現地時間4日、イチローと大谷は遂に対面を果たした。数々の歴史を築き上げてきたレジェンドイチローを前にして、大柄な大谷は何だか小さく見えた―。
"大谷世代"と言えば1994年生まれのスポーツ選手を指す言葉であるが、彼らが産声を上げた頃イチローはオリックスブルーウェーブのレギュラーに定着し、21歳の若さで200本安打、更にはその年から渡米するまで7年連続で首位打者を獲得し続け、一気にスターダムへとのし上がる。
大谷世代が物心がつき、"野球"という存在を認識し始めるようになった頃というのは、イチローは既に渡米してしまっていて球場に足を運んで簡単に観られるような選手ではなくなっていたはずである。そんなメジャーリーグに舞台を移した後もイチローは活躍を続け、2004年にはシーズン262安打という大記録を打ち立てる。その頃の大谷世代は小学校3,4年生。多くの子供たちは丁度これくらいの年齢の時に野球を始める(ちなみに大谷も小学校3年生のときに野球を始める)。
テレビを付ければイチローのCM、スポーツ店に行けばイチローモデルのバッドやグローブ、さらには大きなポスターが飾られていたり(この頃野球コーナー壁に飾られている大きなポスターといえば大体イチローと松井秀喜)と、当時の野球少年たちは誰もが彼にあこがれを抱き、魅了されていた。イチローは2006年と2009年のWBCに出場し、その存在感とリーダーシップをいかんなく発揮した。当然、大谷世代の野球少年たちもリアルタイムでその活躍する姿に熱狂した。イチローという存在がさらに大きく、遠いものへとなっていった―。
2011年、イチローは200本安打と日本球界時代から16年続いていた3割記録が途絶えてしまう。その頃大谷世代は高校生になり、野球を続ける者もいれば当然野球からドロップアウトする者も出てくる。しかしながら、そんなドロップアウトした者にとっても、イチローがメジャーリーグで最も活躍している時期をリアルタイムで追いかけ、野球に対する姿勢や、面白さを彼から学んだ世代であることには変わりない。イチローに対するあこがれや、応援する熱意は依然として変わることはない。そして、そこには野球をよりすばらしいものだと思わせてくれた一抹の感謝の気持ちのようなものすらある。
イチローはヤンキース (2012-14)、マーリンズ (2015-17)とチームを転々とし、"年齢"という何よりも大きな壁と格闘しながらも、その出場機会は徐々に減っていく。そんな最中、今年3月上旬、突然古巣マリナーズへの復帰が発表された。同リーグのエンジェルスでは今年から大谷がプレーしている。図らずも、誰もが待ち望んでいたイチローと大谷との対決、そんな夢が現実になろうとしていた。しかしながら、両者の対決は少なくとも今年は見られない。イチローは生涯契約をマリナーズと結び、今シーズンは試合に出ないことが決定したためである。
そんな契約直後、皮肉にも実現したエンジェルスとマリナーズとの対戦カード。大谷はイチローとの対面を「野球教室に来た小学生が、すごく張り切って、いいところを見せようと。そういう気持ちだった」と振り返った。イチローの背中を観て育ってきた大谷世代にとってイチローはいくつになっても圧倒的な存在として心の中に焼き付いている。この対面の時の大谷の雰囲気はまさにそれを象徴しているようにも見えた。