三浦日記

音楽ライターの日記のやうなもの

自身の信条と、それに背反する精神との戦い―『ハクソー・リッジ (Hacksaw Ridge)』(2016) レビュー

第二次世界大戦は、多くの犠牲者と憎しみを生み出した惨状であった。同時に、世界中で多くの作品も生み出すことにもなった。『ハクソー・リッジ』もまた、その数ある産物の内の一つである。作品の舞台は太平洋戦争末期、1945年5月の沖縄の前田台地。ハクソー…

人間のエゴについてーオーストラリアのカンガルーから

オーストラリアでは、カンガルーが増えているらしい。そうこうしている間にもどんどんと......。その数は約5000万頭だとか。オーストラリアの人口が約2500万人なので、人口密度よりも、"カンガルー密度"の方が高いという計算になる。なぜ、こうも増えてしま…

君にとり唐をあげたい

揚げ物って、すごく面倒なのよね〜。何よりも、油がはねるのが怖くて怖くて。もう何度やけどしたことか。夏だったらなおさら嫌ね。キッチンはただでさえ暑いのに、揚げ物をするとそれだけで体感温度が一気に上がった感じがするんだもの。あと、準備も面倒ね…

ショウガ焼きを極めたい

生姜焼き——何の疑問もなしに使っているこの言葉、語義通りに受け止めてしまえば、生姜を焼いたもの。ある意味これは、レトリックである。とことん無駄が省かれたその名前に薬味である身分の生姜は謙遜をする。「ははぁ、恐縮極まりない。私は、主役ではない…

イメージについてーCMとピラミッドとお茶石鹸

世の中の、ありとあらゆるものにはイメージが付きまとう。 たとえばCM。ビールのCMに出ている俳優が、グイっとビールを飲みつつ、「これ、美味いねぇ。やっぱり◯◯(商品名)でしょ!」と言うものがあったとする。ビアガーデンか何かの屋外で、同僚がいて、乾杯…

青年の老年期—エレカシ全作レビューXVII『町を見下ろす丘』

"四〇歳は青年の老年期であり、五〇歳は老年の青年期である" 詩人であり『レ・ミゼラブル』などの著書で知られる、ヴィクトル・ユーゴーはこんな言葉を遺している。40代と50代を大きな境目に前者を青年の終わり、つまり老年期に。そして後者を老年の始まり、…

その歌声、狂暴につき—宮本浩次『宮本、独歩。』レビュー

宮本浩次のデビューアルバム、その名も『宮本、独歩。』。タイトルに固有名詞が使われるのは、バンドのデビュー当時の作品を彷彿させる(『THE ELEPHANT KASHIMASHI 』、『エレファントカシマシ5』など)。無論、今回はバンド名ではなく自分の名前。ここで、あ…

52分の白日夢—エレカシ全作レビューXVI『風』

はくじつむ【白日夢】[daydream]白昼夢ともいう。夢に似た意識状態が覚醒時に現れるもの。内容は概して願望充足的である。また,単なる空想より現実性を帯びている。 『ブリタニカ百科事典』より エレファントカシマシ、16作目となる『風』。2004年リリー…

宮本浩次、「Do you remember?」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。2週目も引き続き、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていま…

宮本浩次、Instagramについて語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。2週目も引き続き、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていま…

ガーリックバターソースの魔力

ガーリックバターソースには、人類の夢が詰まっている。やや大袈裟になってしまったが、ガーリックとバターの組み合わせ、その文字列だけで強烈に味が想起される——。それと比べて、オーロラソースの体たらくはどうだ。ケチャップにマヨネーズ。本場の作り方…

米米騒動、クマの鼓動

あの子ったら一体、どこへ行ってしまったのかしら。おーい、おーい——。 はぐれ子グマを探す親グマの叫び声は、針葉樹が鬱蒼と生茂る森の中でこだましていた。その頃、束の間の家族旅行から帰る途中の車内には、米米CLUBが大音量で流れていた。聴いていたアル…

白昼一時のHEART STATION

今週の第1位は、宇多田ヒカル「HEART STATION」——。 曲紹介に被さりながら、イントロがカーステレオから流れてきた。携帯の着信音のようにシンプルな電子音に乗せられる、彼女の洗練された歌声は、不思議と近未来を予感させる。まもなく、午後の2時になろう…

ちゃんこ屋の大将直伝の豚キムチ

豚肉とキムチの組み合わせは最高だ。バラ肉なら、なお良し。韓国料理にサムギョプサルというものがあるが、これは、厚切りの豚バラ肉とキムチを専用の鉄板で焼いたのを適当な大きさに切り、サンチュや辛味噌、長ネギなどと一緒に巻いて食べる。バラ肉の油分…

