三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

すばらしい日々 / UNICORN

UNICORNは1993年に解散してしまうが、その解散直前に出されたシングルがこの「すばらしい日々」である。 この時期のUNICORNはドラムの西川幸一が脱退し、サポートドラマーの古田たかしを携えて活動を行っていた。そのためこの曲は、奥田民生が脱退した西川に宛てて書いたとも言われている。

僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない
一緒にいたいけれど とにかく時間が足りない
人がいないとこに行こう 休みがとれたら
いつの間にか僕らも 若いつもりが年を取った
暗い話にばかり やたらくわしくなったもんだ
それぞれ二人忙しく汗かいて
すばらしい日々だ 力あふれ すべてを捨てて僕は生きてる
君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける

 

PVにも、解散前の暗雲が立ち込めたような雰囲気が表現されている(おそらく意図的に)。全編がモノクロの映像で、メンバーは別々に撮られるシーンが目立ち、物憂げな印象を受ける。そして最後にはメンバー4人がてんでんばらばらの方向に歩き去り、そこはかとなく解散が示唆されたものになっている。

 

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「すばらしい日々」は、その知名度と共にUNICORNの中でも上位に入るくらいの名曲だと言っても過言ではない。この頃のバンドの仲は明らかに良くはないが、個々のスキルはおそらくピークを迎えていて、曲としての完成度が非常に高い。この曲を聴くと別れ際に思い出がエモーショナルに湧き上がってくるときような感覚を覚える。それは、最初は何でもないけど、思い出しているうちに後から効いてくるボディーブローみたいにじんわりと情緒的になっていく感じに近い(泣くもんかと思っていた卒業式で最後ボロボロ涙を流してしまうアノ感じだ)。

 

奥田民生はそんな感情にさせる要素をなんともテクニカルに曲に落とし込んでいる。まさにしてやられた感じではあるが、特にイントロと間奏、さらにはアウトロでリフレインされるフレーズ、これは何度聞いても惚れぼれするくらい美しい。ギター3本のハーモニーとベースのフレーズが見事に調和している。さらにベースはイントロとアウトロでルート音が異なっているため、ギターのフレーズが一緒でも、アウトロの方にどことない悲しさがある。また、最後のサビに入る前のコード進行でも、それまでメジャーコードだったところに一度だけマイナーコードを登場させる奥田民生のお家芸的要素が炸裂していて、これもまたじんわりとくる高揚感を演出させる効果をもたらしている。

 

「すばらしい日々」は聴くときの年齢によって受け取り方が変わりゆくような曲だ。若いときには若いなりの感性で、年を取ったら取ったなりの感性で聴いてもこの曲は否定することなく、受け入れてくれる。なんというかそれは、新酒の時でも熟成された後でもそれぞれに良さがあるボルドーワインみたいな味わい深さがある。【ほぼ日刊三浦レコード8】

 

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