ここ数年、世界的にR&Bやラップが勃興し、ロックは明らかに下火になってきている。けれども、けれどもバンドサウンドでジャーンとかき鳴らされる衝動というのはやっぱり最高だ。これは社会がどうなろうが、流行がどうなろうが、決してゆらぐことはない――。
なぜそんなに熱いのか?さかのぼれば、中学校1年。父親から聴かせてもらったQueenに衝撃を受けてからというもの、筆者は“ロック”という混沌の中に入り込んでしまった。そして、X JAPANのギタリストHIDEのプレイスタイルにあこがれて、先のとんがったイカつい形をしたギターまで買ったのだった—―。
それからかなりの月日がたって、大学1年の頃、音楽を聴くだけでは飽き足らなくなった筆者は、軽音サークルなるものに入ってバンドを始めた。軽音サークルの中にもいろいろな種類がある。少人数で特定のジャンルをコピーするものもあれば、大人数で、色々なジャンルの音楽をざっくばらんにコピーするものまで。ちなみに、筆者が入ったのは、後者の方。しかも、人数がびっくりするぐらいに多かった。そんなもんだから、イベントをやるとなると毎回、ちょっとした“フェス”ぐらいのラインナップと、ボリュームになる。ジャンルのふり幅もすごくて、最高にハードコアなバンドをやったかと思えば、その次には、今を時めく中高生向けのさわやかなバンドをやったりすることもある。
当然、音楽の趣味が全然合わない人間が1つの場所に集まることになってしまうのだが、そんなカオスな空間の中で奏でられる音楽というのは、好きなもの同士で集まって聴くときより、ある意味でひとしおに良い時もある。何とかして、このバンドを知らない人に届けようという思い、あるいは、こんなジャンルには負けない音楽を俺たちはやっているんだ、という反骨心のある思いをバチバチに感じられたのは、中々おもしろかった。
そんなサークルの中で、4年間も居座って、好きな音楽を好きなだけやらせてもらえた。いかにも感謝を述べ始めようとしているが、そうである。この辺りからは、非常に内輪向けたの話になってきてしまうが、どうかご承知おきいただければと思う。最後にやったのは、自分が一番好きなバンド。バンドで合わせたとき、メンバー全員が一体になった瞬間の気持ちよさ。練りに練ったセットリストが、いい手応えで観客に届いたときの達成感。そして、本番の緊張感から解き放たれた瞬間の脱力感――。「ああ、自分が追っかけているアーティストも、こんな体験をしているのかな」なんていう追体験が、最後の最後にちょっとだけ出来た気がした。
人数が多くて、聴いている音楽も人それぞれな軽音サークル。けれども、誰からも伝わってきたのは、みんな音楽が大好きだということ。全然聴いたことのないバンドでも、演者の熱意に押されて聴いてみたくなる感覚—―。そもそも音楽が嫌いだったら、演奏なんてしようとも思わないだろうし。しかもよくよく考えてみれば、どんなジャンルであれ、みんな“バンド”をやっているではないか、っていう。いやはや、まだまだバンドは捨てたもんじゃないな。やっぱりバンドっていいな。そんなことを最後に思ってしまったのでした。
いままで関わってくださった、全方位の方々に感謝いたします。ありがとうございました!