三浦日記

音楽ライターの三浦智文が、日記のようにつらつらと書いていくブログ

ブルーノ・マーズ来日公演2日目 ライブレポート—世界を席巻する圧巻のステージ

 来日公演2日目の4月12日、会場のさいたまスーパーアリーナは超満員。VIPシートの人達は特典の"ローブ"を着た人、辺りを見渡せば"Bruno Mars"、"24K Magic"、"XXⅣ"のロゴやBrunoの顔がプリントされたTシャツやキャップ、彼のような恰好をしている人で溢れかえっている。開演時間が過ぎ、会場が暗転する。ステージを囲む幕はいまだ下がったままだ。しばらくすると、オープニングの曲が始まる。スクリーンには歌に合わせて、歌詞が映し出される。

"CMON LET ME HEAR YOU SCREAM"

"ARE YOU READY?"

Bruno Marsは登場してすらいないのに、それだけで会場のボルテージは一気にMAXになる。オープニングの曲が終わる間もなく、「Finesse」のイントロが流れ、幕は徐々に上がっていき、Brunoと他のメンバーたちは威風堂々と登場する。Brunoは"Mars 24K"と背中に書かれたユニフォームを、他のメンバーたちは往年のMBLプレイヤーのユニフォームを纏っている。その風貌は曲の雰囲気と相まってか、90年代のアメリカにタイムスリップしたかのようだった。

 彼が歌い出すと、会場はリミッターが振り切れたように盛り上がる。Michael Jacksonの「Remember the Time」だとかBobby Brownの「Every Little Step」のようなR&Bを彷彿とさせる「Finesse」は、大和魂渦巻く日本さいたまスーパーアリーナの地を、一気にアメリカの90年代ような華やかな雰囲気にさせる。間奏、ひとたびBrunoが動けば、観客は狂ったように叫び、盛り上がる。その様は彼の年齢と同じ頃の"King of Pop"、Michael Jacksonと重なった。

 同じくアルバム『24K Magic』から立て続けに、"イケイケ"のParty Tuneの趣の濃い「24K Magic」が演奏される。原曲ではシンセサイザーや打ち込みの音が際立って聴こえていたが、ライブで聴くとドラムの生音の方が際立って聴こえ、原曲よりも数段クールになっていた。この曲のリリース当初は前の2作に比べて大分路線が変わったな、なんて思ったけれど、今回のライブで生音に加え、よりGroovyになったアレンジを聴くと、いつものBrunoというか、路線がどうのこうの何ていう話はただの杞憂に過ぎなかった。

 続いて披露されたのは「Treasure」。原曲よりも壮大なホーンセクションのSwingyなイントロアレンジに、Brunoの"リズム"を自らが作り出すかのような歌いっぷりは、聴いているだけで自然と体が動いてしまう。そして自然に沸き起こる大合唱。高揚感と幸福感が一緒に押し寄せてくるような、そんな感覚になった。

 体全体がいい感じでノッてきたところに拍車をかける様にして演奏されたのは、「Perm」。この曲はJames Brownみたいな合いの手が随所に入れられる70年代のファンクみたいで更にオールディーな世界へと観るものをいざなう。いい感じでおちゃらけたような曲調は、Brunoを近所のノリの良い兄ちゃんのような印象に変貌させる。しかしながら、演奏や歌はふざけているように見えて"超一級品"。コーラスとBrunoの息の合った掛け合い、ベースとドラムのGroovyなノリ。計算されつくした遊びとでも言えようか。聴いていて最高に気持ちがいい、ここでも自然に体が動き出す。彼はやはり"近所の兄ちゃん"なんかではなく、その仮面を被った"スーパースター"だった。Brunoは観客に"I wanna see everybody jump"と言って観客にジャンプを促す。もれなく会場はお祭りのような空間へと変貌した。

 かと思うと今度は、Brunoの何とも渋いギターソロのアレンジで始まる「Calling All My Lovelies」で会場を一気にクールダウンさせる。原曲よりも遥かにアダルトな雰囲気で、一昔前の寂れたバーに行ったような感覚に陥った。ネオンサインが付いたり消えたりしていて、中には粋なバーテンダーがちょこんと鎮座している、そんな雰囲気の店で掛かる感じの曲である。Brunoのとんでもなく高いファルセットは美しさをも超えて"神々しさ"さえ感じた。そして、間奏にこれでもかというくらい渋いギターソロが挟まれる。ダンスもできて、歌も上手い、そしてギターも一級品。いったい彼はどこに非の打ちどころがあるのだろうか―。曲の終盤、Brunoは金色の電話を手に「君に会いたいよとても、とても、とても」と日本語で歌う。これに観客は狂乱の騒ぎとなり、しっとりしたはずの曲にも関わらず、会場はとんでもなく盛り上がった。

