三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

初期衝動からの"第2の爆発"―MUSEの2ndアルバム『Origin of Symmetry』レビュー

 若さと勢いそのままの、まさに初期衝動と言わんばかりの1stアルバム『Showbiz』(1999)。2ndアルバム『Origin of Symmetry』(2001)では、それに匹敵する位の"第2の爆発"が起こっている。爆発力はさらに凄みを増し、荒く削りだされた原石には、磨きがかかり、それは乱反射しながら四方八方に輝きを放っている。

 本作のアートワークは白い地面とオレンジ色の背景に、音叉型の木のようなものが地面からいくつもそびえ立っている。その風景らしきものは、枯れ木と白い砂にオレンジ色の太陽の光が反射して、時より絵画のような風景が作り出される"ナミブ砂漠"とどこか似ている。そこはテレビや写真で見る限り、到底同じ地球には思えない。このアルバムの楽曲の数々も、どこか遠い惑星の宇宙人が、地球の辺境に降り立って奏でているような音楽を思わせる。

 そんなアルバムの開幕を飾るのは「New Born」であるが、この曲はいきなり聴く者を"ぐるぐるとした混沌"へと陥れる。というのも、聴いていると頭の中が何だかヤバい生命体に蝕まれていくような感じで、どこか気持ちが悪いのだ。マシュー・ベラミーはこの曲をマジックマッシュルームを服用して作ったという逸話があるが、その真偽はさておき、そういった類のぶっ飛んだ楽曲なのであることには間違いない。

 いきなり"第2の爆発"なる洗礼を浴びたところに今度は無重力空間にテレポーテーションしたかの如く、どことなく浮遊感のあるような「Bliss」へと続く。その無重力空間では大小様々な大きさの球体が、四方八方で規則的に回転運動をし、時よりそれが跳ねたり衝突したりしているような景色が想起される。そんな異世界へと転生された後は、渦巻くようなピアノの旋律とマシューの貫くような歌声がこだまする「Space Dementia」。この曲からもやはり宇宙空間や無重力空間の類が連想される。なんというかそれは、ブラックホールのようなものに光沢を帯びた色とりどりの物質が、マーブル模様を描いて吸い込まれていくような感覚だ。

 ようやく宇宙空間から地上世界へと降り立つことができたと思えば、「Hyper Music」のFuzz特有のずっしりとした歪みのリフが跳ねるように刺さってくる。ただし、曲の喜怒哀楽は一切不明。それは例えるならば"能面"だとか"モナ・リザ"のような中間表情のような感じだ。しかしながら、それは"まとまり"や"主張"がないというわけではない。その"中間性"こそが、曲に魅力を持たせているように思えてならないのだ。勢いそのまま本アルバムのキラーチューン「Plug in Baby」へと続いていく流れは、ものの見事。本アルバムにおける異世界を象徴するかのような、ハードロックや近年のオルタナティブロックには到底存在しないような特徴的なリフが乱発されるこの曲においても、全く不自然な感じはしない。マシューの頭の中は一体どうなっているのだろうか。

 「Citizen Erazed」ではグランジムーブメントが衰退してきた2001年当時において「この音楽のことも忘れんなよ」と言わんばかりのノイズを利かせたリフが炸裂する。しかしながらその"炸裂"っぷりは後に引かない。"瞬間の美学"という感じに「Micro Cuts」によって包み込まれるように消えてゆく。柔らかな光が差し込んできたかのような曲調に優しいマシューの歌声が乗せられた曲は美しくかつ奇妙に展開していく。それを助長するかのようなマシューのオペラ歌手さながらの歌唱法と激情のサウンドは、どことなく初期のQueenを彷彿とさせる。

 「Darkshines」では負の感情が一気に爆発したような狂気が曲に纏われている。一方で「Feeling Good」では対極的に"自由"と"新しい夜明け"が高らかに歌われる。この2曲は正と負の感情が両極端に移行していく感じがする。そして、アルバムの終盤の「Megalo Mania」。これは16世紀とか17世紀とかの壮大なパイプオルガンの楽曲を彷彿とさせる。不思議とこの辺りではさっきまでの宇宙空間なんて言うSFチックな感覚はなく、現実世界へと引き戻されていくような感覚さえ覚える。

 そんな感覚のまま最終曲の「Futrism」を迎える。ここで完璧に現実世界へと目が覚めた。曲には悩みやしがらみの全てかが解放され切って、吹っ切れたような様相を呈している。現実に直面し、それまでの景色は虚像と幻影にすぎない。なんというかそれは夢の世界をたっぷり楽しんだ後、今度はそれを一気に俯瞰するような感覚であった。

 2作目のジンクスどころか、初期衝動を凌駕するほどの勢いを持った『Origin of Symmetry』。この時のマシュー・ベラミー、弱冠23歳。作品からは既に貫禄さえ感じさせる。とんでもないくらいの名盤である。【ほぼ日刊三浦レコード49】

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Track Listing

01. New Born
02. Bliss
03. Space Dementia
04. Hyper Music
05. Plug In Baby
06. Citizen Erased
07. Micro Cuts
08. Screenager
09. Darkshines
10. Feeling Good
11. Megalomania

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