数あるギターの中でも、レスポール・ギターが好きだ。丸みを帯びたシェイプに、シンプルな装飾。サウンドの方も柔らかくて、温かみがある。現在、筆者が所有しているギターは、グレコのEG56 ゴールド・トップ(79年製)。先輩から譲り受けてからというもの、大切に使っている。表面に施された金色の塗装の主張は決して激しくなく、気品すら漂ってくる。製作されてから今年で40年になるが、いまだに現役。それもギターの素晴らしいところである。
基本的にシンプルで聴きやすい音が好きなので、エフェクターはここぞ、という場面でしか使用しない。以前は、マルチ・エフェクターなるものを買って、ああだこうだと試行錯誤をしていたが、結局マーシャル・アンプから直接つないだ音の方がより分かりやすくいい音、という感じがしたので、今ではずっとそうしている(プロでもないのにいっちょ前に…)。ジャーンと弾き鳴らしたときの、独特の重厚感のある音、これはレスポール・ギターの特権といってもいいだろう。
レスポール・ギターを最初にかっこいい、と思ったきっかけは奥田民生。もはや彼の代名詞といってもいいレスポール・ギター。その気怠い歌い方と、ゆったりとした曲調に、温かくて、"ハードロック"なギター・サウンドが存在感を示しながら混ざり合う。そしてギターを弾くポジションも、そのたたずまいを象徴するかのように低い。奥田民生のレスポール・ギターのサウンドが炸裂しているアルバムを挙げるとすればキリがないが、その中でも『Fantastic OT9』はいい。この作品は全編を通じて、ギターの音をしっかりと感じることができる。そしてその音は、どこまでもシンプル。そう感じるのは、エフェクターのやアンプの歪みを薄くならない程度までに抑えて、ギターの持つ力を最大限に引き出せているからであろう。かっこいい、という言葉が思わずポロッとこぼれるような出来になっている。
海外のレスポール・ギターを使用しているアーティストで思い浮かべるのは、Green Dayのギター・ボーカルのビリー・ジョー・アームストロング。ただ、Green Dayが『Dookie』(1994)のイメージで止まっているとすれば、そのギターは、ビリー・ジョーがインディーズの頃から使用しているストラト・キャスター・ギター通称"ブルー"を思い浮かべてしまうかもしれない。水色のカラーのボディー一面にステッカーが貼られている、"ザ・パンク"という感じのギターである。
もちろん、その頃の音(1991-1994)も荒々しくてノイジーで、高音域がガンガンに主張してくるサウンドもいいのだけれど、2004年の『American Idiot』以降の、ヘヴィーなサウンドの方が個人的には好きだ。最近だと、『Revolution Radio』の音もよかった。軽すぎず、重すぎず。ちょうどいいバランスでレスポール・ギターの音が生かしきれているように感じた。
自分の好きな曲というのは、このレスポール・ギターが"キー"になっているような曲が多いのかもしれないなと、改めて思った。いやはや、「レスポールはギターの頂点だ」とかなんとか言ってしまうと、「じゃあ、他のギター・タイプはどうなんだ!!」といわれるかもしれないけれど、やはり自分の中ではある種の、ヒーローみたいな存在なのである。自分には自分のギターの"正義"がある。それが反発しあったときは、しょうがない。『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』で、アイアンマンとキャプテンアメリカがやり合ったときのように、"ギター・ウォー"なるものを展開しなければいけない…。