 「Chunky」、「That's What I Like」とバーで流れるようなアダルトなテイストの曲が続く。Brunoは原曲とは異なったアレンジで、高音のフェイクを随所に入れ、その度に観客は沸いた、というか自然と沸いてしまったといった方が適切だろうか。これもスーパースターの妙である。「That's What I Like」の終盤にもBrunoは「愛してます、愛してます」と日本語で歌う。途中、コーラスの1人が滑って転んでしまうというハプニングが発生した。すると、Brunoはとっさに彼と同じ格好になって寝そべりながら歌う。それを見て会場は一瞬にして歓声と笑いに包まれた。ハプニングを1つの"演出"にしてしまうのは流石であった。

 何ともJazzyなサックスソロに続けて披露されたのは「Versace on the Floor」。会場は本当に2018年かと思わせるほどに、どことなく懐かしい雰囲気が漂う。会場は得も言われぬ多幸感で満たされ、全体を包み込んだ。

 Brunoのギターのイントロで始まる「Marry You」。このパワー・ポップ調のアレンジはThe Outfield の「Your Love」のような力強いものになっていた。原曲のバージョンよりもテンポが速くて、それも曲に更なる勢いと力強さを加えていた。ドラムのクラッピングと同じフレーズのアレンジに、Brunoの崩したようで一切リズムがずれていない歌い方。これでノるなという方が難しいぐらいに最高だった。

 ここでライブの定番曲「Runaway Baby」が披露される。間奏ではThe Isley Brothersの「Shout」の後半部分が挟まれ、静かになるところではBrunoのサイレントのダンスが披露される。かと思えば今度は、James Brownばりのファンキーなステップが披露され、やはりここにもオールディーなテイストが随所にちりばめられる。

 ライブの終盤にいったん落ち着かせるかの如く披露されたのは珠玉のバラード「When I Was Your Man」。所々美しいファルセットで聴かせるようにして情緒たっぷりに歌う。うっとりととろける様な優しい歌声は会場全体を包み込んでいった。そして、一節歌い、次に移るまでの一瞬の"余韻"。特にこの"余韻"がすばらしかった。まさに絶品である。それには"自然と"歓声が生まれていた。

 続いて、彼を知らしめるきっかけとなった曲である「Locked Out of Heaven」が披露される。曲はリリースから5年以上が経ち、当初よりも歌いなれている感があった。なんというかそれは、32歳にしてどっしりと貫禄さえ感じられる歌いっぷりだった。曲の終盤には金色の紙吹雪が舞い、ライブのクライマックス感を演出させる。しかしながら、そんな金ぴかの演出がかすんでしまうほどBrunoのダンスや歌声は惹きつけられるものがあった。

 最後に披露されたのは「Just the Way You Are」。言わずもがな名曲中の名曲。曲の終盤は「Just the Just the Just the…」と曲の一部を繰り返しシャウトする即興のアレンジが加えられていた。そして最後には、「愛してますTOKYO!」と言って、"選手"紹介ならぬ、"メンバー"紹介が始まる。一たびBrunoが話せば、それがたとえメンバーの紹介であっても曲になってしまう。その姿を観ると彼は音楽をするために生まれてきた人であるように思えた。

 「One more?」と言って始まった、アンコールは「Uptown Funk」。待ってましたと言わんばかりに会場は盛り上がる。最後の最後まで惜しげもなく盛り上がる。アウトロに差し掛かったあたりで幕は徐々に下がっていく。まだ終わってほしくない!しかしながら、曲の終了と同時に幕は清々しいくらいにスパッと閉じられた―。

 何とも濃い1時間半だった。全ての曲、全てのシーンが印象に残っている。彼は世界随一のエンターテイナーだ。そして何よりも本当に楽しそうにライブをしていた。でも、その裏にはきっとたゆまない努力の結晶があるはずだ。そんな風に考えると、もしかすると彼は"Bruno Mars"というキラキラしたスーパースターを演じているようにも思えてくる。彼はその"パーリーピーポー風"な風貌とは裏腹に、かなりストイックな練習をしているはずだ。しかしながら、ライブでは努力しているような姿は微塵も見せずに、余裕すら垣間見せる。なんてかっこいい男なのだろうか。彼が今後、さらに世界を席巻していくことは間違いないだろう。Brunoはとあるインタビューで、"第2のMichael Jackson"と呼ばれていることについて聞かれ、「嬉しいけれど、"King of Pop"はMichaelただ1人だ」と言っていた。だが、このライブを観て、今の彼は間違いなくそんな"King of Pop"に近づきつつある存在のように思えた。【ほぼ日刊三浦レコード42】

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セットリスト
01. Finesse
02. 24K Magic
03. Treasure
04. Perm
05. Calling All My Lovelies
06. Chunky
07. That's What I Like
08. Versace on the Floor
09. Marry You
10. Runaway Baby
11. When I Was Your Man
12. Locked Out of Heaven
13. Just the Way You Are
アンコール
14. Uptown Funk

 下記事はライブに行った直後、衝動的に書いた記事です。お時間と気力、体力があるようでしたらこちらも合わせて是非ともご覧ください。
xxxtomo1128xxx.hatenablog.com