三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

【ほぼ日刊三浦シアター3】『デッドプール (Deadpool)』と、"第4の壁の破壊"について

 当初、この記事では映画『デッドプール』の本編の内容についてどうのこうの書いていく予定だったが、そんな予定を変更して、"第4の壁の破壊"にピックアップして書いていこうと思う。そのためこの記事は『デッドプール』を観たことがあるか、その内容を知っている方々にターゲットを絞った形となる。また、そんな"第4の壁の破壊"についての話はいきなり大きく脱線する。どうか悪しからず。"本編の内容"についての記事は後日また書いていこうと思う。今年の6月に2が公開されるようなので、それに便乗して公開間近、盛り上がってきた頃にまた―。

 『デッドプール』では原作同様、映画においても"第4の壁の破壊"がなされる。"第4の壁"というのは、演劇の世界と観客に隔たった壁のことで、演劇の世界でいくらとんでもないくらいド派手な戦争が起こっていても演者側は観客に干渉しないし、観客側もそれには干渉されないという、至極当然と言えば当然の話である。例えば、映画『リング』(1998)では"呪いのビデオ"を観てしまった人を、一週間後に貞子がテレビからぬっと出てきて呪い殺してしまう。この場合は、向こうで第4の壁の破壊が起こって、それを鑑賞するから4足す4で"第8の壁の破壊"になるのか。もしも映画の鑑賞者のスクリーンからも貞子が出てきたら、さらに4を足して"第12の壁の破壊"になってしまうのか…。『デッドプール』では"第16の壁の破壊"なんてことを言っていたような…。いやはやよくわからなくなってきた。にしてもこれはホラー映画の話だから、『デッドプール』の話題とはかけ離れてしまう、幾分例が悪かった。

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 気を取り直して、同じコミックの括りで日本でそれが行われるキャラクターを考えたとき真っ先に思い浮かんだのは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。「復活を希望するキャラクター大大発表会!!の巻」(155巻)での両津の"30年間1週も休まず出てるのはわし1人だけじゃないすか!!"というセリフ。また、両津が不在で他のキャラクターが主人公になって回すという「スピンオフの巻」(164巻)では、"読者の支持率"なるものが表示され、そのバロメーターの上下にキャラクターたちが翻弄されていくシーンが描かれる。これらのシーンは、自分がコミックに掲載されていることをキャラクター自身が自覚していたり、読者の支持層をキャラクターが認識してアクションを起こしたりするなど、"第4の壁の破壊"が何ともコミカルに行われている。

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画像は『スピンオフの巻』で躍起になって主人公になろうとするキャラクターたちの一幕。それにしても2018年となった今はもう『週刊少年ジャンプ』では『こち亀』の連載が終了しているんだよなぁ…。

 話は戻って『デッドプール』の"第4の壁の破壊"で個人的に好きなのは、"恵まれし子らの学園"に赴く際、チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)の演者をデッドプールが必死に考えるシーン。

"マカヴォイだっけ、スチュワートだっけ?タイムラインが混乱してるぜ"

エグゼビアを演じたのは、ジェームズ・マカヴォイ(若年期)とパトリック・スチュワート(壮年期)。しかしながらX-Menシリーズは旧シリーズと新シリーズで時系列が複雑になっているため視聴者は混乱しがちな節がある。そんな訳で、この発言はそれを揶揄するかの如く、放ったと言えるのだ。

 また、学園を去る際のシーンでデッドプール

"製作費が少ないから、X-Menのメンバーを2人しか呼べなかったのかな?"

と言い放つ。本来ならば学園にはたくさんのミュータントがいるはずだが、学園はおろか、本作に登場するX-Menはネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドとコロッサスのみ。製作費を調べてみると、『デッドプール』が5800万ドル、同年に公開の『X-MEN: アポカリプス』が1億7800万ドルであることを踏まえると、本当に少ないことが分かる。そんな製作費事情を、包み隠すことなく映画内で自虐しているのがなんとも滑稽で面白い。

 "第4の壁の破壊"は作品と、その作品を観たり読んだりする者との距離を一気に縮める効果をもたらす。ホラー映画だったらより恐ろしく、ギャグマンガだったらより面白く、また『デッドプール』においても、ヒーローという一見遠い偶像のようなものとの距離が一気に縮まり、キャラクターに親近感のようなものが沸く。さらに、タブーのような要素(本作で言えば"製作費や他の映画の演者の話題")を出すという"第4の壁の破壊"を行うことで、滑稽なユーモラスが生まれ、作品にテンポの良さとコミカルさを演出させる。『デッドプール2』が待ち遠しいな、と思った頃合いでこの記事を書き終えることに…ああ、そうだそうだ―。

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 アメコミマニアのラッパーPUNPEE氏の「Scenario (Film)」という楽曲にも〈僕は第四の壁越しにいもしない客に愚痴こぼしてさ Crazy!!!〉の部分で「第4の壁」というワードが登場したり、「Hero」ではデッドプールの別名"饒舌な傭兵"が〈板橋の傭兵からの饒舌 炸裂〉というリリックで文字られているということを最後に伏せておきたい。これらが収録されているアルバム『MODERN TIMES』(2017)では『デッドプール』感みたいなものが随所に垣間見える。余談余談…。

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