三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

東京ディズニーシーの思ひ出

東京ディズニーシーに行く——。アキ・タケン(秋田県)という山に囲まれた辺境の地に身を置く当時小学生の筆者にとって、このことはとんでもないくらいの冒険であり、ユートピアを目指す夢への旅路であった。長い長い空と列車の旅の果てに、家族一同を迎え入れ…

"自由気まま"な奥田民生の歌が"牙を剥く"とき

奥田民生の父、幹二氏はかつて共産党議員であった。"蛙の子は蛙"ということわざの逆には、"鳶が鷹を生む"ということわざがある。奥田民生は、そのどちらか。息子民生は、小学校6年生から上京するまで『赤旗』日曜版を配達していたという。また、父が街頭演説…

地方出身者の東京、幻想ーサカナクション「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」より

心地のよいダンスビートはBPM120、AM1時の恵比寿リキッドルームで——。 この曲を一聴すると、東京というアイコンが持つ、整然としていて無機質なイメージが想起されてきた。ただしそれは、東京の表層部分、もっといえばライブハウスの中での話に過ぎない。一…

善人と悪人、両者を平等に苦しませる酷寒の悲劇―『ウインド・リバー (Wind River)』(2017) レビュー

草原がなびく私の理想郷 風が木の枝を揺らし水面がきらめく 孤高の巨木は優しい影で世界を包む 私は このゆりかごであなたの記憶を守る あなたの瞳が遠く現実に凍えそうな時 私はここに戻って目を閉じ—— あなたを知った喜びで生き返るの やさしく、満たされ…

軽やかさ、いまだ健在——Green Day『Father Of All...』レビュー

3年ぶりにGreen Dayの新作がリリースされた。2000年代、特に2004年、ジョージ・W・ブッシュ政権を痛烈に批判した『American Idiot』、そして、アメリカ社会を痛烈に皮肉った、2009年リリースの『21st Century Breakdown』以降の彼らは、自身の生み出した政治…

自身の信条と、それに背反する精神との戦い―『ハクソー・リッジ (Hacksaw Ridge)』(2016) レビュー

第二次世界大戦は、多くの犠牲者と憎しみを生み出した惨状であった。同時に、世界中で多くの作品も生み出すことにもなった。『ハクソー・リッジ』もまた、その数ある産物の内の一つである。作品の舞台は太平洋戦争末期、1945年5月の沖縄の前田台地。ハクソー…

人間のエゴについてーオーストラリアのカンガルーから

オーストラリアでは、カンガルーが増えているらしい。そうこうしている間にもどんどんと......。その数は約5000万頭だとか。オーストラリアの人口が約2500万人なので、人口密度よりも、"カンガルー密度"の方が高いという計算になる。なぜ、こうも増えてしま…

君にとり唐をあげたい

揚げ物って、すごく面倒なのよね〜。何よりも、油がはねるのが怖くて怖くて。もう何度やけどしたことか。夏だったらなおさら嫌ね。キッチンはただでさえ暑いのに、揚げ物をするとそれだけで体感温度が一気に上がった感じがするんだもの。あと、準備も面倒ね…

ショウガ焼きを極めたい

生姜焼き——何の疑問もなしに使っているこの言葉、語義通りに受け止めてしまえば、生姜を焼いたもの。ある意味これは、レトリックである。とことん無駄が省かれたその名前に薬味である身分の生姜は謙遜をする。「ははぁ、恐縮極まりない。私は、主役ではない…

イメージについてーCMとピラミッドとお茶石鹸

世の中の、ありとあらゆるものにはイメージが付きまとう。 たとえばCM。ビールのCMに出ている俳優が、グイっとビールを飲みつつ、「これ、美味いねぇ。やっぱり◯◯(商品名)でしょ!」と言うものがあったとする。ビアガーデンか何かの屋外で、同僚がいて、乾杯…