三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

〈Coachella Fes. 2019〉の感想―〈SUMMER SONIC 2019〉出演のThe 1975とWeezerについて

 今年も〈Coachella Fes. 2019 (コーチェラ)〉がYouTubeで配信されました。筆者が注目していたのは、なんといっても初日のThe 1975と、二日目のWeezer。これだけは絶対に観ておきたかった。というのも彼らは今年、日本で開催される〈SUMMER SONIC 2019 (サマソニ)〉への出演が決定しているからです。

 しかも、サマソニの方は、両者が初日に固まっているという豪華っぷり。ただ、そんな2バンドを差し置いて、同日のヘッドライナーは、なんと日本のB'z。ヘッドライナー発表当初は、各方面からさんざん言われていたものの(その他のヘッドライナーはRHCPとChainsmokers)、結局ふたを開けてみれば、何ともすばらしいラインナップでまとまっているという始末。物事の良し悪しというのは、最後まで見てみないとわからないものです。

 

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とはいえこうしてみると、日本人のアーティストがやや多すぎる感じも否めませんが…。


 話をコーチェラに戻すと、初日のThe 1975のステージは、ロックが下火になっている現状の中でなんとか模索を続けようとしているバンドように思えました。ロック・バンドというのは、従来的には(ここ10数年の話ですが)、楽器を集約して、一つの表現をするというものが、ある意味でメイン・ストリームでした。これによって、長年ロックが音楽シーンを引っ張る存在になっていたともいえますが、他方では、視覚的な効果との融合や、身体的な表現(ダンス)というのはある程度限られてきた、ともいえます。現在のヒップホップに後れを取っている現状は、そうした制限(楽器やバンドという形態)からの逸脱に対して、きわめて保守的であったことが背景の一つにあるといえるでしょう。

 ただ、今回のThe 1975のステージでは"バンド"という形態であっても、そうした制限的な要素を覆していくかのような演出になっていました。たとえば、「Sincerity is Scary」では、Jamiroquaiの「Virtual Insanity」のMVを彷彿とさせる移動式の床に乗って、ボーカルの身体化を強調的に表現しているのが印象的でした(今年2月に行われた〈ブリット・アワード 2019〉でも同じような演出がされていました)。また、「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」や「Its Not Living」では、ダンサーを据えたことで、"バンド"という従来的な形態から、なんというか積極的に逸脱を試みているようにもみえたのです。

 

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 それとは対照的だったのは二日目のWeezerでした。セットリストは、『Weezer (Blue Album)』や『Weezer (Blue Album)』、『Pinkerton』という1990年代の楽曲を中心にしたもので、『Weezer (White Album)』以降の楽曲は、最新作「Can't Knock The Hustle」のみという構成でした。単独公演でもない、ましてやリアルタイムではない世代が多く集う場所で、こうしたセットリストをあえてやる。ただ、彼らの場合それは、大御所と呼ばれるようになったバンドが、かつてヒットした曲を懐古的にやるのとは少し違うような気がしたのです。

 Weezerは、2016年に『Weezer (White Album)』で、ロックというものを定義しなおし、大きな転換を果たしました。そして、そこでの一定の評価を得たことでその流れは翌年の、『Pacific Daydream』、そして最新作『Weezer (Black Album)』へと繋がっています。今の10代、あるいは20代前半でWeezerをリアルタイムで認知したのは、多くはこの時期にリリースされた作品であるはずです。しかしながら、今回のコーチェラで(近年のほかのフェスでも)Weezerは、最近の曲を演奏するどころか、初期の曲ばかりを演奏しました。

 ただ一方でそれは、その世代にとっては彼らの1990年代、あるいは2000年代初期の楽曲は、新鮮に映るともいえるのではないでしょうか。Weezerが、かつてのヒットソング中心のセットリストであっても、けして懐古主義に陥っていないのは、ここにあるのです。つまり、2016年以降の彼らの音楽的な路線変更が可能にさせた、逆行すること、あるいは"90年代的なロック"を新鮮に見せるという手法。今回のコーチェラのWeezerではそれが感じられるステージになっていたように思えます。

 

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今年リリースされた『Weezer (Teal Album)』から、DLCTears For Fearsのご本人登場シーンも。