三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

ビリー・ジョーのソロプロジェクト、"The Longshot"のデビュー作『Love Is For Losers』レビュー

  Green Dayのビリー・ジョーによる新プロジェクト、The Longshotのアルバム『Love Is For Losers』が4月20日リリースされた。このアルバムはパッと聴いた限り、「なんだGreen Dayと変わらないじゃないか」、なんて風に思ってしまう人がいるかもしれない。

 でも、1970年代のオールドな雰囲気が漂う楽曲の数々は、少なくともGreen Dayの最新アルバム『Revolution Radio』に収録されそうにはない。The LongshotはやっぱりGreen Dayとはちょっとだけ違う。何というか『Love Is For Losers』の楽曲にはGreen Dayのようにポップで爽やかな感じはあまりなく、セピア色で少しくすんだような印象があるのだ。

 ビリー・ジョーといえばかつてGreen Dayと並行してPinhead Gunpowderというバンドをやっていたり、覆面バンドThe NetworkやFoxboro Hot Tubsをやっていたりと、過去にも様々なバンドをやっている。これ程までに様々なバンドで曲を作っていて、よくネタが尽きないなとつくづく感服する。彼の頭の中では湯水のように曲が溢れ出てくるのだろうか。

 それはさておいて、Foxboro Hot Tubsのアルバム『Stop Drop and Roll!!!』(2008)の時はGreen Dayの8thアルバム『21st Century Breakdown』(2009)の片手間に、軽いノリで作ったと言わんばかりのいい感じに力の抜けっぷりで、政治的なメッセージや皮肉がガツンと主張されている『21st Century Breakdown』とはまた違った良さがあった。ガレージ/インディーロックのテイストに全振りした楽曲群。何というかそれは、もしもGreen Dayがビッグになることなく地元バークレーで細々と音楽をかき鳴らしていたらこんな作品になっていたのだろうなという感じである。今回のアルバム『Love Is For Losers』でもそんな"軽さ"が良い感じで出ている。

 音楽雑誌Loudwireでは、The Longshotの今回の新アルバムの告知はInstagramのみでしか大っぴらにしておらず、他のメディアではあまり大々的な宣伝は行っていない。そのため、もう少し一般に周知されてから、リリースした方が良かったのではないかとあった。確かに、宣伝の括りで言うと上手くいっていないというのは事実であろうが、ビリー・ジョーは果たしてこのプロジェクトで何をしたかったのだろうか。その宣伝手法は裏を返せば、知っている人だけが聴いてくれればいいというスタンスのようにも思えてくる。

 Green Dayはアルバム『Dookie』(1994)の華々しいメジャーデビューから20年以上が経った。その間バンドは成長し、最近ではパンク界の重鎮に足を踏み入れつつある。それを証明するかのように昨年の11月にはベストアルバムがリリースされ、彼らが残してきた業績の偉大さを改めて世界中に知らしめさせた。そんな最中、始動したThe Longshot、そしてデビュー作『Love Is For Losers』のリリース。このアルバムからは、大ヒットアルバムや"Green Day"という偉大な存在から逃れるように、ビリー・ジョーが今やりたい音楽をやろうとしているのがひしひしと伝わってくるのだ。

 周りからの重圧や、キャリアから解放されたような趣のThe Longshot。そして中身はGreen Dayっぽいけど、Green Dayにはないオールディな雰囲気。それは、ビリー・ジョーが1970年代にバークレーでデビューした作品だと思えば腑に落ちる。そんなアルバム『Love Is For Losers』、これは何とも面白い作品である。【ほぼ日刊三浦レコード48】

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Track Listing

01. The Last Time
02. Taxi Driver
03. Chasing A Ghost
04. Body Bag
05. Love Is For Losers
06. Cult Hero
07. Kill Your Friends
08. Happiness
09. Soul Surrender
10. Turn Me Loose
11. Goodbye To Romance

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