NewJeansのアクトにより全身汗まみれになってしまったため、一度着替えてから、ZOZOマリンスタジアムのスタンド席に向かう。野球で言えば、三塁側のホーム寄りの位置である。少しばかりは涼しいだろうと思ったが考えが甘かった。座席はやけどするほど熱くなっていて、じっとしているだけでさっき着替えたばかりのTシャツにまた汗が染みこんできた。先ほどまで満杯だったアリーナに目をやると、風船に穴が開いたかのごとく一気に観客が抜けていき、なんとも寂しい感じになってしまっていた。続くPale Wavesは、2019年のサマソニにも出演していたが、その時は観ることができなかったため今回は観たいと思っていた。開演時間が近づいても依然として人は埋まらない。そんな状態のまま、Pale Wavesのアクトがスタートする。1980年代のMTV全盛期の楽曲からインスパイアされたようなギターロック、ポップスが場内に鳴り響く。しばらくすると、レフト側、ライト側の両方からミュージックビデオさながら人が一斉に入り込んできた。どうやらNewJeansとの入れ替えに時間がかかってしまったようである。心なしかその瞬間、ボーカルのヘザー・バロン・グレイシーの表情も明るくなったような気がする。突然、奇跡的に雲がかかり、涼しい風が吹いてきた。まさに恵みの風である。これでようやくゆっくりと観られる……。ところが長くは続かず、再び太陽が照り付けてきた。ヘザーはレインボーフラッグを観客から渡され、それをマイクに括り付けて歌っていた。なかなかドラマチックなステージだった。
後半戦の体力温存のために一旦はMARINE STAGEから退却する運びとなった。日陰にてしばらく座って休む。スタジアムのコンコースに設置されたミストが噴き出しているスペースには、野戦病院さながら、既に限界を迎えている老若男女が横たわり、この日の過酷さを物語っていた。筆者もまた死に場所を求めてさまよい歩く。ベンチは空いていなかったので、スタジアム裏のちょっとした日陰のスペースに座り、そこで無になる。1時間半ほど経過し、少しだけ体力が回復したため、Two Door Cinema Clubを観るべく、再び戦場ZOZOマリンスタジアムへと繰り出す。先ほど場内を見回したときに、2階スタンド席に日陰が生じているのを発見したため、一抹の希望を頼りにスタンド席へと向かう。ゾンビが繁茂する世界で人々が安息の地を求めて移動するように、灼熱地獄のスタジアムにおいては誰もが日陰を求め右往左往するのだ。2階スタンド席は、確かに1階よりも僅かであるが涼しかった。とはいえ、日陰の座席はほとんど埋まっており、その境目のような場所に仕方なく座ることになった。しばらくすると、Two Door Cinema Clubのアクトがスタートする。一音目が鳴った瞬間、これは絶対に室内で聴いた方がいい音楽であると確信する。それも西日の差し込んでくるような時間ではなく、MIDNIGHT SONICのような深夜帯がいい。4ビートの乗りやすいリズムは日本のロックバンドを聴く人たちとも親和性が高いと思った。インストゥルメンタルの部分だけを聴いていると、ROCK IN JAPAN FES.に出演していても遜色ない。まさしくその前の[Alexandros]を聴いている人たちにも響いたのではないだろうか。
Two Door Cinema Clubのアクトが終わり、再び外に出て休憩をする。本日3本目のポカリスウェットとアミノバイタルを摂取した。暑さで疲弊してはいるものの、足の疲れはまだそこまで感じない。アミノバイタルといえば、登山や激しい運動で摂取するのがおなじみであるが、こういったイベント事でも重宝するアイテムである。別に回し者でないが、本当にオススメしたい。続くSEKAI NO OWARIは、単独公演のチケットを取るのがなかなか難しいため、せっかくの機会と思って観ることにした。アリーナ前方の上手側に日陰ができているのを見つけ、空席のない日陰のスタンド席から降りる。次が音楽的に見事に相反するFall Out Boyだったせいか、観客は思った以上にいなかった。それ以上に感じたのは、得も言われぬ"アウェー感"。これは終盤に配置された邦楽アーティストの宿命であるが、これにどのようにセカオワが太刀打ちするのかある意味楽しみでもあった。時間になりメンバーが登場する。彼らは2019年のMIDNIGHT SONICで観た時以来であった。深瀬はロングTシャツの上に"DEEP PURPLE"と書かれた半袖のTシャツを着ており、何とも暑そうであった。セットリストは『Rip』、『Eye』の楽曲が多く演奏された2019年のときと比べて、各年代の代表曲で無難にまとめられていた。正直なところ、衝撃度の大きさで言えば前回の方が良かったと感じる。やはり彼らも野外ではなく、クーラーをガンガンに効かせた室内で観たいアーティストである。残念ながら"アウェー感"は終始拭い切れないまま、セカオワのアクトは終演。とはいえ、最終盤に披露された「Dragon Night」のアンセム級の盛り上がりっぷりはさすがであった。残すところ、あと2アーティスト、確信はないが、筆者の体力は何とか持ちそうである。