三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

海外アーティストの来日公演あるある

 海外アーティストの来日公演あるある。それは「公演地を叫び、観客を煽りがち」であるということだ。地名を叫んでくれることによって、観客とアーティストとの距離は一気に縮まり、会場全体に一体感が生まれる。しかしながら、日本において海外アーティストが公演を行う際、その地名を正しく理解してくれている海外のアーティストは意外にも少ない。

 というのも、彼らは東京の隣接県でライブを行っても、皆こぞって、"トーキョー!"と叫んでしまうからである。そんなに東京が好きなのか、はたまた東京以外の地名を知らないのか。これでは埼玉や神奈川の面子が丸つぶれではないか。例えば、先日来日公演を行ったブルーノ・マーズ。会場はさいたまスーパーアリーナ。当然ながら場所は、埼玉県さいたま市である。しかしながらブルーノ、ライブの冒頭でいきなり"トーキョー!"と叫ぶ。彼は影響力のある人間だ、彼が一たび"トーキョー"といえば、そこはトーキョーになってしまうのである。彼の一言によって東京の面積は一瞬にして広がってしまった。思わぬ吉報に、小池都知事の口元は緩んだはずである。

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 時間は遡って2011年。Green Dayが来日公演を行った際、会場は同じくさいたまスーパーアリーナ。その時にもボーカルのビリー・ジョーは何のためらいもなく"トーキョー!"と叫ぶ。なんと潔いのか。埼玉県は会場の最寄駅名は"とうきょう"新都心駅、そして会場名はとうきょうスーパーアリーナへの変更を検討すべきなのではないか。

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 所変わって横浜アリーナ、ここは自治体名で言えば、神奈川県横浜市。しかしながら昨年11月、来日公演を行ったMUSE。遂にはそのボーカル、マシュー・ベラミーまでもがトーキョー!と高らかに叫んだ。そして訂正を加えるかののごとく、申し訳程度の小声で"ヨコハマ―…"と言う。何故だ―。

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 「そんなことはどうでもいいでしょ。東京ディズニーランドがなぜ千葉にあるのか、そんなこと誰も気にしていないでしょ。それと同じよ!」
いかにも夢の国の好きそうな女子大生の声が脳内でリフレインする―。

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 そんなことはさておき、彼らの認識では東京という都市はかなり広いという印象なのだろうか。確かに、東京は東西に長く、南北の移動に関してはあっという間に県境を超える。思えば成田空港、ここは東京感のある千葉県(?)として東京ディズニーリゾートと双璧をなす。その時点で海外のアーティストたちは倒錯してしまっているのではないのか。でかでかと「WELCOME TO CHIBA ようこそ千葉へ」という横断幕が空港内に掲げられていればいいのではないか。だが、そこにクールジャパンの趣は微塵も感じることはできない。そんな愚案、もれなく却下である。成田空港に降り立ったアーティストは車で移動をする。そんな成田空港からさいたまスーパーアリーナを車で移動する場合、約2時間ほど、横浜アリーナまでだと1時間半。では、その距離が関係しているのだろうか。

 例えば、ブルーノ・マーズの場合。彼は今現在、ワールドツアー『24K Magic World Tour』を行っている。先日の来日公演もそのツアーの一環であったが、オーストラリア・メルボルンロッド・レーバー・アリーナ (Rod Laver Arena)でのライブの様子を見てみるとブルーノはしっかりと"Melbourne!"と叫んでいる。ちなみに会場と空港までは約30分ほどで、どちらも同じメルボルンに位置している。これでは間違いようがない。また、イタリア・ミラノのメディオラヌム・フォーラム (Mediolanum Forum)でのライブでも"Milano"と言って観客を煽っている。この会場もミラノ・メルパンサ空港からは約40分ほどである。この距離も間違いようがないというのか。というよりもそれ以前に、空港から会場までが同じ地名であるということの方に注目したい。日本の場合、成田空港からさいたまスーパーアリーナに行く際、千葉、東京、埼玉を経由する。だが、成田の時点で東京と倒錯してしまっているアーティストは、短時間で3都県も跨いでいることなんてつゆ知らず、当然会場も東京であるという認識になってしまうのではないだろうか。

 それにしても、海外のアーティストの皆々様には、是非ともほかの都市も覚えて帰国してほしいというのが切実な思いである。しかしながら、現実は厳しい。関東圏の交通機関の複雑さ、これは世界屈指であろう。さらに建築物の名称、これも複雑である。空港名だって"東京首都空港"、"千葉国際空港"みたいにシンプルすればいいではないか。これに関しては"大人の事情"というものなのか、よくわからない。ただ、交通機関に関して言えば、そんな複雑さは利便性の向上をも意味する。アクセスは良くなり、近隣県への移動は容易になった。だがそれは、先程も書いたように、知らぬ間に隣の県に移動していたという事態をもたらしてしまう。埼玉、千葉の主張の弱さ。そしてそれは神奈川しかりである。そのなかでも神奈川なんてのは江戸時代の関東においてどこよりも早く開国をし、世界と繋がった地である。今こそ、そんな機運を取り戻す時が来ているのではないだろうか。【ほぼ日刊三浦レコード46】

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