三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

和洋クラシックの融合——エレカシ全作レビューⅤ『エレファントカシマシ5』

まるで焼畑農耕で全てを焼き尽くした後に、新たな生命が再び芽吹いてきたような作品だ―。前作『生活』でみせた破滅的な情感の爆発。それから1年7か月というスパンを経て出来上がったのは、力の抜けたなんとも明快でわかりやすい作品だった。また、"メッセー…

島国ニッポン発のグランジ——エレカシ全作レビューⅣ『生活』

これほどまでに聴いていて辛いアルバムは、世界的に見ても中々ないのではないだろうか。再生ボタンを押した瞬間、歪み切ったギターの音とボーカルの叫ぶ声が、ひたすら強調された凄まじい音の塊になって襲い掛かってくる。リード・ギターの音はほとんとどい…

反俗的な日常を描く——エレカシ全作レビューⅢ『浮世の夢』

エレファントカシマシの初期の作品はパンクである——。一般的にはそのように形容されることが多いように思えるが、1989年リリースの彼らの3rdアルバム『浮世の夢』は、世間というものに対してメッセージをぶつけるような"パンク・アルバム"ではない。ひとまず…

"エレカシ流グルーヴ"の芽生え——エレカシ全作レビューⅡ『THE ELEPHANT KASHIMASHI Ⅱ』

2作目というのは、ある種アーティストにとって一つの関門である。1作目の成功が仇となりそのまま没落していくか、Nirvanaのように『Nevermind』で爆発的なグランジ・ムーブメントを巻き起こすか。あるいはOasisの『Morining Glory (What's The Story?)』のよ…

今もなお、色褪せぬ眼差し——エレカシ全作レビューⅠ『THE ELEPHANT KASHIMASHI』

時間がたっても古臭くならない――そんな作品があるとしたら真っ先にエレファントカシマシのファーストアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』を挙げるだろう。1988年、平成末期"バブル景気"真っただ中の日本で産み落とされた本作。ただ、好景気に浮足立ったよう…