三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

台湾の秘境...? 九份へ行く

 今年の2月の下旬、ふと、どこかに行こうと思った。そうだ、台湾がいい。なんの脈絡もなく、である。ただ、気づいた。そもそも、中国語もままならない人間が、一人でどうやって台湾を回れるというのか―。そんな風に辟易していたところ、なんと、台湾の友達が案内をしてくれるということになり、この旅路の運びとなった。

 定刻通りに桃園国際空港に到着し、友達に連絡をすると「"MRT"を利用した方がいいよ。MRTと書いてある表示を探して台北駅まで来て」という返信が返ってきた。このMRTというのは、台湾の快速特急のようなもので、台湾全域に開通している路線である。あれ? MRTって桃園国際空港にも開通していたっけ?―。

 

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 というのも、以前台湾に行ったとき(2015年)は、桃園空港から台北駅までバスに揺られて1時間くらいかけて行った記憶があったからだ。渋滞がすごいので、体感時間がかなり長かった。ただ、そんな話もすでに昔の話。2017年に"MRT桃園空港線(桃園機場捷運)"なるものが開通されていた。この路線は、台北から林口を通って桃園国際空港を経由し、環北までを結ぶ。各駅停車の普通列車と、台北から桃園空港第一・第二ターミナルを結ぶ快速列車(直達車)の2本で運行されている。所要時間は、約35分くらい。バスと比べてかなり快適だった。


 台北駅で待ち合わせをしていた友達に会う。最初に向かったのは西門という場所。台北でいうところの原宿といった感じの場所だった。そこからバスを乗り継いで、九份へと向かう。ここは赤い提灯と昔ながらの街並みを体感できる"秘境"として名高い。ただ、最近は観光客が増え、はたして秘境といえるのかというのはやや疑問ではある。

 

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 そんなことはさておいて、九份行きのバスの運転はかなり荒かった。初めはぎゅうぎゅうに乗客が入っていたバスも九份に近づくにつれ、だんだんと閑散としてくる。外は暗い。車内には数人だけが残っている。窓に打ち付けられた雨は細い線になり、山間になるにつれその線はつながって一つの太い流れになった。ここの地域は雨が多いらしい。そういえば、前回ここを訪れたときも、雨だったような気がする。

 九份に到着すると、観光客の多さに驚いた。とにかく日本人が多い。どこもかしこも日本人である。あとは、中国人。どうやら台湾の人はめったにこの"秘境"には訪れないらしい。筆者には、中国人と台湾人の区別がつかなかったので、この人は台湾人?とかなんとか、友達に質問してみると、「いーや、みんな中国語を話しているから、中国人。中国人しかいない(笑)」という返答が、苦笑いとともに返ってきた。中国語と台湾語、そもそもの言語が違うことに驚いた。というのも台湾語は、中国語の中の方言という位置づけではなく、どうやら台湾の人にとっては独立した言語という認識のようである。そして話によれば、台湾人の約70%がこの台湾語を話すらしい。ただ、中国語の方も学習するため、場所によって使い分けているそうだ。

 到着が少し遅かったので、店のシャッターは軒並み閉まっていた。けれども、赤提灯だけは煌々と光っていて、そのコントラストがなんとも不気味なコントラストを醸し出していた。誰もが、赤提灯を向けて写真を撮っている。例によって我々もそうした。結構いい写真が撮れるものだな、と感心していたが、そのあとに襲ってきた"虚無感"のようなものは何なのか。そう、ここはそれをすること以外何もないのだ。そう思っていると、「久々に来たけどここは、写真を撮るのと、外国人の観光客を見るための場所になっちゃった」と友達が言った。いやはや、確かにそうである。雨脚が一層強くなった気がした。 

 

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