三浦日記

音楽ライターの日記のやうなもの

エレカシの日比谷野音 2016年 回想録

エレファントカシマシは、日比谷野外音楽堂(通称"野音")でのライブをデビュー以来、毎年のように行っている。ここ最近だと、彼らの長年積み重ねられた歴史によって、"聖地"のように祀られるようになってきてしまっている。このライブには、そんな彼らの"歴史"と都会のど真ん中に木々の生命力が宿ったような日比谷公園の"ロケーション"と相まってか、どこか"神秘的"な雰囲気がある。また、セットリストはセットリストで、アニバーサリーやツアーのでは滅多にやらないような曲をやったりもする。当然ながら、そんな"特別感"は否応なしにエレカシファンを駆り立たせる。このライブだけは何としても観たい!でもそんな野望は無常、野音のキャパシティはせいぜい3000席程度である。需要と供給はとんでもないくらいに合っていない。そんなわけでエレカシの野音のライブというのは非常に倍率が高い(と言われている)。そのチケットの入手はたとえ、ファンクラブに入会していても困難を極める。本当に狭き門なのだ。

そんな極めてレアなライブに当選をしたのは2016年のこと。悲願の野音のライブに行くことができた(ちなみに2015年は外で聴き、2年連続で当たるかと思って期待していた2017年は見事に外れ、再び外で聴く羽目になってしまった…)。これはそのときの回想録である。

開演時間を迎え、メンバーが目の前に現れた。自分の客席は中段やや右寄りで、はっきりと彼らの姿を見ることができた。ステージの中央に一人の華奢で背の低いスーツ姿の青年がいた。その青年というのは紛れもなく50歳を迎えた宮本のことなのだが、遠目でみると20代の青年と勘違いしそうな程、活気に満ち溢れたオーラを放っていた。

張りつめたような静寂から、遂に宮本が歌い始める。1曲目は「ズレてる方がいい」。歌い出しを聴いた瞬間、今まで夢の中にいた存在の人が現実となって現れたようで、気持ちの整理がつかない状態となった。ライブの序盤は、初期の曲が中心。1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』から「浮き草」、2ndアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI II』から「土手」や「サラリ サラ サラリ」が披露された。今の宮本の声は、初期の頃と比べてはるかに透き通っていた。けれども、パッションの部分は初期の頃から何ら変わっていない。なんというか、底の小石まではっきりと見える川のせせらぎがすごく綺麗で、いざ手足を入れてみたら意外とその流れは速かったというように、美しさと力強さが共存しているのだ。そんな現在の宮本は初期の曲をCD音源のように態とらしくがなるのではなく、丁寧に優しく歌う。それによって、初期のエレカシのメロディの美しさを際立っているのだ。初期の楽曲たちは30年の時を経て間違いなく進化していた。

曲は間髪をいれずに、止めどなく押し寄せてきた。MCというMCはほとんどない。これも野音の醍醐味で、宮本が曲だけを全身全霊で届けようという気合が、他のライブよりも一層感じられる。無論、ファンだけではなくバンドにとっても野音は特別な場所なのであることは間違いない。ライブの中盤は、1990年代後半から2000年代初頭の曲が演奏された。個人的には、「流されてゆこう」、「Baby自転車」、「悲しみの果て」、「うれしけりゃとんでゆけよ」と立て続けに『ココロに花を』(1996)の収録曲が披露されたのが、かなり印象に残っている。当時30代の宮本が青春真っただ中な若さ溢れる感じで、この曲を歌うのはもちろん良いけれど、50を迎えた宮本が当時を懐かしむ感じで、丁寧に歌うのもまたすばらしいものがあった。

ライブの終盤になると、雨が降ってきた。会場内では雨粒と照明による反射光が生み出され、何とも幻想的な雰囲気が作り出されていた。そんな中で『STARTING OVER』(2008)収録の「FLYER」が披露された時である。楽曲が持つ力強い歌詞とサウンドがそのまま雨に溶け出して、体に流れて染み込んでいくような感じがした。雨のライブも全然悪くはないなと思わされたのであった。

宮本はライブのアンコールまでステージを縦横無尽に駆け回り、脳天に突き刺さるような歌声を響かせ続けていた。一体どこからそんなパワーが生まれてくるのだろうか。というよりもむしろ宮本は、動き続けて発散し続けないと死んでしまうマグロのような存在なのかもしれない。野音ライブ終演後、1人の若者は中年の50歳の男に屈し、圧倒されてしまったのであった。【ほぼ日刊三浦レコード27】

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セットリスト

第一部

1. ズレてる方がいい
2. 歴史
3. ゴッドファーザー
4. 浮き草
5. 道
6. おれのともだち
7. 土手
8. サラリ サラ サラリ
9. 風に吹かれて
10. いつものとおり
11. 月の夜
12. 珍奇男
13. 武蔵野
14. 流れる星のやうな人生
15. 昔の侍
16. 流されてゆこう
17. Baby自転車
18. 悲しみの果て
19. うれしけりゃとんでゆけよ
20. so many people
21. 四月の風

第二部

22. 友達がいるのさ
23. i am hungry
24. 今宵の月のように
25. 涙
26. コール アンド レスポンス
27. RAINBOW
28. FLYER

第三部

29. 星の降るような夜に
30. 夢を追う旅人
31. ガストロンジャー
32. ファイティングマン

アンコール

33. この世は最高!
34. 待つ男