ち込みを多用した、近年のU.S.ポップ/ロックに限りなく近い。また、今作のサウンドの大胆な転換は、Linkin Parkの『One More Lignt』(2017)でのポップ・サウンドへの変容、さらにはMUSEが『Simulation Theory』(2018)においてみせた、実験的なポップ・サウンドへの移行を思い起こさせる。

 ポップ・ミュージック最盛期の現在において、U.S.のロック・シーンは、ロック再興の打開策として、ポップとの融和を図っている。ONE OK ROCKも、彼らと同様のまなざしをもって、新たな可能性を見出そうとしている。そしてそれを、よりリスナーに分かりやすく提示するかのように、英語の発音や歌詞の置き方は、これまで以上に洗練され、不自然さは一切ない。

 世界に対する"迎合"、あるいは"洋楽の真似事"。それは、日本というフィルターを通してみているに過ぎない。つまり彼らは、今作において、ある意味で"ガラパゴス的"な日本のロックに一石を投じているとも言えるのだ。そして、その意味において、彼らに対して"日本のロックバンド"たる姿を求める、というのはやや詭弁のようにすら思われる。彼らはただただ、ONE OK ROCKというロックバンドなのである。

 "ガラパゴス的"と書いたのは、日本国内で熟成、さらには内在化し、いわゆる"ロキノン系"と呼ばれるようなサウンドや、音楽性を持ったバンドを指す。ただ、今はどちらが良いかという話ではない。ONE OK ROCKの『Eye of the Storm』に関しては、その界隈とは一線を画しているということなのである。いうなれば、日本のこれまでのロキノン的なロック像、あるいは日本人の求めるギターやベースを轟音で鳴らし、生々しいドラムに激情的な歌が乗る、といったステレオタイプ的なロック像からの脱却しているような気さえするのだ。それは、かつての彼ら自身の姿だったかもしれない、あるいはファンが求める姿だったのかもしれない。けれども、彼らはそこから抜け出したのだ—。

 なんというか、その様は日本の野球に似ている。小技を多用し、献身的なスモール・ベースボールと呼ばれる日本の野球。それは、集団主義的な日本において、独自に進化を続けてきた。しかしながら近年、国際大会での優勝は遠のいている。つまり言いたいのは、"内在化"にはある程度の限界があるのではないかということだ。確かに、その国独自に進化させたもの、その国に合うように進化させたものは、瞬間的な力を見せるかもしれない。けれども、それが持続的であるかといったらそうではない。昨今MLBから輸入された、フライ・ボールという打撃理論。一部の選手はそれを導入することで、新たな可能性を見出そうとしている。日本の野球の既成概念を、根本から覆そうとしているのだ。

 日本の音楽界も同じで、こうしたアルバムが評価されなければ、音楽の未来がないと言い切ってしまってもいいのかもしれない。内在化し、ガラパゴス的な日本のロックシーン。これは、言語的(日本語)、地理的(島国)、さらには民族的な要因(単一民族)と相まったために、ある意味免れない事態だったのかもしれない。けれどもそれが、今後の音楽界にとって必ずしもメリットがあるとは言えないだろう。フィジカルではなく、ストリーミング・サービスが世界的な状況の昨今において、リスナーの視野はどんどん広がっている。アーティストもそうした視野は今後、より必要になってくるはずだ。そうした中においてONE OK ROCKのこの革新的な作品は、現在の日本のロックシーン、さらにはリスナーに対して、"未来"を提示したのだ。彼らは今回、それくらいの作品を世に送り出したと言えるだろう。

ONE OK ROCK: Wasted Nights [OFFICIAL VIDEO]
https://www.youtube.com/watch?v=b4YLo74OWfY

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