三浦日記

音楽ライターの日記のようなもの

RAINBOW / エレファントカシマシ

ボーカルの宮本浩次が2012年に急性難聴を患ってから(現在は完治)のエレファントカシマシは、大きな変化を遂げたと言っていい。というのも宮本は病気以降、その歌声が大きく変化した。病気以前、特に病気の直前はCD音源でも声が不調だなとか、ライブの終盤では声が全然出ていないなんていうことが度々あった。それが病気以後は、ガラガラしていた声は透き通り、シャウトもきれいに伸びている。そのせいか、昔の曲を歌うときも本当はこんな風に歌いたかったんだなと思わせられる場面もある。それは何というか、これまで殻に閉じこもっていた本来の力が解放された感じである。ヘビースモーカーで不摂生だった宮本は病気以降、その生活習慣を改め、禁煙はもちろん、規則正しい生活を送るようになったというが、やっぱりそれが歌声の変化に繋がっているようだ。

 

40代の後半になって声が良く出るようになるというのはAerosmithのボーカルのSteven Tylerを彷彿とさせる。彼も20代の時よりも40代に差し掛かってからの方が声が出ているという極めて希有な人物である。当の宮本も最近のライブでしばしばSteven Tyler特有の金切り声のようなシャウトをし始めるようになったもんだから、いよいよ本当に彼と重なって見えるようになってしまった。

 

そんな病気から復帰し大きな変化を遂げた後のアルバムがこの『RAINBOW』(2015)である。その中でも特に異質な曲が、アルバムのタイトルと同じ「RAINBOW」である。まくし立てる様に歌い上げられる歌詞、攻めまくるドラム、さらにはコード進行なんかはまるで最近出てきたバンドのような印象を受けた。コーラスワークも非常に良くて、特に最後のサビに入る前後ののボーカルの主旋律と、コーラスのシャウトが重なり合うところなんかは本当に美しい。50を目前にしてまだまだこんな若々しい歌を作れるのかと思った。でも歌詞の内容まで見ていくと、50を控えたなりの「諦め」とか「焦燥感」みたいなものが受け取れる。そこには勢いだけで突っ走るような年齢の若いバンドには出せない「重み」みたいなのがある。

暮れゆく秋の空 少年老い易く
太陽目指して駆け抜けたヒーロー
町中が光が
俺を追い抜いていく 追い越してゆく

老いてゆくことに「逆行する」のではなく、老いてゆくことを「受け入れた上で勝負してゆく」という気概がこの曲からは感じ取れる。それが結果として曲や、バンド自体に年齢を超えた「若々しさ」を宿らせている。

 

ただ、いくら宮本が若々しいといったって年齢は年齢だ。本当に健康には気を付けてほしい。彼が尊敬してやまない忌野清志郎も58でこの世を去った。やっぱりロッカーの命というのはそんなに短く儚いものなのか。最近では宮本が健康に留意して、1日でも長くその歌声を聴かせてくれることを切に願うばかりである。【ほぼ日刊三浦レコード4】

 

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