1人暮らしを始めた当初は、料理をするのにやたらと時間がかかっていた。なんで時間がかかっていたんだろうと思い返してみれば、それは1つのことしかやっていないからだった。というのも、そのとき取り掛かっている料理にしか専念せずに、片づけとか、次の料理の下準備なんていうのは全くと言っていいほどやっていなかった。
堺雅人だったか、なんかのテレビ番組で、料理ができたと同時に片づけも全部終わっていることが理想である、みたいなことを言っていたけど、まさにその通りだと思う。そうするためには、料理が出来上がるまでを逆算して一緒にできることを探す必要がある。例えば、肉を解凍している間に野菜を切って、お湯を沸かしておこうとか、何かを煮込んでいる間に、使った調理用具は洗っておこうといった具合。さもなければ最後まで残された調理器具や食器の山を洗う「作業」や、予定の時間よりも大幅に遅れた夕食によって無駄にした「時間」が発生してしまう。
今ではそうした段取りを考えられるようになったからか、料理の美味しさは別として、ちょっとぐらいは手際が良くなったと思う。でもそれは「慣れ」とか「経験」の蓄積のおかげで「自然と」考えられるようになったといったほうがいいかもしれない。そう考えれば、料理を始めた当初なんて言うのは右も左も分からずやっていたから、時間がかかってしまっていたのも無理はない。試行錯誤を繰り返して得た「慣れ」と「経験」によって無駄なものが「淘汰」され、ようやく自分の料理の形が出来上がってきたということである。そのうち、無駄なものを「淘汰」しすぎるあまり、白飯とたくあんだけみたいな究極にシンプルな食事になってしまうかもしれない。ある意味で原点回帰である。そんなもんだから料理というものは奥が深い。