hideのソロとして2枚目のアルバム『PSYENCE』に収録されている曲。1枚目の『HIDE YOUR FACE』の時はゴシックでダークなメイクで、こてこての90年代初頭のヴィジュアル系っぽさが残っていたが(ヴィジュアル系生みの親にそんなことをいうのは失礼極まりないが…)、今作に至ってはそんなメイクは鳴りを潜め、容姿からアルバムジャケットから曲調に至るまでポップな要素に全振りしている。
たった2年で彼に何があったのかは亡くなってしまった以上もう聞くことができないが、自分はこの頃ぐらいからのhideが非常に好きだ。音楽に興味を持ち始めた中学の頃、古本屋に行ってはhideが特集されている雑誌を買い漁った。余談だが、普通ヴィジュアル系のバンドというのはヴィジュアル系の専門誌に載るものだけれど、hideはロキノン系御用達の『ROCKIN' ON JAPAN』で特集されたことがある。しかも表紙はhideの「どアップ」というけばけばしさ。後にも先にもそんな『ROCKIN' ON JAPAN』は無いと思う。
話は曲に戻るけれども、前作から一転してポップな転換を果たしたアルバムで取り上げたいのが「MISERY」という曲。この曲は出来たバックグラウンドが感動的だ。というのも難病の少女とのかかわりの中で作り出された曲で、その少女が危篤状態に陥った際にもhideは仕事をすべてキャンセルして病院に駆け付けたという。そしてアルバム『PSYENCE』にはその少女の名前がクレジットに刻まれている。このエピソードは死後明かされるまで公にされなかったというから本当に粋なことをする男だなぁと思う。
「MISERY」はハード・ロックバンドに所属するギタリストの作った曲だけあって、歌ものであってもリフとギターソロがきっちりと存在感を示している。何といってもギターの音がいい。特にバッキング。ヘビーなんだけど軽快に刻まれていて、ほんとによく計算されているサウンドだなと思う。その特有のデジタルなサウンドを再現するためにマルチエフェクターなる複雑怪奇な機材を買ってしまったギター少年(自分)は多くいるはずだ。
この曲を聴き終わると何とも言えない安心感と幸福感に満ち溢れた感覚に襲われる。それはhideが少女とのかかわりで思ったことを曲にそのままさらけ出しているからなのかもしれない。「ヴィジュアル系だから…」と言って拒絶反応を起こしてしまう人にこそ聴いて欲しい。非常に心が温まる曲である。【ほぼ日刊三浦レコード2】