いよいよSUMMER SONIC 2023当日である。昨年まではマスクの着用が必須であったが、今年からはそのルールが撤廃され、声出しのほうも自由にすることが可能になった。4年ぶりの制約のないサマソニに、ワクワクが止まらない。8時半頃、朝定食を食べに某牛丼チェーン店へ向かう。ソーセージと目玉焼きと牛小鉢のついたものを特盛で食べる。ここでしっかりと腹ごしらえをしておかなければいけない。これが、俺なりの"ソニ飯"である。駅から最寄りの駐車場から駅に向かっていると、よりによって交差点でお菓子をばら撒いてしまった。リュックサックのチャックを閉め忘れる初歩的かつ痛恨のミスをしていたのだ。すべて回収したかと思いきや、交差点の中心にじゃがりこを置き忘れたことに気が付く。一刻も早く助け出したい。ところが歩行者信号は赤――。スターウォーズのエピソード1でクワイ=ガン・ジンが瞑想しダース・モールとの交戦を待っているような心持であった。信号が再び変わったタイミングで無事回収はできたものの、その代償に、乗ろうとしていた電車に乗ることはできなかった。仕方なく次の電車が来るまで、すぐ近くのスーパーで昼食を調達する。バラ撒いてしまったお菓子の回収によるダッシュで早速汗をかいてしまったため、店内のベンチに座って休む。ちょっとした焦りと無駄な動きが命取りになる2023年、夏。持ってきていたアミノバイタルをさっそく一包摂取する。おにぎりを3つほど買い、ようやく電車に乗り込む。結局こういう場所での昼食というのはおにぎりが一番いい。車内ではこの日のヘッドライナーであるblurを聴いていた。海浜幕張駅が近づいてゆくにつれて徐々にサマソニに行くと思われる格好の人が増えてきた。
海浜幕張駅は10時過ぎだというのに既に混んでいた。幕張メッセやZOZOマリンスタジアムのある方とは反対側の出口を出る。というのも、そちらから回って横断歩道を渡り、反対側の道を歩いた方が結果として早いというのがこれまでの経験則であった。ワールドビジネスガーデン方面へと歩いていくフェス仕様の格好をした人がちらほらといたため、ついていってみることにする。ここから幕張メッセに行けるということなのだろうか。イチかバチかの選択である。建物に入ってみると、海風とも似つかわしくない熱風から一転、天国のような涼しさがそこにはあった。この建物には長い通路があり、ローソンやら飲食店やらが立ち並んでいた。ガラス窓の外を眺めてみると、反対側の歩道には多くの人がイモ洗い状態になって行列をなしていた。しばらく歩いていると出口に到達した。なるほど――外に出ると、歩道橋を渡ればすぐに幕張メッセに行けるところまで来ていた。そのまま歩道橋を渡り、シャトルバス乗り場へと向かう。「シャトルバスを積極的に使用する」というのは昨年得た教訓である。バスには行列ができていたものの、ほとんど待つことなく乗ることができた。相変わらず少し歩いただけでとんでもないくらいの量の汗が噴き出してくる。
車内。バスの運転手は一人一人に
「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます……」
と声をかけ、とても丁寧な振る舞いなのが印象的だった。恐ろしいくらいに丁寧だったので、あるいはロボットだったのかもしれない。乗車中、後ろの席の人の会話を聴いていると、前日に急遽出演が決定したSUMMIT ALL STARSと、ここ最近世界的に人気が爆増しているNewJeansを観に行くようであった。自分もそのためにわざわざ早くから来た。外を眺めてみると、多くの人がこの炎天下の中歩いているのが目に入った。幕張メッセからZOZOマリンスタジアムまではさらに15分から20分ほどかかる。シャトルバスはもちろん無料のため、是非とも利用することをオススメしたい。ZOZOマリンスタジアムに到着すると、さらに気温が上がってきていた。例年、朝に到着するとリストバンドは比較的スムーズに交換できるのだが、今年はNewJeans効果なのだろうか、思った以上に混んでいて驚いた。会場に到着し、ひたすら外野席の方向に向かう。飲食店の行列はまださほどない。とはいえ、申し訳ないがソニ飯なるものは買わない。ここで並んでいる時間と、待っていることによる体力の消費を少しでも抑えたいのである。サマソニはいかに最後まで体力を温存するかが重要である。こういうイベントでありがちな、やたら割高なくせに写真とはあまりにも違いすぎる"チンケ"な食べ物が提供されるのが目に見えて分かるという理由もある。サマソニ、そして、自分にとっての"夏"がようやく始まる――。