宮本浩次、『ガイアの夜明け』の主題歌について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、「冬の花」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、東京スカパラダイスオーケストラとの制作エピソードを語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

宮本浩次、「獣ゆく細道」について語る

『アーティスト・プロデュース・スーパー・エディション』 、2月の担当は宮本浩次プロデュース。エレファントカシマシのフロントマンであり、昨年ソロデビューを果たした宮本。1週目は、3月4日リリース予定の新作『宮本、独歩。』について語っていました。そ…

うまい納豆パスタを作りたい

納豆パスタ、それは日本で独自に進化を遂げた麺料理の一つである。これまで筆者は、その美味しさの頂に到達すべく、幾度となく試行錯誤を繰り返してきた。あるときはカルボナーラ風に、またあるときはミートソースに加えてみたり。どれも、それなりに形には…

ボルダリングにハマった日

ある日の早朝、突然友人から電話がかかってきた。 「ボルダリングをしに行こう——」 う、うーん…? ボルダリング…? 眠い目をこすりながら、ボルダリングについての勝手なイメージを脳内に浮かべてみる——。命綱を腰につけて、思いっきり反った壁を、色とりどり…

"死"に対する自覚の果てに見出した"生"―エレカシ全作レビューXV『扉』

派手さはないが、傑作——。 『俺の道』(2003)から『風』(2004)までのエレファントカシマシはある種、商業主義から完全に逸脱している。この時期はやはり、セルフ・プロデュースであるという点が大きいように思えるが、世間に向けて、分かりやすくパッケージン…

三浦的2019年ベスト・トラック25選―邦楽編

01. ONE OK ROCK - Head High 彼らは2019年に出したアルバムで、日本のロックシーンという括りから完全に抜け出した。そのためこれを、果たして邦楽として評価していいのかという疑問さえ浮かんでくる。その作品の中でもこの楽曲は特に、彼らの方向性を印象…

三浦的2019年ベスト・トラック25選―洋楽編

01. Billie Eilish - bad guy 2019年、1番聴いたと思う。新たなポップスターの誕生を決定づける曲。ミニマルなサウンドに際立った低音や、リリックからは1990年代のインダストリアルの香りが漂ってくる。ウィスパー・ボイスとのアンバランスさによって、何と…

「地元の朝」の帰省、その到着までの描写について―エレ歌詞論考Ⅲ

エレファントカシマシの歌詞に、フォーカスを当てていく企画。今回は、2004年リリースの『扉』に収録されている「地元の朝」について。以下に載せたのは、その冒頭部分の歌詞である。まずは、こちらを読んでみていただきたい。 ある日 目覚めて電車を乗りつ…

現代版、百鬼夜行―椎名林檎『三毒史』レビュー

デビュー20年の節目となる年にリリースされた『三毒史』は、椎名林檎のこれまでのキャリアの総括、という意味合いだけではなく、もはや日本の音楽史の一つの総括である。収録されている13曲中6曲は、ゲストボーカルを据えたもの。中でも、1990年代から第一線…

三浦的2019年ベスト・アルバム5選―邦楽編

1. ONE OK ROCK - Eyes of the Storm ONE OK ROCKは今作で、"日本の"ロック・バンド、という括りを無くすことに成功した。確かに彼らは、日本で生まれ、日本語を母語としている。だがその表現は、サウンドや、歌い方、さらにはリリックの入れ方に至るまで、…

三浦的2019年ベスト・アルバム5選―洋楽編

1. Billie Eilish - WHERE DO WE GO WHEN WE WERE SLEEP? 本作はベース、ドラム・ビート、そしてボーカルという音数の少ないシンプルな構成の中にも、「bad guy」が象徴しているように、低音が強調された楽曲が並ぶ。リリックもダークで破滅的。そんな、1990…

その歌声が最大限に生かされた作品―柴田聡子『愛の休日』レビュー

柴田聡子の歌声にはつかみどころがない。メロディーによって敷かれた"音程の道"を、正確に歩むのではなく、道草を食いながら、あっちこっち往来をする——。通算4枚目となった『愛の休日』(2017)では、そんな彼女の歌声の特徴が、見事"旨味"となって引き出され…

秋田県民は安住紳一郎アナウンサーを知らない

「秋田県民は安住紳一郎アナウンサーを知らない」少々主語が大きくなってしまったが、どこかの局でやっているしょうもない県民バラエティー番組でも、"○○県民は、○○を食べる!"みたいなことを声高に、全国の地上波に乗せて言っているので、さほど問題はないと…

美味しさとは何ぞやという話

ラーメンたべたい。この欲求は、人間であれば定期的に沸き起こってくるものであり、無理に抑え込む必要もない普遍的なものである。世の中のラーメン屋は、人間のこうした欲求の連続で成り立っていると行っても過言ではない。れいによってその日も、頭の中は…