三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

The 1975、ヤバすぎ!——SUMMER SONIC 2019 に行ってきた その4

間違いなくこの日のベストアクトだったのはThe 1975。彼らのパフォーマンスくらいからどんよりとした雲がサーッとはけてきて、あれだけ蒸し暑かった会場には心地のよい風が吹き始めていた。前アクトのWeezerで揉みくちゃになった反省を生かして、アリーナ後方のaudio technicaのテントの右斜め後ろくらいの場所で観ることにした。

 

彼らのパフォーマンスは、今年のコーチェラのYouTube配信で観ていた。そのときはスクリーンに映し出される映像だとか、動く床だとか、あとはダンサーとボーカルのマシュー・ヒーリーとの絡みのカットなんかも効果的で、映像を通した視覚的な見せ方が印象に残っていた。そのため実際生で観ると、どうなんだろうなと思っていたが、全くの杞憂だった。

 

オープニングムービーが終わるとメンバーが登場し、マシューは初代プレイステーションのロゴがプリントされた帽子とパーカーを着て、日本酒の瓶をもって現れた。「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」のアウトロのときには"カンパーイ"といって一升瓶を煽る。オートチューンのかかったなんとクールな"乾杯"なんだろうか。チェイサーにはポカリスエットを飲んでいた。アルコールにポカリ、酒飲みにとってこれ以上にない組み合わせである。

ライブの様子はローリングストーンのライブレポートにきっちり丁寧に書かれているのでそれを参照してほしい。あるいは、YouTubeのストリーミング配信をアップロードしている人もいるかもしれないから、それをチェックしてみるのもいいかもしれない。

 

rollingstonejapan.com

 

彼らのアクトは、音がクリアに聴こえてかなり驚いた。屋外の、しかも強風のステージというのに、それを微塵も感じさせなかった。おそらく、アンプの音をマイクで収音するのではなく、鳴らした音をそのままPAに送っていたからだと思うが、会場を心地よく包み込むようなサウンドだったのだ。それだけではなく、マシュー・ヒーリーのたたずまいがなんとも趣があってよかった。彼はアルコールの影響か、曲が進んでいく毎にだんだんとふらふらし始め、破滅的になっていった。そんな中でもマシューはしっかりと歌を届けていく。

 

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ライブの終盤、空はオレンジ色と水色のグラデーションになっていた。風も心地よく吹いてきて、まるでステージの演出の一部のようになっていて、4DXで映画を観ているような感覚になった。「sex」のアウトロ部分、スクリーンに、"ROCK & ROLL"と映し出された。観客はロックンロール!イエ―!といって湧き上がっていたが、その直後に"IS"、"DEAD"、"GOD BLESS"と続いたので、会場はうわっ、マジかよ……と、一気にしてやられた雰囲気になっていた。どこかのバンドがMCで「下ネタ言いまーす、セックス!」だとか、「自己紹介しまーす!剛力彩芽でーす!」とかいって会場をクールダウンさせていたが、なんというか品格が全く違った。それこそ朝青龍と白鵬みたいな感じであった。無論、The 1975は後者である。

 

気が付けばThe 1975のパフォーマンスは、誰もが自由に揺れたり踊ったり、時には手を挙げてジャンプをしたりと、最高の空間になっていた。サマソニが始まる前は、B'z地蔵がどうのこうの、なんて言うことが揶揄されていたが、そんなのは全く気にならなかった。いやはや、会場を支配するとはこのことかと思った。もうヘッドライナー級のすさまじさだった。それは次に控えるB'zのファンの中にもそう思った人はいたのではないだろうか。

 

先日、バンドTシャツをもってきてくれれば、そこにThe 1975のデザインをプリントするという画期的な試みを行うことが発表されたが、いったい何人のB'zファンがそのTシャツの上にThe 1975のデザインをプリントするのだろうか。いやはや、様々な文脈の音楽ファンにとっての、交流を果たしたかのようなライブだった。フェスのすばらしいところが見えた感じがした。

 

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セットリスト

1. Give Yourself a Try
2. TOOTIMETOOTIMETOOTIME
3. She's American
4. Sincerity Is Scary
5. It's Not Living (If It's Not With You)
6. I Like America & America Likes Me
7. Somebody Else
8. I Always Wanna Die (Sometimes)
9. Love It If We Made It
10. Chocolate
11. Sex
12. The Sound

 

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