01. ONE OK ROCK - Head High
彼らは2019年に出したアルバムで、日本のロックシーンという括りから完全に抜け出した。そのためこれを、果たして邦楽として評価していいのかという疑問さえ浮かんでくる。その作品の中でもこの楽曲は特に、彼らの方向性を印象づけるにふさわしい一曲であるように思える。ボーカル、サウンド、プロデュースに至るまで、どれも日本人離れした一級品。2020年代、彼らは世界の舞台でさらなる飛躍を遂げることは間違いないだろう。
02. 宮本浩次 - Do you remember?
2019年1月、エレファントカシマシのフロントマン宮本浩次はソロデビューを果たした。53歳にして、世間の話題をかっさらってしまうのは流石としか言いようがない。もちろん、その楽曲もバンドとは大きく差別化されていた。この楽曲は、2010年代後半の宮本のスタイルの総決算のように思える。シンプルな2ビートに、耳をつんざくようなシャウトと美しさを孕んだファルセットとの共存。現在進行形で、かっこいいと思わせる一曲だ。
03. SEKAI NO OWARI - Blue Flower
2019年、彼らは趣の異なった2つの作品『Lip』『Eye』をリリースした。陰と陽でいうならば、この楽曲が収録されている『Lip』は陰である。バンド・サウンドから軽やかに逸脱したそのサウンドの肝となっているのはスーパー・ローを強調させた太いビート。そんな低音による魔力は、ボーカリスト深瀬のファンタジックな歌声によってさらに増幅される。この楽曲は、まさにその真骨頂のような楽曲といえるだろう。
04. スピッツ - ありがとさん
3年振りとなった彼らの作品は、とても若々しかった。まるで、50代に差し掛かって、老年の青年時代を謳歌しているかのようである。その中でも特にこの楽曲は、サウンドやリリック、その構成に至るまで、2010年代の彼らのベスト・トラックと言ってもいいくらいの完成度のように思える。バンド・サウンドを30年間磨き続け、無駄がそぎ落とされたことで生まれた、一つの集大成のような楽曲である。
05. King Gnu - 白日
2019年を象徴するバンドの一つと言っても過言ではない、King Gnu。楽曲を貫くシャッフルビートに乗せられるリリックは、母音が長くなりがちな日本語であっても、不自然さはない。USのR&Bの要素をフィーチャーしたものであるが、その構成は、徹底的にJポップが意識されたものであり、Aメロ、Bメロ、サビ、そして最後の転調と、まるで1990年代のCDバブル期のそれを彷彿させるものだった。そのバランスが非常に策略的な一曲。
06. 折坂悠太 - 朝顔
前作、『平成』(2018)で耳目を集めた折坂悠太であるが、2019年はこの楽曲が月9ドラマの主題歌に採用されるなど、さらなる飛躍を遂げた。弾き語りのシンガーソングライターとしてだけではなく、近年のバンド・スタイル(彼は合奏と呼ぶ)での幅の広がりを如実に感じさせる一曲である。唱歌を思わせる懐かしく、美しいメロディと、朗々とした彼の歌いっぷりは、バンドの音に埋もれるどころか、より一層輝きを放っている。
07. The Birthday - 星降る夜に
この楽曲は、GMO クリック証券のTVCMで知った。テレビからこの楽曲が流れてきたとき、あまりにもかっこよくて、思わず誰なのか調べてしまった。この楽曲を聴くと幻想的な情景が浮かんでくる。月明かりに照らされて、波しぶきがキラキラと光っているような強さと美しさだ——。彼らが、現在も第一線で活躍していることを証明する一曲である。
08. でんでん - UNICORN
力が抜けながらも、奥田民生のボーカルの魅力を存分に堪能できる楽曲。そのリリックとサウンドは、解散末期の『SPRINGMAN』(1993)の頃ようなコミック性を思わせる。近年彼らは、ボーカルを分業体制にし、奥田民生の出番は少なくなっているが、その分一曲の強さみたいなものは増幅されているような気がする。
09. LUNASEA - PHILIA
ロック・オペラのような美しさを持った一曲。途中に入り込むピアノ・パートはヴィジュアル系という枠組みというよりは、Museの「The Globalist」の展開だったり、1975年辺りまでののQueenを彷彿させる。複雑な構成ながらも、説得力があるのは、彼らの盤石な演奏力がそうさせているに違いない。
10. BOYS END SWING GIRL - スタンドアローン
2019年の12月リリースのミニ・アルバムに収録された一曲。清涼感のあるバンドとして、評価されてきた彼らであるが、今作はその清涼感のベクトルが"青春"から、大人になった諦念からくる、そっけなさのようなものへと振り切られた印象がある。新たな境地を見せてきた彼らは2020年代、次なるステージへと踏み切る——。