三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

『MODERN TIMES』の"隠しトラック"について

『MODERN TIMES』には"隠しトラック"なるものがあるというのが、Twitterで出回っていた。しかもデジタル音源では聴けないという。そんなもんで、久々に部屋の奥からCDプレーヤーを引っ張り出した。1曲目を巻き戻すと"1 0:00"から"1 -0:41"になった。曲のトラックで"-"なんて記号があるのは初めて見た気がする。"隠しトラック"は最初からあるとわかっていてもなんだかすごくワクワクした。それはスマートフォンもネットも普及していなかった頃、ゲーマーの友達からゲームの攻略方法を聞いて半信半疑でその"裏ワザ"を試してみたときのような感覚だった。隠しトラックの出だしはこんな感じ

あー、よくぞ見つけてくれた

こちら2057年 Slack56年第7艦艇

未来のPUNPEEだ

残念ながら君が聞いてた声は未来の本当の私ではない

AIによる偽物なんだ

実はAI戦争が勃発してもう10年が経つ…

 

このアルバムを聴いて思い描いていた、2057年の世界というのは決して平穏なものではなかった。というのも実は全てAIに支配されていて、年老いたPUNPEEの最初の語りも全部AIの仕業!? しかも本当のその世界線では"AI戦争"なるものが勃発している!?―。やられた、そんなのありかよなんて思った。「Oldies」で最後、

どうだった?久しぶりに聞いたら。今でもそれなりに聞けるだろう? ん? 何って、ははは、何も変わってない。若い世代が新しものを作り、老いた者が見守るの繰り返しだよ。誰かが作れなかったものを次の若者が作る。飽きるのは簡単さ、楽しむこと。例えそれが小さな変化でもな。結局、自分が何になったのかは、わからん。ただ、んー、憧れたものは確かにあった。はっきりはしてなかったが確かにあったんじゃ…

なんて、こんなにも素敵なことを言ってるのに!!!その正体が"AI"かと思うとまさに狸に化かされた感じだ。CDでそんな体験をさせられるのは初めてだった。

 

隠しトラックを聴いた上でもう一度『MODERN TIMES』を聴くと作品が全くの別物に思えてくる。特に「Hero」の終盤のリリックなんかは何とも現実的な距離感で突き刺さってくる。

あの芸術家たちも戦争に行ってたら死んでたかも

あの戦争の犠牲者の中にも

未来の芸術家が何人居たろう? 

なんというかX-Menの『Days of Future Past』みたいに今までの歴史が全部ガラッと改変されてチャラになって新しい時間軸が始まってしまうみたいな、そんな大どんでん返しを食らった(またX-Menのたとえかよ!)。やっぱりこのアルバム、只者じゃなかった…。

 

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