トルコといえばサッカーである。それは他のスポーツは興味がないといわんばかりの熱狂っぷりだ。無論、野球なんていうスポーツはそのルールを知らない人も多く、老若男女問わず、兎にも角にもサッカーを愛している。特に、イスタンブルを本拠地とするガラタサライ(Galatasaray)とベシクタシュ(Beşiktaş)、そしてフェネルバフチェ(Fenerbahçe)はトルコ・スュペル・リグ(Süper Lig)の"ビッグ3"と呼ばれ、熱狂的なファンが多い。イスタンブルのグランド・バザールを歩いていると、応援するサッカーチームの旗を挙げている店が多く見られた。
この写真はグランドバザールに行くまでのちょっとした通りに掲げてあったガラタサライのチーム・フラッグ。
イスタンブルの通りには、ガラタサライの公式ショップがあり、スクリーンには昨年1月に移籍した長友佑都がでかでかと写っていた。笑顔がまぶしかった。彼は一躍チームの看板選手として活躍していたのだった。お土産に何か買おうと思い、中に入ってみると、赤と黄色を基調とした、派手なユニフォームが目に入った。芝生のピッチとのコントラストでは、鮮やかに映えるような色も、一たび街中で着ようものなら、警戒色、あるいは何らかの標識のような色合いに見えてしまった。トルコで一番人気のチーム、しかも長友が所属しているとはいっても、さすがにそのユニフォームは買うことはなかった……。
ガラタサライの公式ショップ。
イスタンブルのショッピングモールに行った際、今度はベシクタシュの公式ショップを見つけた。こちらのチームカラーは白と黒。いたってシンプルで、デザインも凝っているように思えた。カタログみたいなのも置いてあって、中を見てみると、男女のスタイルの良いモデルが、格好良く着こなしていた。筆者はそのショップで、気に入ったデザインのTシャツと、ユニフォームをいくつか購入した。あまり目立たず、普段着ていてもそん色がないと思ったので、出かけるときはベシクタシュのユニフォームを着て行った。それにしても今考えたらかなり浮かれている。日本に置き換えてみると、外国人が阪神タイガースのユニフォームを着て歩いているようなものである(ガラタサライを読売ジャイアンツとした場合……)。
ショッピングモールにあったベシクタシュの公式ショップ。
ベシクタシュのユニフォームを着て、イスタンブルの街を歩いていると、かなりの確率で声を掛けられた。無論、ベシクタシュファンからである。"Oh~! Beşiktaş~! Çok Güzel!(ベシクタシュ、最高!)"、"Sen Beşiktaş ailesi misin?(あんた、ベシクタシュファンなん?)"なんていう風に声を掛けられ、最後には握手までしてしまう始末。空港や、アパレルショップ、バスの運転席まで、ありとあらゆる場所にベシクタシュファンは、いた。国境なんて関係ない、チームを愛する者がいればいかなる国の人間でも迎え入れる。いやはや、なんとすばらしい国なのだろうか――。
バスの車窓から撮ったベシクタシュの本拠地のボーダフォン・パーク。日本人にとって"ボーダフォン"といえばなんとも懐かしい響きであるが、トルコではこの電話会社が一番のシェアを誇っている。
トルコから帰国して数か月がたった先日、香川真司がドルトムントから、ベシクタシュへ半年間の期限付きで移籍することが発表された。移籍直後の試合では、2得点をするなど、さっそくトルコのサッカーファンにその存在を知らしめる、最高の出だしとなった。そういえば帰国直前、昨年の8月の空港で例によってベシクタシュのユニフォームを着ていると、「カガワ、カガワ!」といわれた。どうして長友じゃないんだろうと疑問に思い、調べてみるとその時からすでに香川のベシクタシュへの移籍の話が出ていたのだった。さすがはトルコ、サッカーに関する情報の察知力は群を抜いている。サッカーを愛する国トルコ。そんな最高の場所でプレーをしている彼らがいるうちに、今度はぜひとも試合にも行ってみたい。